第4話:カオスミッション(Ⅱ)
遥か上空、安全運転で爆走(?)するリニアモノレールを見つめる五人の人影。
赤、炎の聖戦士が叫んだ。
「みんな、行くぞ!」
全員が応える。
「「「「オォ」」」」
「トウ!」
マスク、バイザー部分に映り込むリニアモノレール。
魔幇にジャックされたモノレールにどんどん接近していく。
「キイーーーーッ!」
哨戒、周囲を警戒していた同輩「T154号」が叫んだ。やはり、来た! ……ったく、空から降って来るのは世界の運命を背負った美少女だけにして欲しいぜ。
「丁重にお出迎えしてやりなさい」
上官命令! 俺達はベルトの装着されている超空間転送装置を使用し「魔幇正式機関銃」を召喚した。
ドラムマガジン式、若干レトロ&チープ、玩具っっぽいデザインの機関銃。
「フン、来たな! 蜂の巣にしてやるぜ」
約二十名が一斉攻撃。が、何故か命中しない。訓練では百発百中、確実に命中させている一斉斉射、なのに当らない!? 弾丸は絶妙な距離で奴等を掠めるだけ。
だけど、たとえ奴等に命中したとしてもショボーい火花がパチパチ飛んで、わざとらしく痛がるだけなんだけどさ。
そんな事を考えてる内に乗客=人質がいる事もお構いなし。奴等は屋根に飛び降りそのままドアや窓ガラスを蹴破り侵入して来た。
オイ、壊したドアや窓ガラス、後で修理するの俺達なんだぞ! ホント迷惑な奴等だ。
『
正義の味方、エヴォレンジャーは「乗客=人質」を完全に無視し俺達対し攻撃を開始する。
「トウ!」
「キィ!」
「ヤー」
「キキィ!」
エヴォレンジャーは狭い車内で容赦無く暴れ回った。
「みんなぁ~、乗客さん達には迷惑かけないようにね」
「キキィ!」
わかっているさ。俺達は、乗客達の安全を最優先しつつエヴォレンジャーを迎え撃つ準備を始めた。俺達の大先輩、オヤッさん「A106号」が「キイ」と叫んだ。
「見せ場だぜ! 野郎共!!」
「キキイ!」
狭い車内での乱戦&混戦がスタートする。
「トウ!」
「キィーーーー!」
エヴォレンジャーの中で最も攻撃力の高い、リーダー『エヴォレッド』の攻撃。赤色、炎の聖戦士らしい高熱を纏った斬撃、その攻撃はメッチャ痛いし熱い。
俺達を次々と蹴散らして行く。エヴォレッドが天に向かって手を掲げ叫んだ。
「聖霊獣!」
亜空間から獅子をモチーフにした小型ロボットが召喚される。
変形、エヴォレンジャーが使用する基本武装(
上位武装『セイクリッドファイアーソード』を完成させる。
幼児向けクリスマス商戦、目玉の一つとなるだろう。大変だなぁ、お父さんお母さん達は……って……ん? オイ、待て! バカか!? 車内で火なんか……
「バーニング…………
「キィーーーー!」
高熱の炎を纏った斬撃、戦友が一瞬で黒焦げになった。俺は「キィ」と叫ぶ。
「オイ、車内で火、使うなよ! 犯罪者かよ」
危惧していた通り、リニアモノレール車内で火災発生。巻き添えを食って黒焦げになった乗客。
なのに乗客達は何事も無かったかのように座ったまま、黒焦げになったまま新聞を読んでいるポーズ。当然、新聞は燃え尽きている。
「消火! 消火! 乗客の安全最優先」
上官の命令で消火作業を開始する。ホント迷惑な奴等だ。消火と迎撃、そして乗客の保護、俺等の仕事がどんどんと増えていく。
エヴォレンジャーのNO2、サブリーダーである美少女聖戦士、マスク姿でも何故か美少女聖戦士♡ ピンク色、微風の聖戦士『エヴォピンク』が可憐にコール。
「聖霊獣!」
亜空間から小鳥をモチーフにした小型ロボットが召喚される。変形。同じく基本武装に合体。上位武装『セイクリッドウインドレイピア&ロザリオ』を完成させる。
左手にレイピア&聖なる紋章が刻まれた
「ヤッ! ヤッ! ヤーーッ!」
エヴォレンジャー最速を誇る超音速連続突き。
「スーパーソニック……
「キィ! キィ! キキィ!!」
