第8話 こんな命令があったらしい
ロマン・ジラール。
トップオーバカーネ国の現国王。人間族の神人。
国民にとにかく思いつくがまま重税をかけ。自分は四六時中遊び惚けている国王。
見た目もだらしなく。大きく出たお腹はもう服のボタンをはじけ飛ばしそうである(実は数週間単位で何着も服のサイズが大きくなっていたりする)。
そんな国王は女(美女のみ)と食べ物(甘いもののみ。苦いのはゴミ扱い)しか興味がない。
つまり、国のことなど全く考えていない。
まあお金をむしり取ることは趣味みたいなものなので、財源だけはガッポガッポしていたが。そのお金で国民のためになにかするということはない。
災害などが起こったら復興を国がする――とかいうことももちろんない。むしろさいがいが起ころうがしっかり集めるお金は集める主義。
ロマン・ジラールは、自分が楽しいことを日々しているだけ。
なら何故そんな国王に対して、国民が黙っているのか。
普通ならとっくの昔に暴動でも起こっていそうなもの。
しかしトップオーバカーネ国では現在の国王。ロマン・ジラールになってからは争いごとは1度も起こっていない。
いや――正確に言えば起こすことができなくなった。
彼のスキルが原因である。
絶対権力。
――必ず相手を服従させる。
このスキルそのものは、代々このジラール家に受け継がれているスキル。
絶対権力を受け継いだ者が次の国王になることがここ200年、300年ほど続いている。
もちろんこのスキル。権力を正しく使う国王もいた。
というかほとんどの国王が正しくスキル。権力を使っていたが……。
この現国王は違った。甘やかされ育ち。この世代唯一の『絶対権力』のスキル持ち。さらには神人も受け継ぎ。国王に即位すると同時に権力を自由に使い出した。それはそれは周りも何も口を挟めないので、新しい国王になった瞬間。現状のようなことになった。
もちろんだがこの国王が居る限る国はめちゃくちゃ。
暗殺計画などももちろん日々起こったのだが――この国王。自分の安全のためにはしっかりしていた。
ロマン・ジラールは側近として、シモン・ベルトランという不死族の死霊を置いた。
不死族とは本当に数が少ない稀な人々。
その中でも死霊で、本来は姿形はなく。グレーの火。が浮かんでいるようなものがほとんどの死霊の中でも、人間の形をしているさらに珍しい死霊で、そのスキルは鉄壁の守りすべてをはじくスキル。つまりロマンの盾である。
不死族を見つけるだけでも大変なのに、こういう運は持っていたロマン。
たまたま家来に探しに行かせたら見つけたという。
そして見つけてしまえば従わせるのは簡単。
そのためシモンがロマンのそばにいる様になってからは誰も近付けなくなった。
そしてこのロマン。守りだけではなく。戦う方でも側近を見つけていた。
もう1人。精霊族のエルフ。レティシア・ブーシェという女性もそばに置いている。
その姿は美しく何故このロマンの元に居るのか――と、疑いたくなるのだが。まあロマンのスキル――もあるのだが。そもそもこのレティシアはレティシアで問題児だった。
精霊族の里では自分の事しか興味がなく。気が付けば追放。
そんなときに女探しをしていたロマンが彼女を見つけ。スキル――を使うことなく側近に置いた。というかレティシアもロマンを利用している。
利害関係が一致したとでもいうのだろうか?どちらもが利用。求めることで関係が生まれている。
レティシアの方は、ロマンの隣に居れば自由。おまけにお金をバンバン自動的にロマンが集めており。自分には自由に使わせてくれるためなんでもほしい物が手に入るからだ。
そしてロマンはロマンでレティシアに惚れこみ。そんなレティシアもロマンの相手だけしていればずっと置いてもらえると思ったことにより――うまくいってしまった2人。
出会ってはいけない2人が同じ時に存在して、同じ時にたまたま求めていた人として出会ってしまった。
はっきり言って最悪の事態だったりするのだが。周りが止めれるようなものではなかった。
ちなみにレティシアはもともと弓が得意戦いも得意なのだが。スキルとしては魅了を持っている。能力が自分より下の異性に効果。というもので、もともと精霊族は長寿。そしてレティシア年齢不詳だが。すでに数百年は生きており。能力的には人間の多い場所ならほぼほぼ頂点に君臨する。
そのためレティシアに敵なし状態。
簡単に言えば人間の男ならレティシアにメロメロで使い物にならず。
人間の女性は、というか女性すべてはロマンの権力により。まあ男性もだがロマンが男に興味なしなので男の担当はレティシアに。
と、とにかく現状トップオーバカーネ国は権力とスキルにより国民は何もできない状態だった。
隙をついて何かしようとしても守りもしっかりしているわ。下手すればこちらが瞬殺されるわ。下手に目を付けられると国王じきじきにスキル。権力を使ってくるわと。まあそれはそれは住みにくい場所。
でも島国。
そうは簡単にこの国王からは逃げられない。
そんな状態がしばらく続き。
町の方は、あの国王は無理。でもできないので、今は細々と目立たないように、自分たちの生活は自分たちで。という流れになりだしていたころ。
ロマンが手を出さなければまあ何とかなっていた国民の生活だったのだが――あまりにも自分が思うようになんでもことが進んでいたこともあり。調子に乗り出したロマンがあることを命令した。
「よし。これから未開の地の開拓を進めよ。あのデカい山をぶっ壊して俺の避暑地とする。もし邪魔をする者がいれば拘束してこの場に連れてこい。処罰してやる。この計画に反対する者も協力しない者もすべて処罰。俺のスキルも利用する。そう伝えろ」
ちなみにこの国王の言った山こそライが1人で数千年住んでいる山の事だったのだ。
町の人のほんの一部と今はなってしまったが。町の方でも細々と代々受け継がれていて言い伝えで、山からの贈り物は大事にせよ。山の方へと行ってはいけない。ということを言うものもいたのだが。もちろんそんなことに耳を傾けることもなく。
国民の方もわざわざ目立つような行動をするわけがなく。
この言い伝えが広まることはなかった。
そしてそんな命令が出ようが。町とのつながりがこの時には一切ないライは、そんなこと気が付けるわけがない。
まあ、正確にはライ側からは町の方に支援をしている一方通行状態なのだが。とにかくライが知らないところでそんなことが動き出していた。
なお、今までの国王ならあの地は守るべきところ――という言い伝えを一応は引き継いできていたのだが(そのこと自体も長い月日と引継ぎの関係で薄れていたことである)まあこの今の国王そんなことは知らず。というか、まったく知ろうともせず。
知らないがゆえに、自分の遊び場を作るような感覚で命令を下し。多くの自分の兵士(ぼそっと言うと。自分が嫌いな男たちを強制的に兵士としているのだが――まあそれはおいておこう)を山へと向かわせたのだった。
そしてロマンの兵が山を破壊しつつ進んでいくこと数か月――。
ついにライが察知できるところまで兵が到着したのだった。
ちなみにロマンの命令を受けた兵士たち。ほぼほぼいやいややっていたが。終わらなければこの激務から解放されることもないので、そこそこのペースで進んでいた。
目標。とっとと山の奥まで行き。国王を納得させる。である。
なので、まさかまさか山の口に誰かいるとは夢に思っていなかったのだった。
この兵の中に山の言い伝えを知るものが居れば事前に知ること。予想できることもあったのだ。この国王の兵の中にそんな人はは一切なく。
兵士たちはまさか森の中で人に遭遇するとは夢にも思っていなかったのだった。
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