第40話 エヴォレンジャーロボvs爆弾魔神ロボ(Ⅳ)

 通信、ハカセから。

「どうやら君は虚神の中心核を知覚できるようだね……やはり君は「偽りの魂」を有している。しかも本物に限りなく近い。だから虚神イマジナリーデウスと戦える……君はこの虚構ウソの世界で新たな命が生まれる可能性を示した。だが、よくよく注意したまえ、それは君が「命」を有していると言う事だ。人間、生命体に近付いた証、だから君は戦いに負ければ……死ぬ。リセット無し。やり直しも、転生も出来ない」


「ご忠告どうも、だが今死ぬ気はねえぜ」


 仲間を救いたい……死んじまってまで「モノ」として扱われる戦闘員オレタチの呪われた運命を断ち切る…………フッ、そんな所が「人間」って言われる理由なのか?

「大バカだったんだな「人間」って奴は」


 俺は小さく呟いた。コックピット付近に虚神の攻撃が命中、破片が飛び散り、警報音が鳴り響く。だが!

「痛ってぇ~~。だがヨユーだよな、相棒? まだ戦えるよな」


 巨大ロボのレバーを操作、動く。相棒も戦う気だ。

「やるか!」


 ひびの入ったマスク、一部が剥がれオチ、片眼が見えてしまう、俺の目は虚神を睨んでいだ。

「これが最後だ!」


 真の中心核コアに照準を定める。唯一まともに機能している兵装。それは……

「セイクリッド……ビーーーーム!!」


 半壊している巨大ロボの頭部にエネルギーが集中。巨大ロボは必殺技を放った。


 眩い紫色の光線が虚神を貫く。

「剥き出しだぜ!」


 中心核コアが剥き出し。虚神のコア自体も大ダメージを受けてしまった事によって、自己修復能力にも影響が出ていた。

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ……」


 虚神の叫び。

「ウソやろ、あのボロいロボットが……なんやアレ」

 珍しく、エヴォイエローが絶句している。

「…………」


 エヴォレッドは沈黙。


 ボロボロの巨大ロボ、かつて「エヴォシャドウロボ」と言われた巨大ロボは、同じくボロボロの大剣を引き摺りながら虚神に近付いていく。


 より強く、より早く、より美しく……原子を、時空を、宇宙を制し、究極進化を果たした言われる未来の人類、それがこんな空っぽの神様なのかよ。怒りも憎しみもねええ、笑う事も、泣く事もねえ。何にもねえ! これが俺達の未来の姿なのかよ! 違うよな? 間違ってるよな? 人間はもっともっと暖かいよな。


 俺と。俺の「影」が完全に一体化する感覚、生きているという実感、命の輝き…………俺は負の魂を……神を、絶望しかない運命の輪を、ブッタ斬ってやるぜ!


 知ってるか? 進化ってのはなぁ、神が下した絶滅と言う審判ジャッジメントを覆そうとする…………死にゆく運命に抗う生命の……抵抗レジスタンスなんだぜ。


最終ファイナル審判ジャッジメント……大剣グレートソード……Z斬」


 巨大ロボは剣を振り上げ中心核をめがけ左肩からZ字の斬撃……がだ、強度を失っていた大剣は最後の斬撃に耐えきれず、コアを目前に真っ二つに折れてしまう。


「チッ……美味しいところはヤッパ主人公が持って行きやがるか」


 俺の操縦する巨大ロボは後方へ下がる。通信。

「よう、坊ちゃん共。爆弾魔神を倒すチャンスじゃねーのか? 必殺技の出番だぜ」


 音声のみの通信。エヴォレッドが反応!

