第35話 魔幇vs魔幇(Ⅱ)
一方地下世界、俺はハカセと対峙していた。
「何故俺達を処分しなければいけない。不良品だからなのか?」
「うーん少し違うね。君達
「奴等も、エヴォレンジャーも同じって事か?」
「
ハカセはゆっくりと俺を見つめた。
「この「
ハカセは真実を告げニヤリと笑った。不気味な笑顔が俺の顔に迫る。
「そう、この聖典世界は唯一「
何の為に?
「ぷぷぷ、君は何故? と考えているようだね。そうだねぇエヴォレッドは主役。
「ラスボス? 魔幇の総帥(CEO)……?」
「ブブーッ。ラスボスは魔幇総帥じゃないよ、現在地球の支配者、『
「
「
ハカセは天を見つめる。星空のホログラムが浮かび上がった。
「僕達が「月」と呼んでいるあの青い星。実はあれが「地球」さ」
俺達が夜、見上げている月が地球? じゃあ俺達は一体どこに住んでいるんだ?
「かつて数多の生命で溢れていた地球は「
「……俺達は?」
俺達は一体何なのだ?
「この聖典世界で生命体と言われる存在は全て
「
「君達の一部は『影』とか呼んでいるようだね」
「……!」
「やっぱり、思い当たる節があるようだね」
包帯グルグル巻きのハカセは再び笑った。血走っている目が大きく見開いている。
「そうだよ、「ホモ・エレクトロニクス」は魂を失いし存在。人格をデータベース化する際、
ハカセは舞台役者のように大仰な身体の動き。車椅子が良い演技をしてくれる。
「ホモ・エレクトロニクスが……彼等が進化の限界点を突破できない
「これほどの力を持つ「コムニス」が何故「虚神」を倒せない?」
ハカセの大仰な演技がピタリと止まる。俺に背を向いたまま。
「「虚神」と「コムニス」はいわば一心同体。彼等が新たな技術や新兵器を開発すれば虚神はそれら全て複製する事が可能となる。コムニスは決して虚神に勝利する事は出来ない。しかも虚神は「コムニス」や我々のように「人格」や「肉体」を必要としない。
「つまり、コムニスと
「
「……マイナスの魂、影」
「そうそう、そしてここからが重要な話し。よく聞いてね。人の姿をした人形に過ぎない君達「超人」の中で、ごく僅か、コムニスの制御から外れ自由意志で行動する者達が現れる事がある。超人には彼等(ホモ・エレクトロニクス)が失った「魂」の、不完全な破片「偽りの魂」が宿る事があるのさ。コムニスの
「ならば!」
「それが大問題なのさ。危険なのだよ、その中途半端な自我が、偽りの魂は
疑問が繋がっていく。どうやら俺達のような存在は虚神を生みだす危険因子らしい。
「だから、なのか?」
「そう、元来不安定な「偽りの魂」が何らかの理由で制御不能となり、暴走。その結果「超人」や「ホモ・エレクトロニクス」の一部が虚神化する。その為、コムニス主流派の中心的存在。
「やはり不良品ってワケか?」
「少し違うね、魂を取り戻しつつある君達は彼等の希望でもあるのだ」
「意味が解らん」
「「
俺はハカセをと見つめる。
「虚神という絶対的な絶望と立ち向かえる希望、真なる神、『超神』は真の魂が存在しなければ誕生しない」
希望と絶望が、紙一重って事か?
「
「何故だ!?」
「何でこんな子供向番組が世界を救う
ハカセは話を続ける。
「だからエヴォレッド以外、制御が不安定になった
ハカセの説明、この聖典世界の謎が解けていく。
「どっちにしてもこの何ちゃらセカイでは「死」、終わりって事かよ」
ハカセは遠い目で虚空を見つめる。
「まぁね。コムニスの主流派、中心的存在。『
それはこの物語が……混沌作戦が永遠に繰り返し続けられていると言う事。俺達の記憶の中にこびりついている敗北の記憶が連鎖している事とも一致する。
「だからコムニスの中から主流派以外、別な方法を試そうという反主流派が生まれた」
「それがテメエ等か?」
ハカセは大笑い。
「ぷっぷっぷっ~~~~っ。俺か? 俺等は違う、うん違う。俺は電子生命体「ホモ・エレクトロニクス」じゃない。まして「コムニス」の一員じゃない。強いて言えば……う~ん、そうだな「破壊者」とでも名乗らせてもらおうかなぁ」
ハカセは自らを「破壊者」と名乗った。ハカセは話を続ける。
「だけど反主流派が裏で暗躍し
「……」
「そんな思惑利用し、俺等「破壊者」はある計画を実行しようと考えた」
球体に包まれていたエネルギー体が光に包まれていく。
「彼らには、虚神起動の為の触媒、生贄になってもらう」
ハカセ、不気味な笑顔。
「何だって!」
「エヴォレッドには序盤も序盤、第六の
「貴様が、オヤっさん達の命……「
「まぁね」
「もし、この
このゴミ山は失敗と敗北の歴史。
「俺達は何度も何度も「神聖戦隊エヴォレンジャー」という物語を演じていたって事か?」
「そうだよ、君らはずっと戦闘員として戦い続けていたのさ。不憫だね。だから早速試験しよう、エヴォレッドが虚神に勝利できる可能性があるのかどうか?」
ハカセはゲーム機を操作する。
「俺達が生み出せる虚神は所詮紛い物の
ハカセ話しを聞いた俺は。
「オヤッさん達を離せ! まだ死んでないんだろう!」
俺はハカセに飛びかかろうとするが。
「キィキィ五月蠅いねぇ、ちょっと待ってなさい」
「!!」
ハカセが携帯ゲーム機を操作すると俺の身体は硬直し、動けなくなる。
「一体!」
「操作を止めただけさ、ゲームキャラって操作されないと動けないでしょう」
「何……だって」
「言ったでしょう。この聖典世界はいわばゲームのようなもの、「ホモ・エレクトロニクス」いや「コムニス」の意思によって創られた
ハカセはまた大笑い。
「君達はあくまでもゲーム内のキャラみたいなものさ。コムニスによって制御されている。二次元人が三次元人を認識できないように。ゲーム世界の住人達は自分が誰かに操作されていると思っているのかな?」
俺達は、誰かに操作されているだけの只の「キャラ」だったのか……
「言ったでしょう、この聖典世界で完全に自由意志を持ったプレーヤーキャラはエヴォレッドだけだって。しかも君達は
俺は動けない、ハカセはゲーム機を操作し俺の身体を勝手に動かす。俺は車椅子の目の前で這いつくばり動けなくなった。ハカセは超空間転送で魔幇正式刀(ソード)を召喚した。車椅子、機械の手が刀を握る。
「うん、ちょっとネタバレするとね。エヴォレンジャー第六話、爆弾魔人みずからの自爆によって地底に落ちたエヴォレッドは、
俺を見つめるハカセ。
「第六話こそ、エヴォレンジャーロボが初めて神聖合身に成功。本格的に混沌魔神ロボと対峙する、序盤の見せ場なんだよね」
そして、機械の手が俺を斬りつけた。
「この聖典世界で本来、決して死ぬ事の無い君達「超人」。でも俺等は殺害できる……何故なら、コムニスの超人に対する干渉権限をハッキングしているからね」
俺の大量の血飛沫が宙に舞った。
「グワッ!」
「君も、生贄の仲間入りかな。ぷっぷっぷっ~~~~っ」
全身に今まで感じたことの無い、これが死の痛みなのか? 俺はゴミ山から転げ落ちていった。
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