第29話 爆弾魔人(Ⅱ)

■■Evolution:06「Explosion!! 非情冷酷、爆弾魔人」(戦闘パート)■■ 


 俺達は、なりたくて戦闘員になった訳じゃない……


 いつも通りのグダグダ展開だった。軍用トラックの側、自爆戦闘員達はこの日まで、丸太に向かい黙々とタックルの訓練を続けていた。

「いいデースかぁ君達。でも抹殺できれば良いのデース」

「キイ」

「キイ」

「キキイ」


 約二十名、自爆戦闘員達は戦闘服バトルスーツ、全員特殊爆弾を背負い、出撃命令を待っている。


 今回もヤル事は変らない。俺達は戦闘員だ。混沌作戦カオスミッションが始まれば、誰かが、いや誰もが犠牲になり得る。


 しかし目の前、確実に死ぬ事を運命づけられた「仲間」がいる。俺達のチームも、俺と戦闘員っ子ちゃん以外全員特攻に参加している。


 トラック内……誰も、一言も発しない。沈黙が息苦しい。

「さて、そろそろ第六の混沌作戦、バトル開始でしょうか?」


 爆弾魔人は一人呟く。決めポーズを決めたエヴォレンジャー。出撃命令。戦闘開始。


 今まで通りの戦闘を行う俺達がエヴォレンジャーと対峙。

「キキイ!」

「キキキイ!」


 戦闘開始、通常通りフォーメーションを組む。

「キイ……」

「キイ……」


 今回俺達の役目は牽制のみ、積極的に戦いを挑むなと命令されている。周りを取り囲み、できるだけエヴォレンジャーを一箇所に集めるように戦闘する。


 見守ることしか出来ないイバラニア様。今にも泣き出しそう、俺は悲しげなイバラニア様を見たくない。

「……?」

「何か変ですわ」


 エヴォレンジャーも異変に気付いた。攻めてこない、遠巻きに取り囲んでいる俺達、爆弾魔人は単身エヴォレンジャーと対峙し、小型爆弾を投げつける。

小型爆弾グレネード攻撃」


 小型手榴弾を次々と投げ爆発させる。動きを封じるためだ。

「クッ!」


 手榴弾の攻撃によりエヴォレンジャーの動きが止まった。

「イマデース! 戦闘員諸君、特攻するのデース」


 真っ先に飛び出した自爆戦闘員、なんと……「イヤミ戦闘員」!!

「フッ、本日が我輩の「その時」なのでしょうかね」

「何でアンタが」


 何時も逃げ回ってばかりのT117号が突進する。

「フッ、チョロチョロ逃げ回るのもいい加減飽きたのでね。誰か一人が……良いのでしょう? だったら犠牲は最小限、我輩だけで十分です」


 T117号突進、か細い割に素早い動き。

「我輩最初で最後の大活躍! エヴォレッド。覚悟!」


 イヤミ戦闘員がエヴォレッドに向かい突進していく。

「レッド! 危ない!」


 エヴォブルーが基本武装で銃撃。イヤミ戦闘員は銃弾を受け転倒。足を撃たれ動けなくなってしまう。

「やはり、今回も……これまで……なのか……後は頼んだぞ……」


 特殊爆弾に誘爆、イヤミ戦闘員は大爆発の中に消えていった。

「きいーーーーっ!」


 戦闘員っ子ちゃんが地面に座り込む、呆然としていた。

「あかん。この爆弾はかなりヤバいで」


 エヴォイエローが叫ぶ。今までにない爆発の威力。エヴォレンジャーに緊張が走った。

「ピンク!」

「わかっていますわ!」


 エヴォピンクは後方に下がり。エネルギー障壁バリアー展開の準備。長距離攻撃を得意とするブルーとイエローが自爆戦闘員を接近させないよう牽制する。


 やはりチームとして対策をたたられれば、攻略は困難だ。

「フフフッ、やはりこうきマースよね」


 爆弾魔人は余裕。

「飽和爆弾攻撃」


 大量の爆弾攻撃、揺れる地面、更地になっていた、旧スラム街、高校跡地が更に爆煙に包まれる。大爆発が続き身動き出来なくなってしまうエヴォレンジャー達。

「目潰し爆弾。イマデース!」


 煙幕爆弾。エヴォレンジャー達の視界が遮られた。レッドの叫び

「いかん!」


 自爆戦闘員が次々、突入していく。

「チャフ!」


 エヴォブルーが叫ぶ。幾つかの爆弾にセンサー類を撹乱するセンサー阻害粒子チャフ入りの爆弾を混ぜていた。エヴォレンジャーのセンサーを使用不能にする。


 爆煙に紛れ特攻する自爆戦闘員、狙撃不可能。

神聖セイクリッドウォール!」


 エヴォピンクは広域防御技を使用、自爆戦闘員達はエネルギー障壁に衝突、前に進めない、転倒。そのまま大爆発する。

「クッ!」


 広域防御技は神聖力セイクリッドパワーを猛烈に消費する。そう長くは維持できない。マスク内、エヴォピンクは苦悶の表情となった。

「みんなぁ!」


 イバラニア様は自ら戦おうと立ち上がる。しかし執事戦闘員に制止された。

「真に……真に遺憾ながら、まだ。戦いに出ることは許されません……」

「でも、戦闘員さん達が! こんなの、こんなの酷すぎますぅ!!」


 イバラニア様はメイド戦闘員にすがりつき泣き出してしまった。

「この混沌作戦カオスミッションは正式に発令された。神聖なる第六の作戦、必ずや、必ずや成功させねばなりませぬ。犠牲となった戦闘員達の為にも」


 執事戦闘員も拳を握りしめている。気持ちはイバラニア様と同じだ。

「くっそー、やってやる、やってやるぞ」


 T154号も特攻、イエローのミサイル攻撃を一流ラグビー選手のごとく巧みに躱しながら、エヴォピンクが張り巡らしているエネルギー障壁へ向かう。


 T154号障壁に思いっきりパンチ。壁に衝撃が走った。


 衝撃を受けるピンク。エネルギー障壁にヒビが入る。

「クッ! まだ、守る、守り抜きますわ! そう誓ったばかりなのですもの!」


 障壁にダメージを受けると障壁を維持するピンクのエネルギー消耗が更に激しくなる。防御技ウォールが破られるのは時間の問題だった。

「プロペラ大手裏剣!」


 エヴォグリーンの大型手裏剣がT154号を襲う。大ダメージ。更にイエローの小型ミサイル。全身ボロボロ、血まみれになるT154号、それでも障壁にパンチし続ける。

「チクショウ! あんとき、経理戦闘員さんに告白しとけば良かった」


 今更遅い。T154号は立っているだけでも不思議なくらいダメージを受けている。T154号は後ろを振り返る。俺と目が合った。

「逃げろ!」


 俺の叫びは、もう届かない。

「なぁー経理戦闘員さんに、俺はカッコ良かったって言っといてくれよ」

「バカ野郎! 自分で言え!」


 自爆スイッチ、T154号が大爆発。

「キャ!」


 大爆発の衝撃によってエネルギー障壁が破られた。反動でエヴォピンクが吹き飛ぶ。

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