第38話 魚!
ルネの声で俺たちは一度砂浜へと向かう。すると――。
「おいおいマジかよ」
「マジだな」
「魚の大群か」
「でもどうやって――」
砂浜近くではなかったが。ルネの指さす方向。
少し沖の方で魚が飛びはねたり。または集団で泳いでいる影が。波ができている。
「もしかしてこの辺りは俺たち人が来ないから集まっていたのか」
「そうかもな。普段いるところは危険と判断されて――島の裏側に集まったか」
「にしてもこれだけ話していても逃げないな」
「確かに」
「もしかして放置ってか、ほとんど人が来ていないから警戒心がない――?」
「これ――取れたらな」
「魚パーティ確定だろうな」
「でもどうやって……」
「「「「「うーん」」」」」
目の前に魚の大群が居る。
しかし少し沖合より。
泳いではいけなくないが。さすがに素手では捕まえることができない。
多分だが海に飛び込めばバレて逃げられるだろう。
みんなと考えながら俺もスキルを確認してみるが。
《1729980》
§
――スキル使用時消費スキルポイント――
☆ 砂利。1キロ。10P
☆ 石炭。1キロ。500P
☆ 線路。1メートル。1000P
☆ 客車。100000P
☆ 貨車。100000P
☆ 蒸気機関車。 1000000P
☆ 建物。1軒につき。1000000P
☆ 飲めない水。1000P
☆ 順次解放。
§
今のところ魚を捕まえれるようなスキルはない。
順次解放が使えれば――だが。今のところ線路を作り続けただけで特に解放はない。
ということは――ここでは俺は役立たずである。
「うーん。俺の大工もな」
アドリアンがつぶやく。
そもそもアドリアンとマルタンのスキルは大工と裁縫。そしてそれは材料と道具が必要らしくて今のところこの島では何もできない。
そしてチボーは火なのでまあ水の中では消える。
ということは男性陣は全く使い物にならない。
そうなるとあとは女性陣だが。オロールとチア。アナイスはこの場に居ない。お留守番だからだ。でも料理に治癒。水のスキルでは――まあ何かできるということはないだろう。
もしかすると、料理で離れたところでも何か――ってさすがにそれはないな。
チアに関してはもしかすると治癒で魚が元気に――となるかもだが。捕まえることはできない。
しいて言えば、お湯が出せるアナイスが居たらお湯で――って、距離が離れているので、届かない。
魔法のように離れたところでお湯を出せれば気絶くらいはさせれるかもしれないが――と、その時ふと浮かんだ。
「……魔法」
「うん?どうしたライ」
「いや――ミアの魔法――」
「私?」
俺がつぶやくとミアがキョトンとした表情でこちらを見た。
「いや――さっきからミアの魔法見ていたけど、離れた場所でも凍らせれてたよな?」
「えっと――うん。水とか――まあさっきは濡れていた貝とか海藻だから簡単に凍らせれたんだけど――」
「ならもし俺があの魚の群れの周りに水が出せたら凍らせれる?」
「えっ?」
俺のスキル。飲めない水。
これも場所を指定して出せるのだ。
少し前にもしたが蒸気機関車のタンク内にも水を出せることが分かった。
つまり――と、思いつつ俺はスキルを使い少し離れた場所。線路のところに水を出してみる。
ザァー。
俺が水を出したところの地面が濡れる。
「あれを魚の上で大量に出すから凍らせれないかな?って、その――氷の囲い?みたいになるようにしてみるから。多分だけど魚が居るところもそんなに深くなさそうだから――そこそこの高さから水を出してそれを凍らせてもらえば――何とかならないかな?」
「えっと――できなくはないと思うけど――」
「はははっ、ライの考えることは面白いな。普通ならできないが。確かに今ここにはおかしなスキル持ちと。氷を作れるスキル持ちが居る」
「確かに。それで囲えることができたら――だな」
「魚食べたい」
アドリアンとマルタンが頷きながら言う。
ちなみに魚食べたいと言っているのはルネである。
多分たくさん歩いたのでまた腹ペコになっているのだろう。
本当はルネのスキルで何か――も一瞬考えたが。ルネは発育と言っていて今のところ何も使えないと言っていたので――まあちょっと置いておこう。
「なら魚が逃げる前にやってみるか」
