お酒つよつよ男子をオトしたいっ!

夕雲

お酒つよつよ男子をオトしたいっ!

「……ッング…プハッ

あ"ーッ!サイッコー!!」

「今日も良い飲みっぷりだな叶多かなたちゃん」

「マスター!生大おかわりィ!」

「マスターじゃねぇ。俺ぁ大将だ」

「あははマスターのがかっこいいじゃあん」


 今日は金曜日、場所は地元で少しだけ流行っている居酒屋。

 仕事終わりのサラリーマンが集い心地よい騒々しさが溢れるこの場所のカウンターで一週間の疲れを吹き飛ばす様に酒を飲むことがアタシ寿ことぶき叶多かなたの日課だ。


「んにしても今日はいつもより繁盛してんねぇ。テーブル埋まってんじゃん」

「連休前だからな」

「んー?なんかそれが関係あるん?」

「そりゃぁ……連休はいっぱい休めるからだろうよ」

「ほえぇ」


 中身があるようなないような会話をマスター…大将と交わしながら酒を飲みつまみを口にしていく。


「叶多ちゃんは連休予定あんのかい?彼氏と旅行とか」

「あーん?アタシァピチピチのOLよ?彼氏の一人や二人なんてねぇ……………い"な"い"よ"ぉ"ー!!」

「おいおい、机に突っ伏すのは最終手段にしてくれ」

「マ"ス"タ"ァ"ー!誰か良い人紹介じでぇー!」

「マスターじゃなくて大将な。俺が紹介できるのなんてむさっくるしいおっさんだけだぜ叶多ちゃん」

「出会いがほじぃー!」

「ははは、そんなに良い男が欲しいのなら俺なんてどうよ」

「ないわー………」

「一気に冷めるのは止めてくれよ…おっちゃんちょっと悲しいぞ」


 そんなくだらない冗談を言い合っている最中

 ガラガラと扉を開ける音がした


「いらっしゃいませ!」

「一名、行けますか」

「カウンターになりますけど大丈夫ですか」

「大丈夫です」

「ありがとうございます。おひとり様ご来店です!」


 マスターがそう言うと他の定員も続いて復唱していく。

 来店してきたのは若い男だった。20代前半ってところか?スーツを着ているし仕事帰りかな。ま、それはアタシもか。て言うか背高ぇ。


「お?」


 男はアタシの隣の席に荷物を置き、腰を降ろす。

 まぁ当然か。2つ離れた席にはおっさん2人が並んで座り仲睦まじげに楽しく談笑している。その隣には座るのは何となく気が引けるよなぁ。


「失礼します」

「あっはいどうも」


 挨拶されるとは思わなかった……律儀な人だな。


「飲み物は何にします?」

「とりあえず生大で」

「あいよ」


 生大を頼むと男はメニュー表を眺めていく。


「生大お待ち。それとお通しです」

「ありがとうございます。注文大丈夫ですか」

「どうぞ」

「枝豆ともろきゅうと焼き鳥おまかせ5本盛りと……」


 男は眺めたメニュー表からつらつらと注文していく。

 腹が減っているんだろうか?淀みなく数々の品を注文していた。


「少々お待ちください」


 男は注文を終え一息つく、それとほぼ同時に生大に手を伸ばし、まるで風呂上がりに飲むコーヒー牛乳のように傾けて一気に麦の波を口の中へと流し入れていった。



 それを見てアタシは……


「おぉ〜良い飲みっぷりだねぇ〜」




 しまった。と思った。

 思わず口に出てしまった。

 いきなり初対面の人間から横から飲んでる姿に口を出されるのは、困惑以上に恐怖心を覚えるんじゃないのか。

 ……いやでもだってさ?本当に良い飲みっぷりだったし、仕方ないじゃん。誰だって言っちゃうよ、うん。アタシは悪くない…いやちょっとは悪いか。ちょっとだけね。

 なーんて、心の中でちょっと言い訳していると…


「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです」


 男は臆することもなく言葉を返してくれた。

 あっぶねぇ〜!ヘタしたら営業妨害とかなんかそこら辺になるかと思ったぁ〜!


「あ、あははごめんね?ついうっかり口にでちゃってね。初対面からこんなこと言われたらビビるよね」

「そんなことはありませんよ。褒めて下さりありがとうございます。自分はそのように言われたことがなかったので嬉しいです」


 この人良い人〜!超良い人〜!


「あ、そうなの?でも生大そんな一気に飲めるって人そんな見たことないからさ」

「そうなんですね。自分の周りは酒を飲まない人ばかりなのでそのような事は疎く…」

「へぇ〜、アタシの周りは逆に飲む人ばかりだからなぁ。アタシも見ての通りだし」


 そう言いながら半分くらいになった2杯目のジョッキを軽く振る。


「て言うかタメ語だったごめんなさい」

「いえ、大丈夫です。ちなみに自分は23歳です」

「あーいいねぇ20代……アタシはもうすぐ卒業だわ……若いっていいなぁ」


 少し年寄りのような言い回しになりながら、どこか遠い目になってしまう。


「枝豆ともろきゅうお待ち」


 マスターが男の方に先程注文したものをカウンターへと置いていく。


「俺からすりゃぁ二人とも若ぇひよっこよ。人生まだまだこれからだぜ」

「マスターいくつだっけ」

「大将な。男なんざいくつになっても心は高校男児よ。年齢なんて関係ねぇ」

「うっわぁ…………」

「叶多ちゃん…ドン引き顔はやめてくれねぇか」

「いい歳こいたおっさんがそんなこと言ってたらそりゃあさぁ……」

「男なんてそんなもんよ。女が若く見せたいってのと一緒だぜ」

「へぇ〜……。君もそうなの?」


 隣の男へと尋ねてみる。……少しウザイか?


