第25話 走行問題なし。

 ガタンガタンガタンガタン……。

 

 孤島の沿岸部に響く列車の走行音。

 小さな蒸気機関車が貨車と客車が荷物と人を載せて走っている。

 バランス的には小さな蒸気機関車には重そうな荷物だが特に車輪が空回りすることもなく。ゆっくりだが順調に走っている。

 その走る客車内からはいろいろな声が聞こえてきていた。

 

「機関車――動いたな。普通に。もしかしたら動かないんじゃないかと思ったが――」

「揺れるけど――めっちゃ楽だな」

「貨車を押すことにはならなかったか――ほんとライのスキル化け物じゃないか」

「すごい。小さいのにこんなに引っ張れるんだ」

「楽」

「こりゃ食い物たくさんとれるが――まずは見つけないとな」

「にしても――本当に楽だな。もう小屋に着くんじゃないか?

「さすがにまだだろ。結構歩いてきたからな」

「そういや、なんやかんやでライが線路作るから――でその間進んでいたもんな」

「まあこんな早く線路ができるのがおかしいんだが――って、普通に走れてるからな」

「そうだよな。普通なら確認やら調整とかいるよな?でもスキルだから――」

「まあこの通り普通に走ってるな」

「貨車や客車がもろいってこともないし」

 スピードは出ないが、歩かなくていいのはかなり楽なので、乗車しているみんなの評判は上々だ。

 特に男性陣がまるで子供のように身を乗り出している。

 ちなみに女性陣2人はお疲れか気持ちのいい揺れにうとうとしている。

 ガタンガタンガタンガタン……。

 そんな中。移動しつつ俺はアドリアンに声をかけていた。

「アドリアンさん。この島って一周どれくらいなんですか?」

「一周となるとまあ2時間くらいじゃないか?正確にはわからんがな」

「だろなー。裏側はまだちゃんと行ったことないしな。ちらっと見に行ったくらいか?あの岩場のところは」

 マルタンも会話に加わる。

「だな。まあ何もなしで裏まで行って収穫なし。またはケガしたとかだとだからな」「そうなんですか?」

「まあライのこの鉄道がのびれば裏にも行きやすくなって、そこで食料があればな。ちょっとはマシになるかもだが――」

「ですねとりあえず食料ですよね」

 今のところ食料を積んでいると言っても、本当に海藻や木の実程度。このままではやばいのはみんなわかっている。

 しかし今の行動範囲にはほとんどないのがわかっているので――早く移動手段を作る必要がありそうだった。

「魚でいいから毎回捕れるようなところがあればな」

「なかなかないんだよな。こんなに海に囲まれているのに」

 ガタンガタンガタンガタン……

 車窓から見える海を見つつつぶやく男性陣。

 確かに周りは海で意味の生き物はたくさんいそうだが――今のところは魚に必ずありつけるという雰囲気はない。

 まあライに関しては、山奥での生活ではほとんど魚と接することのないことだったので(ごくまれに川に魚が上ってこない限り)。魚が毎日あるという生活があまり予想できていなかったりするが――。


「でもよ。だからと言って森はあまり入りたくないしな」

「森こそほとんど見てないよな。特に裏言うのか。今までいたところ以外は」

「奥はやっぱり何があるかわからない感じですか?」

 マルタンとチボーの話が聞こえてきたので、少し大きめの声で聞いてみる。

「ああ、さっきも話したと思うが。奥に行くなら何か武器が欲しいな」

「まあ昔ここが無人島じゃなきゃ何かあるかもだが。丸腰じゃな。危なすぎるわな」

「確かに」

 少し距離がある会話だったが。とりあえず移動中話しながら小屋へと進む蒸気機関車。

 今のところは快調に走っている。

 特に地面の強度も問題ないようで。列車と貨車、客車が通過してもびくともしていない。

 ちなみにルネは食料集めで最後の力を使ったのか。今はミアにもたれながら夢の世界――生きてるよな?と、思えるような姿がちらりと後ろを見るとあったが――距離があるので確認するのも大変だし。休んでいるのならそっとしておいた方が良さそうなので、俺はそのまま機関車を走らせた。

 ガタンガタンガタンガタン……。

 一定の速度で機関車は小屋へとのびる線路を走っていく。

 すると前方に小屋が見えてきた。

「本当にあっという間だな」

「楽だったな」

「とりあえず、オロールさんになんか作ってもらってからもう1回見に行くか。暗くなる前に食料もう少しほしいもんな」

「だな」

 俺がブレーキをかけると、列車が止まる前にアドリアンがまず貨車から飛び降りていた。

 「帰ったぞ」

 アドリアンの声でオロールさんたちが出迎える。

 チアも休んで元気になったのか。ニコニコしながら皆を出迎えている。

 ちなみにアナイスさんは離れた定位置にて見ている。

「とりえずこれで何とかなるか?」

「ほとんど海藻だな」


 蒸気機関車が止まると同時にマルタンやチボーも客車から降りる。

 そして軽く背伸びをしながらミアと完全に寝ぼけていそうなルネも客車から降りる。

 そして集めてきた食材をみんなでおろしていく。

「うわっ、いっぱい」

 チアが目を輝かせながらみんなが集めてきたものを見ている。

 ちなみに俺的には貨車からあふれるような量ではなかったので、そこまで多いのか?と思うこともあったが。今までの話からして、食料がなかなかないことの方が普通だったのだろうと考えると――チアの反応にも納得だった。

「スープくらいなら何とかなるでしょ」

 集めてきた食材はオロールにすべて任せる。というか他の人はいても料理に関しては何もできないからだ。

 邪魔をしてはいけない。

 限りある食料を大切にするためである。

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