またもや戦友が餌食に。連続突き喰らい吹き飛ばされる。エヴォピンク、カッコ可愛く決めポーズ。背後に花びら舞い散るCGエフェクト。
「感激ぃ~~~~」
歓喜の「キィ~~~~ッ」。戦友達の中でもエヴォピンクファンは多いらしい。だが、火と風、最悪の組み合わせ。一気に火の勢いが増した。
車内は地獄と化した。
「消火! 消火! 避難誘導」
一方。
「あ~面倒やなぁ~トゥ」
車両の反対側から攻撃して来た黄色、
そうなのだ、奴等はとても強いのだ。
そして更に一名、クールビューティー系美少女戦士。青色、清水の聖戦士、『エヴォブルー』。上位武装は弓矢『セイクリッドアロー』、だが狭い車内では弓矢は使い難い。標準武装、
エヴォブルーの斬撃、次々倒されていく戦友達。俺達はエヴォレンジャー挟撃され、次第に車両中央部に追い詰められていく。
「ヤァ!」
「キィ!」
「ヤァ!」
「キキィ!」
俺達がボロボロになりながら奴等と戦っている後方、イバラニア様は……
「無理ぃ~~~~」
「ゴホン。エヴォレンジャーの奴等がやってきた以上、イバラニア様は妖魔神官として使命を果たさねばなりませぬぞ。ささっ、お召し替えを」
「あの服やだぁ、恥ずかしいトコ見え過ぎちゃいますぅ」
イバラニア様は
困り顔、とは言ってもマスクで顔は見えないターンA髭の執事。
「悪の女幹部の衣装というのは、
「イヤァ、恥ずかしいですぅ」
イバラニア様は恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、涙目状態になっている。
「一応ですなぁ、子供達やその親御さん達が見ても、クレームや批判が来ないようちゃんと配慮された衣装なので、その、健全ですから……」
大ウソだ! あの「正装」は幼児向けだと完全アウト……だと思う。
「ジャージのままでいいよね、いいよね?」
涙目で懇願するイバラニア様。可愛らしい。ターンA髭の執事、新人アイドルのワガママに振り回されているマネージャーのようだ。
「そ、それでは作戦の責任者として示しがつきませぬので」
「いいじゃない、衣服は作戦には関係無いんですからぁ」
イバラニア様ド正論で反論。
「いやはや、我等にも色々事情というものがありまして、もう少々悪の女幹部としてのご自覚を……」
「無理ぃ~」
超弩級ドスケベボディーのイバラニア様。実はとっても恥ずかしがり屋。だから何時もジャージを着用しているのだ。
すぐ近くまでエヴォレンジャー迫っている。
「ええい! イバラニア様。失礼いたします」
ジャージを無理矢理脱がせようとするターンA髭の執事、実力行使、もはや性犯罪者のようだ。だが、心の中で熱く執事を応援している俺。我ながらマジ邪悪だ。
「イ、イャアー、引っ張らないでぇ」
引っ張られたジャージの隙間からチラリと生肌が露出している。
「お、お前達もお召し替えを手伝いなさい」
執事は双子メイドに命令する。
「ハハッ、イバラニア様。失礼致します」
「いやぁ~~~~~~~脱がさないでぇ~~~~」
俺は戦闘中にもかかわらず、思わずイバラニア様をガン見。油断!
「
「スーパーソニック……」
エヴォピンクの連続攻撃! エヴォピンクもなかなかの
エヴォピンク必殺の突きが俺の顔面に迫る! ああぁ、消滅=戦死を予感した…………もし、転生できるのなら。俺は、俺はイバラニア様のジャージになりたかっ……
「
「キイーーーーッ!」
ピンクの攻撃を刀で受け止めてくれたのは……オヤッさん(A106号)!?
「無事か、新入り!」
「オヤッさん!」
でっぷり腹をプルンと揺らし、オヤッさんは俺の代わりに吹き飛ばされた。
「オヤっさーーーーーーーーん」
俺達ではエヴォレンジャーに勝つ事は出来ないのか!? だが、このままではイバラニア様と幼児達がエヴォレンジャーの奴等と接触してしまう。マズイ!
