第54話 能力の差
大規模な土砂崩れに巻き込まれたが。
何故か助かった国王ことロマン。
ボロボロのドロドロだが生きている。
地面から這い上がってくると、あたりを見回しながらシモンを探す。
ちなみにシモンは不死族の死霊なのでまあ埋まっても生きている――とか思っていると。少し離れたところからシモンが姿を現す。
どうやらこちらは自分だけは鉄壁の守りで守られたらしく。見ただけなら何事もなかったようにロマンの方に向かってきていた。
まあ実際にはかなり慌てている様子だが。
そしてロマンの方もそんなシモンを見つけると――。
「何をしていたんだ!見ろ。この泥まみれだ!」
自分の泥まみれの状況をシモンの責任にして自分はぬかるみの中を歩き出す。
それは先に進むのではなく。戻る方に――。
「申し訳ない。さすがに規模が大きすぎて」
「そんなことはどうでもいい。帰るぞ。こんな気持ち悪いところ居れるか!」
大規模な土砂崩れに巻き込まれたロマン。
どうやら他の部下たちのことなどは全く気にしていないらしく。
とりあえず今は自分を綺麗にしたい一心でぬかるみを歩いてはこけていた。
そのあとを追いかけるシモンの方は――特に問題なさそうだったが。
と、この大規模な土砂崩れは多くの被害を出し。さらに周辺の町にもしっかり知れ渡ることとなる。
なお、普通なら被害のことなどを国民に説明などしそうなものだが。
ロマンは一切していない。
なんせ自分が泥まみれ傷まみれになったのだから。
そんな姿を誰かに見せることはなかった。
ボロボロになりながら城へと戻ったロマンはしばらく治療という理由で姿を現さなかったのだった。
そしてロマンが城に籠っている間にも山の整備がなく。壊れていった環境が戻ることはなく。
ライのしていたことは微妙なバランスを維持していたのだ。
それも数百年。いや、数千年なので――それがちょっとでも崩れた場合。その手入れをしていたすべてが崩れたような状況で――簡単に言えばあっという間に国民の住める場所がなくなっていき。
次第に城近くに国民が押しやられる。避難してくることになり――自然と文句を言える人物の近くに国民が集まるのだった。
そのあと何が起こったかって?
そりゃ――揉めに揉めたという事だ。
でも相手は絶対権力を持った国王。
そう簡単にはこけないので――それはそれは城も泥沼の状況となるのだった。
そして大規模な土砂崩れからしばらく。
その後も災害が相次ぎ。
でも国王は何もしない。
そして食料もなくなってきた。
こんな場所では生活ができない。
トップオーバカーネ国の人々は国王には何も言えない。
なら自分たちが生きるために国を出るという選択肢をする人が次第に増えていくのだった。
ちなみに、ロマンのそばにずっといたはずのレティシアはどうしたか?だが。
レティシアは精霊族のエルフ。
もともと人より強く。また自分のことにしか興味がない女性だったこともあり。危険を察知する能力はもちろんどっかの国王の数倍。いや、数百倍。もっとかもしれないが。
とにかく、自分のことしか興味がない。このまま居たら自分のこと。美についてのことが出来ないと早々に察知。
すでに姿をくらませていたのだった。
何せ未開の地ならまだまだある。
そしてレティシアのスキルは魅了。
能力が下の異性に効果があるスキル。
そんなスキルを持っているレティシアはそもそも上位の能力を持っているので――ロマンとシモンが原因を探りに行く頃と同じくして、とっとと使えそうな人間を魅了してロマンの元を離れていたのだった。
なのでレティシアが今どこに居るのかは誰も知らないことである。
まあこのトップオーバカーネ国はもうとっくの前に崩壊していたのだ。
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