第48話 崩壊の足音――

「どうなっているんだ!」

「今年はまだなんだよ」

「ほかのところは」

「他のところも全くらしい」


 トップオーバカーネ国のとある中核都市。

 その中でちょっとした騒ぎが起きていた。

 何が起きていたかというと。


 今年は川からの恵みが全くなく。

 それをあてにしていた人たちが戸惑い。

 そして小競り合いが起こりつつあったのだった。


「誰かが1人でってことはないのか?」

「あの量だぞ?」

「それもそうだが。全くってどういうことだよ」

「川の上流を見に行った方がいいんじゃないのか?」

「そういえば――今は水量もなんとなく少ないような――」


 簡単に言ってしまえば、ライの居なくなった山。

 それは少しの期間なら問題なかったが。それが続けば別。

 特にここ最近では山から木々や。鉱物。宝石類の原料になるものが定期的に流れてくるのが当たり前と思い込んでいた人が多くなっていたこともあり。全く何も流れてこない。さらには水量も減りつつという事に混乱していた。


「おい。なんか他の川では氾濫が起きたらしいぞ」

「どういうことだ?」

「町が半壊だってよ」

「町が?」

「なんでだよ」


 町の人が話していると。別の町の人が集団のところに速報を持ちこんだ。

 どうやら別の町では水量が減った――と、思ったら急激に増加。そしてその水量は過去に類を見ない大量の整備されていない材木と土砂を運び。川沿いにあった町が半壊したとのことだった。 


 そして今この町でも水量が減った――と、いう共通する点があると誰かが気が付いたころには――。


「――大変だ!上流から黒い水が大量に――逃げろ!」

「逃げろ!」

「うわあああああ」

「な、なんだ!?」


 町の一部が騒がしくなる。

 何事かと思った数人が高台に上ると――その時には町のすぐ近くまで大量の黒い水が押し寄せていた。

 それは真っ黒な水。

 今まで見たことのない色。

 そしてその水は水だけではなく。大量の木々や石を含んでいた。

 さすがに高台から一瞬見ただけの人たちはそこまでは気が付けなかったが――。

 そして騒ぎになってすぐ。

 町は黒い水に飲み込まれ。建物は次々と壊れていくのだった。


 そしてこの騒動は川のあるところ各所で順番に起こっていくのだった。


 何が起きているのか。わかるものは居なかった。


 たった一人の山に居た人がいなくなっただけのことなのだが。

 その一人がしていたことでこの国は安定していた。でもいなくなったのでその安定が崩れたのだ。

 運が悪いのか今年は山の天気が悪い日が多く。川の水量が増えやすかった。

 でもいつもなら山の整備をするライにより管理されていたのでここまでのことは起こることがなかったが。

 今回はライが不在+どっかのおバカなトップが山を開拓していた。

 そのため各所に倒された木や土砂、岩が積まれていた。

 もちろん適切に管理されていればよかったが。

 いそがしていた開拓。

 安全など関係なく行われており。誰かがやばいか?などと思ったことには。運悪く山の山頂からの大雨による洪水。いつもならライの整備する川で何とか――だったがそれがなくなり。積まれていた木々や土砂、岩をも巻き込み流れていった。

 雨が多くなければ――だったが。この時は多かったのは自然のことなので何ともできない。

 すでに山の方ではかなりの負傷者が出ているのだが――それも知る人は町ではいない。

 そのうち流れてきた黒い水の中で――と、騒ぎになるのだが。

 それより町が飲まれたことによる騒ぎでそのことに気が付くのはかなり後。

 

 今こうしていう間にも山の方から流れてくる土砂などを含んだ重たい水がすべてを壊して進んでいた。


 進んでいたという事は、被害はまだまだ広がるという事である。 

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