第41話 エヴォレンジャーロボvs爆弾魔神ロボ(Ⅴ)

 残された二機、エヴォレンジャーロボとかつてエヴォシャドウロボと言われたボロボロの巨大ロボ。対峙。エヴォレッドの通信。

貴男あなたは一体」


 モニターは切ってある、音声のみの通信。

「さぁな、敵かもな」

「……貴男は魔幇なのか?」

「ならどうする?」


 エヴォレッド暫し沈黙。

「敵ならば……」


 エヴォレンジャーロボがファイティングポーズ。 

「貴男が、魔幇と言うのならば、僕が倒す!」

「頭カテーな坊ちゃん。よく聞いときな。世界の殆どは正義でも悪でもねえ、どっちでもねえ物で出来てるんだぜ。だからたまには綺麗事セイギだけじゃねー、もっと別の声を聞いてみる事もお勧めするぜ」


 一瞬、エヴォピンクはハッとする……が。

「悪は……僕が、倒す」


 エヴォレンジャーロボが殴りかかってくる。ボロボロの巨大ロボ、パンチ、先刻のセイクリッドビーム発射で崩壊しかかっていた頭部が見事に吹き飛ばされた。だが俺は。

「なぁエヴォレッド。テメエは世界を救っちゃうヒーロー様なのだろうけどなぁ……」

「なにぃ!」


 頭部失っても尚、パンチを繰り出すボロボロの巨大ロボ。

「俺は、いや俺達はなぁ、世界を支える、その他大勢エキストラ様だ! 覚えときな」


 だが、一瞬……脳裏にエヴォピンク、ロザリーの笑顔が、泣き顔が脳裏をよぎった。エヴォレンジャーロボの顔面にヒットする直前、パンチを繰り出した巨大ロボの拳が止る。


 俺は、小さく呟いた……

「俺は……ヒーローにはならねえ……そうだったな、みんな…………だから、今日はこれくらいで勘弁してやるぜ」


 そのまま、かつて「エヴォシャドウロボ」だった巨大ロボの身体が崩壊していく、手が崩れ、足が崩れ始まる……


 ボロボロの巨大ロボの周囲に湯気のような白煙、そのまま巨大ロボの身体を覆っていく。その様子を見つめている「ハカセ」血走った目が歪む。

「これにてオーディションは無事終了。君はこれから「エヴォシャドウ」こと「ヒカゲナナクロウ」だ、聖典シナリオでは六番目に登場する聖戦士、この絶望で満たされた世界を救う主要メンバーの一人だ! ぷっぷっぷっ~~~~っ」


 ハカセの身体も巨大ロボ同様崩れ去っていく。

「だが、忘れないでね。この虚構ウソだけの聖典世界で救世主「主人公ヒーロー」は唯一エヴォレッドのみ。この世界を救えるのは主人公だけだって事に…………」


 電動車椅子、白衣と包帯を残しハカセの身体も崩壊していく。携帯ゲーム機が電動椅子に残されていた。

「また一つ希望……が生まれ……イバラニア……必ず、君を……救う……」

 ハカセはそう言い残し、消滅していった。



 一方地上、巨大メカ崩壊していく様子を見つめながら、神聖戦隊? それとも魔幇? 何者かが誰にも聞かれる事の無い小さな声で呟いた。


「…………これは、大規模修正が必要となるな」


 戦場ステージに再び静寂が訪れようとしていた。



 ******


 同じく静寂の訪れた地下世界。椅子に落ちたていた携帯ゲーム機。時の止まった電動車椅子、何者かのシルエットが携帯ゲーム機を拾い上げ。闇の中に歩き去って行った。






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