第9話 どっちも戸惑った

 長年(ガチで長年。超長年)トップオーバカーネ国の山奥で自然環境を守り。山の下に広がる町の生活を守るために日々過ごしていたライ。

 ちなみにライの長年行っていた自然環境を守る。

 この範囲は基本どこからどこまでが自分たちが守る場所なのかという正確な区切りはなく。

 

『昔から目で見える範囲はすべて守れ言われている。だからライも見える範囲守れ』


 と、ライも父親から言われていた。

 またライの父も自分の父から同じようなことを言われている。

 先祖代々受け継がれていることである。

 そのためライも目で見える範囲の山。森はすべて時間をかけて手入れをしていた(他の仲間が居る時はもちろん協力して行っていたが。ここ最近はライ1人で行っていた)。しかし、それはそれは膨大な土地。もちろん膨大な時間もかかっているが。ライの地道な働きもあってライの住む周りの山。森は自然豊かな状態をここ数千年ほど維持していた。もちろん遠く離れた周りでは戦いや人々が町を作ったりすることで一部自然が破壊されていたが。ライの住んでいるところまではその手は伸びていなかった。

 そして、ライが山奥の自然環境を守っていたことで、下の町で戦いなどがあり自然が壊れ。人々の生活が脅かされることがあっても、山からの恵み(実際にはライの行動なのだが)が川を使い町まで届き今まで人々の生活を支えていた

 

 まあ、そんなライの行動をしたの町で住む人の多くは知らないのだが――ちなみに人より山奥に住む生き物たちの方がライのことを知っており(もちろん話したり意思疎通ができるわけではないが)人と生き物の共存関係ができていたりする

。山奥に住む生き物たちも荒れ放題の森の中で生活するより。綺麗に整備されてる森での生活の方が遥かに良い。

 そして地面までしっかり太陽の光が届くことで、新しい芽や食べ物なども育つため。気持ちを伝えることはできなくとも。ライに感謝し。ライから逃げる生き物はいなかったりする。まあライ自身も単に生き物が逃げていかないだけ。人を知らないんだろう。自分もちょっとでかい何かと思っているのだろうとか考えていたのだが――まあそれはおいておき。


 現在の森の異変の話をしよう。

 もともと山奥は一般人は入らないところだった。というか、何度か言っているが。町から山奥へは相当な険しい道と時間がかかる。

 そのためここ数千年は本当にライしか森には人がいなかったこともあり。

 その結果生き物たちは、いきなり現れた。攻めてきた人間の集団に驚き。一夜にして姿を消したのだった。

 生き物たちが向かった場所はわからない。

 島のどこかだろうが――今のところ姿は全くない。


 そして、原因の元へと向かっていたライは、崖やらやら険しい道を通過し。やっとのことで元凶のところへと到着したところだった。

 

「これは――なんだ――人が。なんでこんなところまで、お前たち何を――」


 森の異変を感じて元凶のところへとやって来たライ。

 そこでライが目にしたのは切り倒された木々。

 さらに元凶まで来てわかったことは、すでに町の方から続いていた緑が更地へと変わっているところだった。

 見える範囲でもかなりの土地が変わり果てた姿になっていた。

 そしてライにとっては初めてとなるそれはそれは大量の人が懸命に木々を倒しては更地にしていっている光景だった。


 その光景を見たライはもちろん突然のことで驚き――ただ立ちすくむだけだった。 

 

 なお、立ちすくんだのはライだけではない。

 突然森から出てきたライを見つけた町の人々も同じだった。

 ライが出てきた周辺で作業をしていた人達の一部が一瞬静寂に。からのライを見てそれぞれが言葉を交わしだした。


「おい、誰か出て来たぞ」

「誰だ」

「このあたりに住んでいる変わり者が居たのか」

「これ――どうするんだよ」

「邪魔しないなら――」


 ライの前では鎧を着た人たちが話し込んでいる(余談だが。トップオーバカーネ国では同じ言語がずっと使われているので、ライも目の前の鎧を着ている人たちが何を話しているのかはわかっている。もちろんその逆もなのだが。今のところライが声を初め以来出していないため鎧を着た人々のみが話している)。

 鎧を着ている人たちは、まさか人(ライの見た目は本当に2、30代の男性のため人と思い込んでいる。まあ人と言えば人なのだが――)がこんなところいるとは思っておらず驚いているのだ。

 すると鎧を着た人が話し込んでいる間にライは鎧の人々に近付いていた。

 もちろんこの自然破壊を止めさ――。


「おお、はじめて家族以外の人と会った。これが――鎧か。すごいな。でもこの森は壊すのは見過ごせない。なんでこんなことを――」


 う、うん。ちょっとだけライガチな感想が入っていたが。

 一応ライはこの自然破壊中の人々の行動を止めようと声を出した。

 (実は言いながらも、初めて見る人と鎧をまだ見ていたりするのだが――まあ本当に数千年で初のことなので、仕方ないことだ。森に籠っていたライ。人を見るのも数百年ぶり。そして自分のところにないものばかりの状況に鎧を着て話している人達のことを観察しまくっていたのだった)。

 その結果。

 ライは興味津々の目で鎧の人たちを見ていたのだが。その目があまりに興味津々すぎる目で、相手からは何かを見られている。こちらのことを偵察しているように受け取られて――。


「こいつ。邪魔する気か」

「捕えろ」

「捕えろー」

「拘束しろ!」

「人を呼べ。こんな森に住んでいる奴だ。何か持っている。あるのかもしれん」

「はっ」

「囲め!」

「え、あ、いや――」

 

 ライは気が付けば拘束された。

 それはそれはライの力を知っていれば過大すぎる。それはそれは過大すぎる力によりライはあっという間に拘束された。

 そもそもライは戦う術などスキルが使えず。何も武器なども持っていなかったライはそれはそれは瞬殺だった。

 一方で相手はライが何か特別なスキルがあるので、ここで住んでいる――などと思ったため、ライが反撃をしないにも関わらず。とにかくボコって拘束したのだった。


 数人に囲まれそれはそれはあっという間に気絶させられ。次ライが目を覚ますと身体は縄で拘束。

 ぐるぐる巻き。身動き一切できず。

 そしてスキルも何も使えない単なる人のライにそこから脱出するすべなど全くなかった。

 また、ライのことを過大評価しすぎたというのもあるが。一応騒がれたらうるさいということもあり。鎧を着た人々はあらかじめ準備していた対象者の音。声を消すことのできるスキルが使える者も準備しており。ライが気絶中にスキルを使ったため。ライは目を覚ましてからも声が出せず。力もなく脱出は不可能な状況で、そのまま飲まず食わずでこの町前連れてこられた。

 移動中何もできないライはただただ連行されるだけだった。

 しいて言えば、山での生活はそこそこ厳しいこともあり。

 その結果少しくらいの飲まず食わずではライの体力などは全く衰えることはなかったのだが――その何も変化がないことがなおさらライを連行する鎧を着た人々を怖がらせ。かなり過大に移動中はスキルなどを使用するのだった(ちなみにそのスキル全くの無駄。無駄使いなのは――誰も気が付くことはなかった)。

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