「ああ、失敗しても誰も文句は言わないからな」
「どうせ俺たち男どもじゃ捕まえれない場所に居るしな」
「ほんとだな。見てるだけ――っていうのもなんか悲しいが」
ということで、アドリアンたちのお手上げ――ではないが。俺たちは見守っているという言葉を聞くと。魚が逃げる前に俺とミアが波打ち際に移動した。
ちなみになぜかルネも近くに来ているが――まあいいか。多分魚につられている気がする。
「じゃあ行くぞ」
「うん。結構大きめ。全体でかけてみる」
「俺が水を出し始めてからで間に合うか?}
「うん。いける」
「よし。なら――水を――あの魚の群れを囲むように――範囲は――2メートル2メートルくらいか」
「いいよ」
ミアの言葉を聞きながらステータス表を確認する。
スキルポイントも十分ある。
水を出すだけなら問題ないだろう。しかし少ないと意味がないかもしれないので少し過剰なくらい出すことにした。
《1732880》
§
――スキル使用時消費スキルポイント――
☆ 砂利。1キロ。10P
☆ 石炭。1キロ。500P
☆ 線路。1メートル。1000P
☆ 客車。100000P
☆ 貨車。100000P
☆ 蒸気機関車。 1000000P
☆ 建物。1軒につき。1000000P
☆ 飲めない水。1000P
☆ 順次解放。
§
《1532880》
スキルポイントが減る。
「ミア水いくぞ」
「大丈夫――――――――」
俺が言うとミアが魔法を使いだす。
そしてそのあとすぐに魚の群れがあるところに――水がその場を囲うように出る。よし。うまくいったと、水担当の俺が思っていると。
その水が海水に落ちる――と言うタイミング。魚の群れを囲うように落ちていた水が一気に凍りつく。
ザッッブーーーーーーーーン!!!!
するとすごい音とともに海水が宙を舞う。
「おいおい」
「派手にしたな――」
「あっ、魚も飛んでる――」
「マジか」
その光景を見ていたアドリアンたちがあっけにとられていると次第にしぶきが消えていき――。
「うまくいったか?」
「なんか氷の囲いは見えるね」
砂浜から十数メートル離れたところに氷の囲いができて海面から顔を出しているのがわかる。
「で、ライこの後はどうするんだ?泳いでいくのか?」
「あっそれなら――」
俺は再度ステータス表を確認する。スキルポイントも大丈夫だ。
《1533880》
§
――スキル使用時消費スキルポイント――
☆ 砂利。1キロ。10P
☆ 石炭。1キロ。500P
☆ 線路。1メートル。1000P
☆ 客車。100000P
☆ 貨車。100000P
☆ 蒸気機関車。 1000000P
☆ 建物。1軒につき。1000000P
☆ 飲めない水。1000P
☆ 順次解放。
§
そして氷の囲いがある場所を確認してから――砂利を出す。
それも大量にだ。
《1423880》
砂利を出すだけなのに大量のスキルポイントを使う。
それだけスキルポイントを使えば――。
――――ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ……。
「お、おいおいライこれは――」
大量の砂利が現れたことに驚くアドリアン。
「砂利が大量に――」
「あっ海に――」
他の仲間も驚いている。
そして俺とミアの隣に居たルネが一番早く俺が何をしているのか気が付いた。
ジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラジャラ……ジャ。
……ちょっと途中で自分も出しすぎた?とも思うことはあったが。
でもいい感じにできたと思う。
何を俺がしたか。
それは先ほどミアと作った氷の囲いまでの海に砂利を投入したのだ。
少しでは海の中に消えてしまうが氷の囲いまで一気に砂利を流しこめば道ができるのではないかと思いやってみたが――人が2、3人は歩けてしまえそうな幅の砂利の道が今出来上がっていた。
これは――なんというかそうそう、島流しにあった時に見た桟橋――と言うか船着き場?防波堤?に近いようなものが突如として砂浜にできたのだった。
「……驚くな――と、自分に言い聞かせるのが難しいな。そういえば墓じゃないが。そんなもの作るときも大量に出してもらったが――ここまで一気にされるとな」
