第2話 後編

 あー、なんでこうなった。


 生き辛い世の中になった。


 昔は、男はあちこちで立ちションしていた、それが当たり前だった。


 犬と男の小便は許容された。


 今じゃ犬も許されない。


 不寛容だ。


 ……

 いや、立ちションしたい訳じゃないよ。


 物の例えだ。


 オレだって、数年に1回くらいだけど、している奴見てギョッとするもんな。


 あー、でも気を付けないと、例のアプリに登場することになるかもしれない。


 露出狂ってさ。


     ☆     ☆     ☆


 「いい機会だからタバコは止めれば?」

 と、妻が言った。


 まあ、それはそうだよな。


 今タバコは500円台後半する。


 オレは1日20本吸う。


 年間で365箱。


 20万越えだ。


 知ってはいけない、計算してはいけない、不都合な真実だ。


 一瞬だが、それもありかと思う。


 20万あれば、何を買おうか……


 「みんなで旅行に行けるわよ‼」


 冗談じゃない、止めだ、止め。


 なんでオレが我慢した金、当たり前にお前が使う?


 意味が分からん。


 それなら吸った方がましだ。


 もしタバコの値段が1箱3000円になっても、JTの収入は変わらないと言う試算がある。

 

 意地になって吸う人は一定数いる。


 だからだって、さ。


     ☆     ☆     ☆


 毎朝毎朝、アプリを開く娘達と妻。


 そして会社の女ども。


 犯罪に会いたくない、気持ちはわかる。


 でもさあ……


 課金しても半径100メートルじゃ、都会じゃまったく意味がないぞ。


 「今日も増えた‼」

 「昨日は2人減ったのに‼」

 「常に最低9人はいるから、その人達は定住しているってことかしら?」


 いや、分析が怖いよ。


 何が楽しいんだよ?

 中の1人はオレだぞ。


 会社のビルを中心にすると、数えきれないほどの危険人物。


 それだけ性犯罪者が多いと言うことになるが、これ、大量生産してない?

 間違えられたオレみたいにさ。


 都会は人だらけだ。


 ただ、不意に思った。


 木を隠すなら森の中だが、これ、地方都市だとえらいことになっていないか?


 半径100メートル以内に家が数えるほど……

 な、ところも絶対ある。


 ああ、でもそう言うところは電車も混んでいないし、ガチな人と言うことなのか?


 それだとおそらく住んでいけない。


 危険人物、都会に集めていませんかねぇ?


     ☆     ☆     ☆


 今日も忙しかった。


 疲れたし、タバコは自由に吸えないし。


 イライラが収まらない。


 「嫌だ‼また1人増えたわよ‼」


 バードウォッチャーで、更にイラつく。


 入ってきた電車は、目の前が女性専用車両だった。


 ノロノロと移動しながら考える。


 もういっそ、痴漢専用車両をつくってくれないかな?


 女にもいるじゃんか、触られたいやつ。

 割れ鍋に綴じ蓋。

 需要と供給。


 あー、でも。


 きっとタバコ臭いのどうのって、大喧嘩が起こる気がした。


                        (FIN)

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(考えてみてくださいシリーズ1)喫煙者と性犯罪者に人権の無い国 @ju-n-ko

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