第二十七話 青い池散策

「キッレ〜だけど、人、多っ!」


 池の周りに生えている木々の間から、前を行く人々の頭の間から青い池の水面が見え始める。神秘的な光景に思わず駆け寄りたくなるが、人が多いため駆け寄ることはできず、青い水面はゆっくりゆっくり大きく広がっていく結果となった。


 青い池を囲んでいる散策路には多くの人が立ち止まり、柵から身を乗り出すようにして夢中でシャッターを切っていた。

 そんなに身を乗り出すようにされてしまっては、手が滑ったらカメラやスマホを池に落としてしまうのではいかと心配になってしまう。


 散策路の入り口付近の柵の最前列は既に埋まっており、最前列を求め人々は奥へ進もうとするが、帰ろうとしている人達と重なり入り口付近は大渋滞する形となってしまっていた。


「綺麗だったねー」

「来年も来ようね」

「もう帰るのー?」


 帰る人達の声を盗み聞きすると、目の前に広がった光景を賞賛する言葉や帰りを惜しむものばかりだった。

 皆さんの表情は穏やかなものばかりだ。きっと、眼福を味わうことができ幸せな気分でいっぱいなのだろう。


 お!


 タイミング良く目の前の人が柵から離れてくれたので、空いた隙間に身を滑り込ませると、柵に身を預けカメラを取り出す。

 ストラップを腕に絡め水面の方へカメラを向けると、デジタル画面に池の様子が表示される。ピントが合ったのを確認すると慌ててシャッターを切った。


「隼人様、綺麗ですね〜」

 レンちゃんがうっとりした様子で話しかけてくる。


 本当に綺麗な景色だった。青い池の紹介写真に載ってるものと、まったく同じ光景が広がっているのだからうっとりしてしまうのも仕方ないだろう。


 これぞ、眼福ってやつですね!


 青い池の中には枯れた白樺が立ち並び、幻想的な感じを増幅させている。水面が淡い青色をしているためなのか、それとも実際に水蒸気か煙のようなものが立ち込めているからなのか、白樺の根元がぼんやりと霞んでいるように見受けられた。


 池の奥には小高い丘が広がっており、木々が真緑色の葉をつけている。

 池の手前は真っ青で奥に行くほど柔らかいブルーへと変わっていくので、奥の丘に生えそろっている真緑色が反射し、水面に影響することにより柔らかな青に変化させているのかもしれない。


 ポシャン!


 !?

 カエルでも飛び込んだか?


 チャプン、チャプン……。


 肌では感じないが風があるのだろうか?水面が優しく波打っているようだった。



「写真そのままの景色じゃん!すっごいキレ〜、ウチの親にも見せてあげたいかも〜」

「ボーナス出たら北海道旅行でもプレゼントする〜?」


 夫婦かな?カップルかな?隣にいる若いお二人さんから、そんな声が聞こえてきた。ずいぶん軽いノリのようですが、親孝行とは感心感心。



「見れた、見れたー。これが青い池か〜、冥土の土産ができたなー」

「生きてるうちに見れてよかった〜」


 冥土の土産って!

 生きてるうちって!

 逆側にいる年配夫婦からはそんな声が聞こえてきた。



「山下隼人よ。もう少し奥に行くと池の全体像を見れるスポットがあるぞ」


 え!そうなの?

 その場でどれだけの時間を過ごしたのだろうか、周りを見るとやや人が減っているように感じられた。

 大型バスに乗っていた団体客が何組か帰ったのだろうか?


 人が少なくなり多少、歩きやすくなった散策路を進んでいくと、池の前に何もない視界がパッとひらけたような空間が広がった。

 目の前の視界を邪魔していた木々がなくなり、視界いーっぱいに青い池の景色が広がる。


 えー!こっちから見てた方が綺麗だし、快適だったんじゃん!


 人がやや少なくなったとはいえ、入り口の方、さっきまで僕がいた場所には多くの人がいる様子が見受けられた。それと比べるとこっちにはまばらにしかいない。


 知っていたら入り口付近で立ち止まったりしなかったのにな〜。


 木々もなく、人の頭もなく、綺麗な景色を快適に見れるなーっと思って、ボーッと水面を眺めている、その時だった……。


 !?

 風が止んだ?


 さざなみが水面から消え始める……。


 さざなみが消えると水面はスクリーンのようになり空を投影させ始める。青い水面にスカイブルーの青空が映るので、より深い青い色になったところに真っ白な雲が投影され流れていく。

 水面を見ているはずなのに空を見上げているような景色が広がった。


 池の奥に存在する丘の輪郭も映り出し、丘を覆っている木々の真緑色が水面に映るとその部分はやや緑がかった青となりエメラルドブルーとなった。


 手前が深みの感じられる青のサファイアブルーの水面、奥の枯れた白樺があるあたりの水面はエメラルドブルー。


「ひゃ〜!マジかよ!白フワちゃん、これ神秘現象じゃないよね?」

「そうね。風がなくて晴れている日には普通に見られる自然現象ね。」


 鳥肌なんですけど〜!

 もしかしたら今日は晴れて、風が穏やかな日だって知ってたから混んでいたのか?

 

 皆既日食を観測する場所としては周りに高い建物や山や木が無い場所の方が良いはず。それを考えると青い池で皆既日食を見ようとするのは的確な判断ではない。


 皆既日食の日に白金に輝く双頭龍が見れると知っている人でもない限り、ここで皆既日食を見ようとは思わないだろう。


 今日は、絶好の青い池観察日だったみたいだ。


 夢中でシャッターを切って、動画撮影までしたりした後、別の構図で撮れたりしないかと思い周りを見渡すと展望台なのだろうか?ちょっと盛り上がっている部分を発見しそちらの方へ足を向ける。


 そこからは斜め上から青い池全体を撮影することができるのだが、人はまばらだった。恐らく皆んな知らないのだろう『奥に撮影スポットあり』なんて表示作ればぜんぜん違うのだろうが、なにか看板を建てられない理由でもあるのだろうか?


「おい、山下隼人よ。あそこに何か訳ありそうな人間がいるぞ」


 白フワちゃんの指し示した方向を見ると青い池を見るのではなく、美瑛川の方へ視線を向けている男性が見られた。

 美瑛川も青みを帯びているので、青みを帯びている水の流れを見続けたくなるのはわからなくもないが、カメラも向けずに佇んでいる姿は確かに訳ありのように感じられる。


 男性なら昨日食べた焼肉や焼き鳥の話で盛り上がれると思うが、さーて、なんて理由つけて話しかけましょうか……。




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白金青い池の写真です!

https://kakuyomu.jp/users/itf39rs71ktce/news/16818622175892514907


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