目の前の光景を見てアドリアンが少し頭を抱える。
「線路でも数年かかりそうなことを数時間で」
「港じゃないが――海の中にいきなり道を作ってしまうとか――ほんとライは化け物だ」
「まあライのスキルで出した水を凍らせてあんな囲いを作ったミアもミアだがな。って――これは歩けるのか?ライ」
「えっと――試してみます」
驚く男性陣の声を聞きながら俺が今出した砂利の道を確認しようとすると――。
「――魚!」
「あっ、ルネ」
ジャッジャッジャッ……と、俺が歩き出す前に魚につられていたルネが走り出す。
少し足場が沈んでいるように見えたが。それは砂利の道なので当たり前だろう。って、あっという間にルネが走っていったので。
「大丈夫そうですな」
「だな」
「ルネ腹減ってたのか必至だな」
ルネの後姿を見ながらみんなが少し笑みをこぼしていると――先に氷の囲いに着いたルネが叫んだ。
「みんな!魚魚大量!」
「マジか」
「おい、行くぞ」
「ああ」
ルネの声を聞くとみんなで砂利の道をジャッジャッジャッ……と音を立てながら小走りでルネのところに向かった。
すると――。
「おお、マジか」
「これ――凍ってる?」
「いや、海の水は凍ってないが――多分氷に囲まれた海水の温度が下がって魚が――凍死しそうになってる?」
「冷たっ!これもう氷だろ!めっちゃ冷たいわ」
氷の囲いの中では数えきれない量の魚が少し元気なく泳いでいた。
その原因は海水に手を入れたらわかった。
氷に四方八方を囲まれていて多分底まで氷の柱が突き刺さったような状況のため囲いの中の海水の温度がどんどん下がっているのだ。
「うまくいったのか」
「いっただろ」
「これで今日は魚祭りだな」
「よしとりあえず運ぶか。ライとミアは貨車の1つに氷作れるか?魚を凍らせたら前みたいに大変かもだが。貨車をこらせたり周りに氷を作ったら魚をそこに入れて運べばいいだろ。保存はオロールに任せよう」
「わかった」
「私も大丈夫です」
「ならミア貨車に行こう」
「わかった」
アドリアンの指示受けて俺たちは動きだす。
「あー冷たい!」
「手が凍る!」
「それでも掴まないと食べれないぞ」
「わかってるよ」
「あっ、ルネは俺たちが出した魚貨車まで頼む」
「わかった。任せて」
それからは順調に役割分担が進む。
俺以外の男性陣は氷の海――に近い氷に囲われている場所から凍りかけの魚を手で掴んでいく。
そして砂利の上に出された魚をルネが運ぶ。
ちなみに男性3人はかなり激痛と戦っているような様子だったが。食料のため頑張っていた。
なお、チボーだけ火が使えるので使おうとしていたが――。
「馬鹿野郎。氷がもし解けたら魚がパーだぞ」
「あっ、そうか」
「今は食料のため我慢だ我慢」
「っかライとミアばかり働かせたからな。これくらいしないと魚食べさせてもらえないかもな」
「ほんとだぞ。とんでもない方法と思ったが――まさか成功させるし」
っか、これって、このやり方ができれば魚の群れを見つけるたびに。捕まえれるってことだよな?まあ砂浜にこうやって近くないと――だが」
「そうだな。ってか冷たい!」
「痛いぞこれ」
「っか急げ。海が本当に凍りそうだ」
「ライのスキルで隠れているけど――ミアの氷結魔法レベルおかしいだろ」
「ああ、俺の火なんて一瞬で負けるわ」
「間違いないな」
「急に化け物ぞろいだな」
「でも――マジで助かったな。この食い物は大きい」
冷たい。もう痛いレベルの海から魚を出しながら話す男性陣。
ちなみに男性陣が出した魚を運ぶルネはと言うと――。
「――私もなんかしないと食べさせてもらえないかも――」
と、少し焦っていたので。本当なら空腹でつぶれたいところだったが必死に働いていた。
食事になると強いルネ。
なおルネも自分のスキルが――と、思うこともあったが。
そんなことより。食事大事。が強いルネ。
ミアやライと比べたりする人もいるかもしれないが。ルネに関しては比べたりするより食事だったので、変な考えを起こすこと。1人で落ち込むことなどは一切なかったのだった。
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