「叶多ちゃん、ご新規様にあんまり絡むのは……」

「大丈夫です。むしろ嬉しい限りです。

 自分はこのようにして酒の卓で話すと言った機会に恵まれなかったので、こちらのお姉さんに話しかけて貰えるのはありがたいですよ」

「お姉さんじゃなくて叶多さんでいーよ。ちなみに君の名前は?上や下だけでもいいから」

「自分は大和やまとと申します」

「大和君か〜良い名前〜。じゃ乾杯〜…………ってアタシのグラス空じゃん。マスター生大おかわり〜。あとアタシももろきゅう」

「はいよ。あと大将な」


「ほんで、なんの話だっけ。……そうそうあれだ。男はずっと高校生なのかって話だ。大和君はどうなの」

「そうですね。大将さんの気持ちが自分も少しはわかりますよ。童心に帰りたい時というものがあるといった感じでしょうか」

「へ〜」

「男はいつまでたっても子供という言葉もこういう所から来ているのかもしれませんね」

「ちなみにどういう時にそう言う気持ちになるの?」


「そりゃそいつぁデッケェもんを見た時よ。生大ともろきゅうお待ち。焼き鳥おまかせ5本盛りもお待ち」

「マスターには聞いてないんですけど〜」

「あはは、しかし真理かもしれませんね。自分もロボットとかで興奮しますよ」

「そんなもんなんだねぇ。…………ま、とりあえず乾杯〜」

「乾杯」


 ジョッキを鳴らし口へと運ぶ。

 3杯目ともなると少し酔いも回ってきた自覚がある。

 大和君は1杯目を飲み干しおかわりをしていた。





 どうでもいい会話を時折マスターが混じりながら酒と共に交わしていく。

 そうしていくうちにアタシの中である感情が芽生えていった。






 大和君この子オトしてぇ……!





 来店してきた時からちょっと思ってたんだよな、ツラめちゃくちゃアタシの好みじゃね?って。

 それに、礼儀正しいし話してて楽しいし…正直かなりアタシのストライクゾーンど真ん中……!

 出来ればオトしたい……!

 彼女いんのかな……いなければアタックしてもいいか……?




 探るか…………!



「大和君さぁ〜。連休は何か予定あるの?」

「連休ですか。これといってはありませんね」

「えぇ〜彼女さんとかと旅行とかさ〜」


 完っ全にマスターと話した内容のパクリである。


「お付き合いしている女性はいませんのでそのようなことはありませんね」

「あ、そうなの。なんかごめんね〜」


 YESッ!

 YES!YES!!

 行けるッ!フリー!

 口では謝っているがアタシの心の中ではガッツポーズが乱舞していた。


 しかしここから

 じゃあアタシと付き合ってみる?

 なんて聞いたら即アウト……!

 いや、気心しれたマスターと話した時みたいに冗談でならいいのかもしれないが初対面でそれはぶっこみすぎだし、こちらはそれなりにその気でもある。

 となると…………


「アタシも連休暇なんだよねぇ。独り身ってこういう時辛いよねぇ〜」

「世間から取り残された感じがしますよね」

「そう!それだ〜。

 も〜やんなっちゃうよね。お酒飲んで酔って忘れるしかないよ。大和君も、おねーさんが奢ってあげるから」

「いえいえ、そういう訳にはいきませんよ」

「いいよいいよ、アタシ大和君と話してて楽しいし年上に奢らせて。お酒代だけでもいいから

 さ。お金の使い所ないんだよ」

「…ではお言葉に甘えてお酒代の半分お願いします」

「ありがとう〜」

「こちらこそありがとうございます」




 かかったな大和君!

 まずは初めにアタシがフリーで連休暇であることを打ち明ける。ここで大和君から誘いが来たらそれはそれでよし。

 しかし、それだけではない。

 上手くいかなかった時の保険としてお酒に付き合わせるように誘導した!

 大和君の性格上大人しく奢って貰うなんてことはしないことは予測していた、だがそのままではアタシに恥をかかせてしまう以上折衷案を出してくることも読んでいる!

 しかし、結局のところアタシに少しだけでもお金を出してもらう以上ある程度は付き合うだろう、おそらく大和君はそういう性格!

 そこで酔って判断力が鈍ったところに今後の約束を取り付ける!そして徐々にオトしていく!

 一歩間違えればアルハラになりかねない……(というか既にそうかもしれない)以上、大和君には楽しんで貰いながら程よくお酒を飲んで貰うことが必須条件!

 そのために試されるはアタシのトークスキル!

 しかし、話している感じでは大和君は少なくともアタシに悪感情は抱いていない……勝った!


 大和君……君の周りにはお酒を飲む人がいないと言っていたね…では、自分がどれほどのお酒の強さを持っているのかはあまりわかっていないんじゃないのかい?

 アタシは違う。アタシの周囲は結構お酒を飲む人が多かったしその中でもアタシはかなり強い方だった。現在の差は大和君が来る前に飲んだ生大一つ分アタシの方が多いが……その程度は屁のカッパなんだよ。


 大和君…アタシは君をオトす!








「叶多さん。大丈夫ですか」

「うぅ〜……まら…まらぁ……」

「……大将さん、お冷いただけますか」

「はいよお冷」

「ありがとうございます。叶多さん、水飲みましょう」

「うぉ〜……うぅ…………」

「叶多ちゃん…らしくなくハイペースだったなぁ」

「そうなんですね」

「普段はここまで潰れることは無いんだけどね。テンション上がってたのかな」





 いや、お酒強すぎか!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

お酒つよつよ男子をオトしたいっ! 夕雲 @yugumo___

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説