「言われなくても! セイクリッドビーーーーム!」


 エヴォレンジャーロボの腹部。五色のエネルギーが集中……そのまま五色の螺旋と聖獣を模したビームエネルギーが虚神を貫いた。


「ギャァァァァ」


 虚神の叫び。剥き出しのコア。


 エヴォレンジャーロボは突進、最終必殺技を決める。


最終ファイナル……審判ジャッジメント……クロス斬!」


 エヴォレンジャーロボの必殺技必殺。エネルギーを集中させた両手手刀。左手手刀、回転、右手手刀で魔幇結晶「中心核」をバツの字に切裂き破壊。そして装甲解放、廃熱。

「フォォォ……」


 爆弾魔神ロボは世界から消滅するように消え去っていった。

「勝った……のか?」


 コックピット内エヴォレッドが小さく呟いた。

 

 戦いの様子を見つめているハカセ。俺に向かって通信。


「おめでとう。オーディションは無事合格だよ。君は今日から神聖戦隊の追加戦士、『エヴォシャドウ』こと『ヒカゲナナクロウ』だ。忙しくなるよ」

「ならねえよ。俺は魔幇戦闘員のままで十分だ……」


 俺は拒否、だがハカセは。

「それは無理な相談だね。もう君は「聖典シナリオ」に組み込まれてしまった。君はこれからエヴォシャドウとして魔幇と戦わなければならない、聖典がそう君を強制していく、拒否は出来ない。今、この瞬間、


 生き残っているモニターいっぱいにハカセの顔が映しだされる、不気味な笑み。


「それに君はね、最初ハナから戦闘員じゃないからね…………遠い過去、虚神イマジナリーデウスとの戦闘でこの巨大ロボ同様半壊してしまった俺自身の代替品、代役さ。君の身体は元々俺「ヒカゲナナクロウ」こと「エヴォシャドウ」用。だから俺は君を操作することが出来る。君は君じゃない、俺なんだ! 追加戦士である「エヴォシャドウ」の、俺の記憶と意識がコピーされている。思い当たる節、色々あるだろう?」


 どうやら俺は戦闘員である前に、ハカセ……かつて「ヒカゲナナクロウ」そして「エヴォシャドウ」と言われていた男の代役スペアとして生みだされたらしい。


「…………チッ、そういう事か!?」


「そうそう、一つ良いことを教えておこうかな。第四の混沌作戦カオスミッション、ミサイル魔人との戦闘。聖典シナリオではね、エヴォピンクのピンチを救ったのは実は謎の男「ヒカゲナナクロウ」なのさ。その方がカッコいいし運命的だろう?」


「……だからなんだって言うんだ!」

「エヴォピンクのハートを奪ったのは「ヒカゲナナクロウ」という「キャラ」。セントウインじゃない……もう一人の君自身さ。残念、ぷっぷっぷっ~~~~っ」

「…………」


 エヴォシャドウ……ヒカゲナナクロウ……その名が俺に与えられた宿命なのか?


「でもでも、俺の代替品候補はまだ沢山いたんだよね。その中で唯一君だけが目覚め、このオーディションに合格出来たのも事実。おめでとう新ヒカゲナナクロウ」


 嬉しくねえよ。

「そうだ! オーディションの合格祝いに一つ、良い事を教えてあげようかな。さっき言いかけて止めた事。何故、子供向けのスーパー戦隊シリーズ作品が世界を救う聖典シナリオに選ばれたのか? 謎だよね」


 確かに、子供向け番組が虚神イマジナリーデウスを打倒する計画の鍵となっているのか。俺にはわからない。


「それはね、この「神聖戦隊エヴォレンジャー」という作品が。この物語がどのような媒体でどのように記録に残されていたのか……今となっては闇の中だ。でも、この物語は過去「存在していないはずのスーパー戦隊シリーズ」。存在しない作品。なのに今この歴史上に何故か存在している。理由、可能性はただ一つ。即ち神聖戦隊エヴォレンジャーは『虚構ウソの世界』からやってきた作品。現実世界、歴史上の作品では無いのだよ……だから、この作品は現実世界で「親殺しのパラドックス」を破る可能性を秘めている、唯一「虚構」と「現実」を繋ぐ物語なのさ」


 ハカセは勝ち誇るように俺に告げた。

「さぁ、「エヴォシャドウ」として、可愛い後輩達にアドバイスしてあげないとね」

「チッ!」


 ハカセはエヴォレンジャーロボとの回線を開いた。


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