必死の防戦、だが俺達の戦闘力では、足止めする事すら叶わない。
一方車両の反対側。イエロー&ブルー&グリーンの猛攻。
「ヤッ!」
エヴォブルーは同輩、T154号と対峙する。体育会系T154号は
「コイよ、返り討ちにしてやる!」
徴発、その後ファイティングポーズを決める。
「ヤーッ!」
エヴォブルーはT154号に斬りかかろうとする……が狭い車内。エヴォブルーは床に散乱していた幼児の玩具を踏んでしまった。
「キャッ!」
エヴォブルーは転倒しそうになってしまう。
「あ、危ない」
転倒してしまいそうになる女の子。人の良いT154号は思わず助けようと駆け寄る。
「キャァ」
エヴォブルーはそのままT154号を下敷きにして倒れ込んだ。
T154号の手は偶然エヴォブルーの胸へ、ラッキーエッチシチュエーション発生。T154号はそのまま数回、エヴォブルーの控えめなお
「イ、イヤァーーーーッ!」
クールビューティーが可愛らしい声で叫び声をあげた。両手で胸を隠す。
「キィ…………」
「ボクの、ボクの胸が小さいですって!! バカにするな」
T154号は蹴り飛ばされた!
「キィーーーーーーッ」
エヴォブルーは自身の胸が控えめな事をかなり気にしていたらしい、乙女だ。だが濡れ衣だ。
そもそも俺達はエヴォブルーに「胸が小さい」なんて言えるはずがない。何故なら……何故ならば……何故ならば俺達は「キィ」としか言えねえからだ。
エヴォブルーに蹴り飛ばされて、再び俺達の集団に混じってしまったT154号。
「ジーーーーッ」
「あれ? 誰だっけ?」
見つめ合うエヴォブルーと仲間達。エヴォブルーは自身の胸を揉んだT154号が誰か解らなくなってしまった。奴等には俺達が全員同じに見えていた。
左右から挟撃されモノレールの中央に追い詰められる俺達。火の粉で黒焦げになっている乗客、熱くないのかよ? 割れたガラス片を浴び血だらけのサラリーマン。服が燃え、ほぼ下着丸見えの女子校生達、地獄絵図。だが、乗客達は置物みたい椅子に座ったまま。
割れたガラスの破片が幼児達に降り注ぐ。危険だ。
「危ない!」
ジャージ半脱ぎ状態のイバラニア様は、自身の武装、エジプト文明の装身具「ヘカ」をモチーフにしたという
「大丈夫?」
「うん、ちょっと怖かったけど大丈夫。ありがとうお姉ちゃん」
幼児達は目の前で繰広げられる、リアルヒーローショーに目を輝かせている。
「貴方達、子供達を守って」
「キィーッ!」
直属の部下、メイド&執事は子供達を守るように前面に仁王立ち。火の粉や爆発時の破片から幼児達や乗客を守る。
「ピンポンパンポーン。え~車内で無闇に暴れ回りませんようにぃ~」
ようやく登場、我等の主戦力、車掌魔人が突進、エヴォレッドへ攻撃。
「ピンポンパンポーン。車掌パンチしまーす、車掌パンチしまーす、車掌パンチィ~~しまーす」
ほぼ量産型混沌魔人である車掌魔人、攻撃方法はとてもチープ。だが量産タイプと言え流石は混沌魔人、戦闘力は高い。エヴォレッドを圧倒する。
「クッ!」
エヴォピンクがエヴォレッドを押しのける。
「ここはわたくしに任せて!」
「待て! ピンク。無茶はするな!」
「スーパーソニック……トゥシュ!!」
無謀にもエヴォピンクが突進、レイピアの連続突きが車掌魔人にヒット! だが効果が薄い!?
「ピンポンパンポーン。反撃しま~す。車掌連続パンチ、車掌連続パンチ、車掌連続パンチ」
車掌魔人の連続パンチ。オラオラオラ状態。車掌魔人の猛攻に押し負け攻撃を受けてしまうエヴォピンク。
何発か車掌パンチを喰らってしまった。絶妙にぱいんと揺れるおっぱい、全身からショボい(?)火花が飛び散る。
「キャ!」
「大丈夫かピンク」
ダメージを受けたエヴォピンク。戦闘服にスパークが走った。
「よ、よけいな真似しないで! まだ戦えますわ」
「全く、無茶ばかりするお嬢様だ」
エヴォレッドはエヴォピンクを庇いつつ、前面に立ち車掌魔人に対峙する。カッコいい。
「トウ!」
「ピンポンパンポーン。ジャンプしま~す」
リニアモノレールを飛び出し、車両上部、屋根の上へ。
雄大な海が
ロケ予算は潤沢? でも、俺達のロケ弁が微妙になって行くのは何故なのだろうか……?
