第36話 魔幇vs魔幇(Ⅲ)

 地上ではイバラニア様と爆弾魔人の激闘が続いていた。

「しつこいですね! 中型爆弾」


 爆弾魔人の攻撃を躱すイバラニア様、魔幇四天王の戦闘力はエヴォレンジャー以上、徐々に爆弾魔人を圧倒していく。

「疾風斬」


 イバラニア様の攻撃、強力な竜巻で相手の動き封じ込める。

「うっ、動けまセーン」

茨の槍パラスピア!」


 イバラニア様のマントが複数の茨っぽい槍状に変形、槍が爆弾魔人を貫いた。

「グワァ!! 流石魔幇四天王。お見事デース!」


 串刺しとなった爆弾魔人動くことが出来ない。イバラニア様の勝利。

「さぁ……お話しなさい。爆弾魔人さん、貴男の目的は何?」

「ミーは、破壊と混沌を司る混沌魔人カオスマジン。それ以上でもそれ以下でもありまセーン。ですがパーツは揃いました」


「一体何を!?」

 爆弾魔神が叫ぶ。

「後は頼みマーシタよ。爆弾魔神ロボ!」

 爆弾魔人は自身の爆弾を使い。自爆した。


 第六の混沌作戦は異常な形で終了したのか?


「さて、これからがショータイムの始まり」


 オヤッさん達の身体は球体の中、眩い光に包まれていく。

「さぁ、偽りとは言え魂の欠片よ。この虚ろな聖典世界の破壊神となるのです」


 ハカセは大量の血を流し、動くことの出来なくなった俺の方をチラリと見た。

「君は「親殺しのパラドックス」と言う話しを聞いたことがあるかな?」


 知っている。自分を生む前の親を殺害すれば自分は存在しなくなる。その為親を殺害することが出来ず矛盾が発生する、典型的なタイムパラドックスだ。

「彼等「コムニス」は光速を突破し、超空間テクノロジーによって「時空」の「空」を支配する事が出来た。この聖典世界は最後のフロンティア、「時」を制する為生まれた」


 ハカセはこの聖典世界が生みだされた真の目的を披露した。


「親殺しのパラドックスを破るための仮説は幾つか提唱されている、ループ系SF作品に良くある「殺した世界」と「殺さなかった世界」が分岐するというルート系世界観、聞いたことがあるだろう? でも、それは多くの矛盾がある。もし、一つ一つの行為で世界が分岐していくと言うのならば、無限大に世界が生まれていくと言う事。おかしいでしょ?」


 ハカセの解説が続く。


「パラドックスを破るきっかけは二十世紀の素粒子理論。第三者によって観測されることで「確定」する「シュレディンガーの猫」という思考実験」


 ハカセはゲーム機を操作しながら話を続けた。


「もしも「現実」と「虚構・物語」を入れ替えることが出来るのならば「死んだ猫」の結果を「観測しなかった事実」に置き換え「生きている猫」を観測結果にする事が出来たならば。そう、この世界は時間を遡り、親殺しのパラドックスを破るための壮大な仕掛けなのさ、いわば親を殺す子供は本来現実には存在しない「虚構ウソ」の世界からやってきた刺客と言う事になるね」


 ハカセは叫んだ。

「進化の袋小路に陥った「ホモ・エレクトロニクス」は自身を電子化する前の時間に戻り「魂」を取り戻しもう一度「生命体」へと還元。取り戻した魂の力で虚神イマジナリーデウスを消滅させる。これがこの「神聖戦隊セイクリッドフォースエヴォレンジャー」。この絶望が支配する聖典世界を作った真の理由なのさ」


 ******


 超空間転送によって巨大な骸骨が戦場に転送されて来た。エヴォブルーの叫び。

混沌魔神カオスマシンロボ!?」


 巨大な骸骨に光が集まり形作られていく、半透明な肉体、機械というより生命体に近い姿となった。身体の中心部にメビウスの輪の状の光エネルギーが循環している。頭部に顔は無く、小さな六枚の翼、手は長いが、足はスカートのように末広がり、隠れている。

「こ、これが混沌魔神カオスマシン? 気持ち悪~~い」


 エヴォブルーの叫び。

「一体何が起こっているの? 訳がわかりませんわ!」

 エヴォピンクも叫んだ。


 今までの混沌魔神とは明らかに違う、異形の姿にエヴォレンジャー達は動揺を隠せなかった。動揺するエヴォレンジャー突如エヴォレッドから通信が入る。

「みんな、神聖セイクリッドマシンに搭乗するんだ!」


 神聖セイクリッドマシンに搭乗している、エヴォレッド。

「レッド! 大丈夫だったの?」

「ああ、なんとか。ある人に……助けられた」


 聖典シナリオ通り、エヴォレッドは地下で「父の幻影」と接触していたようだ。

「良かった、ほんとに良かった……」


 ホッとするエヴォピンク、他のメンバーも安堵する。エヴォレンジャーの様子を見つめているガイマーモン様、そしてイバラニア様。

「神聖合身する!」

「了……了解!」


 急に「合体」と言われ困惑するメンバー、だが目の前には巨大な混沌魔神がいる。合体しなければ勝利する事は難しい、全員神聖マシンに乗り込み。

「神聖合身!」


 各神聖マシンが合体モードに移行。

「行ける!?」

「ええ!」


 今までとは違い、合体シークエンスが全て順調に推移する。


 主要パーツ、頭部と身体の中枢部、エヴォレッドのブースターパックが変形、腕部のグリーン。胴体のイエロー。腰部と推進装置のピンク。そして脚部のブルー。五体のブースターパックが合体。エヴォレンジャーロボが完成する。


 各神聖セイクリッドマシン。右肩部レッド、左肩部にブルー、背面にピンク。そして足、右足にイエロー、左足にグリーンが装着されることで真のエヴォレンジャーロボとなる。


 神聖合身完了。エヴォレンジャーロボが完成した。全員が中枢、メインコックピットへと移動。神聖合身完了、五人揃って決めポーズ。


「神聖合身、完成、エヴォレンジャーロボ!!」

 エヴォレッドが叫んだ。


「行くぞ! カオス魔神」

 巨大なエヴォレンジャーロボは不気味な混沌魔神と対峙した。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る