屋根上での激闘が続く。何度も斬り結ぶエヴォレッドと車掌魔人。
「バーニングザン!」
「ピンポンパンポーン。車掌連続パンチしま~す」
レッドと車掌魔人の必殺技が激突、衝撃波がリニアモノレールを揺らす。魔人とレッド、激しい攻防が続く。一方。
「え~陽動作戦!? わたくし達は囮だったのですかぁ」
半脱ぎジャージ状態のイバラニア様。ジャージ、服を整え直しながら通信。
「ウム、軌道エレベーターを攻撃する旧人類時代の超ミサイル兵器、発掘作業は無事完了した。もうこのリニアモノレールに用は無い。乗客達の安全には配慮しつつ、撤退するように」
大元帥ガイマーモンの顔がディスプレイに映しだされている。なんとリニアモノレールのジャック作戦は陽動だったのだ。
撤退命令が下った、イバラニ様満面の笑み。怠惰オーラ全開。
「撤退、てったい、てったぁ~~~~い。帰りましょう」
「みんなぁ、また今度遊びましょうね」
「うん、お姉ちゃんバイバイ」
「バイバーイ」
逃げ上手のイバラニア様。手を振りながら幼児達に別れを告げ、一瞬で撤退開始。
「我輩達も逃げるぞ」
イバラニア様、お付きの執事&メイドの後に続き、すぐに逃げ出す「T117号」。
「おーい! ちゃんと見てたぞ。大先輩、仲間の影に隠れて、全然戦わねーで、コソコソ逃げ回ってただけでしょうが」
俺の問い詰めにT117号は。
「ふん。まだその時じゃないのでね」
T117号は意味不明の回答。そのまま逃走。
イバラニア様達はリニアモノレール空飛び降りる、真っ先にT117号、そして俺達の仲間も次々飛び降りていく。他の仲間も全員飛び降りた。
「キイ!」
俺は黒焦げになって倒れている戦友の肩を担ぎ脱出を試みるが……足、何かを蹴ってしまった。ゲーム機? ずいぶんと古いゲーム機だ。
「ゲーム機……」
俺はゲーム機を拾い上げ、持ち主と思われる陰気で不気味なサラリーマンに手渡そうとするが……サラリーマンは何故か受け取ろうとはしなかった。小さな声で。
「レベルアゲヨロシク」
突如大爆発! 何か爆発したのか?
「チッ、しようがねえ」
エヴォレンジャーが迫る、時間が無い、俺達も脱出する。ジャンプ。そのまま俺達はスカイダイビング。だが、海面に接触する前に俺達は全員……消えた。
「レッド! 奴等逃げたみたい」
「ブルー、イエロー」
エヴォレンジャー達が合流する。全員マスク姿、動作はオーバーリアクション気味。
「逃がすか! 追うぞ!」
「オウ」
やっぱり、わざとらしいオーバーリアクション。カッコ良く動きを決める。
「皆様、大丈夫ですか?」
今まで散々暴れ回っておきながら、エヴォピンクはズタボロになっている乗客に話しかけた。だが乗客は。
「助けてくれてありがとう、エヴォレンジャーのお兄ちゃん、お姉ちゃん」
「助かりました」
「エーン、怖かったぁよ~~~~っ」
先程までイバラニア様と遊んでいた幼児達がエヴォレンジャーにお礼。乗客達、微妙に素人臭を漂わせる棒読み口調は約束?
黒焦げになった乗客達、下着姿の女子校生も何故かエヴォレンジャーに感謝している。何故だ? 奴等が正義の味方だからなのか!?
エヴォレンジャー達もリニアモノレールからダイブ。奴等も海面すれすれで、消えた。
……暫くして、何事もなかったかのように再び動き出すリニアモノレール、幼児達は保母さん相手にはしゃいでいる。
その他の乗客はまるで置物のように動かず、
だがリニアモノレール内は血の海、車内の火災は未だ鎮火していなかった。
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