第28話 爆弾魔人(Ⅰ)

■■Evolution:06「Explosion!! 非情冷酷、爆弾魔人」(Aパート)■■


 第六の混沌作戦カオスミッションが開始される。

「そちが爆弾魔人……か?」

「イエス、元帥閣下」


 爆弾魔人は今までの混沌魔人とは異なりリアル寄りのデザイン。一見ヒーローのようにも見える。だが、爆弾(球形ダイナマイト)の紋様が全身に施され、魔幇の紋章入りベルト、今までの混沌魔人とは違い、魔幇ウエスト支部で開発されたとの情報。


「今までの戦闘データ。ミーがチェックさせてイタッダキーマシタァ」

 独特のイントネーション。ウエスト支部製だから? それにしたも……


「ですガァ~このままでは永遠にエヴォレンジャーにショウリする事はフカノーデース」


 爆弾魔人、態度に傲慢さが滲み出ている。場の雰囲気が氷つく。

「ふむ、何故そう思うのかな?」


 ガイマーモン様は玉座に座り、冷たい視線で爆弾魔人を見つめている。

「クレバーさがタリマセーン、温いミッションばかりなのデース」


 爆弾魔人が言う通り。確かに俺達の作戦はちょっと……かなり残念な作戦ばかり。

「そこでミー、爆弾魔人にとてもナイスなミッションがアリマース」


 爆弾魔人が提案した作戦はとてもシンプル&残酷だった。

「エヴォレンジャーは五人揃って最大のパワーを発揮する戦隊フォースデース」


「ふむ、確かに」

「故に一人でも欠ければ、必殺技も巨大ロボ合体も出来ず敗北は必至。我がマフーの大ショウリデース」


「だが奴等は強い、そして、常に五人揃ってチームで戦う、故に戦隊」

「そこでこの「特殊爆弾」の出番デース」


 爆弾魔人は約20キロ、大きめのスイカほどの大きさの爆弾を超空間転送で召喚した。

「コノ特殊爆弾の威力はチョォー絶大。至近距離で爆発させれば、エヴォレンジャー

とてひとたまりもアリマセーン」


「だが、こんな大きくて重い爆弾をどうやって使用するのかな? 察知されすぐ防御されてしまうぞ」


 ガイマーモン様が質問を重ねる。

問題なしノープロブレム、我が優秀なるマフー戦闘員が特攻、そのまま自爆させれば良いだけなのデース」


 自爆戦闘員。俺達戦闘員に爆弾を担がせ戦闘員ごと自爆、エヴォレンジャーを抹殺しようとする作戦だった。


 イバラニア様が慌てて止めようとする。

「絶対ダメです! ダメダメ! 戦闘員さんを犠牲にするこの作戦ミッションは絶対、絶対認められません!」

「ぬぬぬ、確かに。極限まで鍛え上げし我が筋肉道に反する所行、賛成しかねる」


 イバラニア様とゲキメッツ様は反対の意思を示す。俺達は四天王が混沌作戦カオスミッションに反対するのを初めて見た。

「…………」


 ユージェニクス様は沈黙。この作戦の有効性を頭では理解しているらしい……

「デハ、畏れながらエヴォレンジャーを確実に抹殺する作戦ミッション、大幹部サマには腹案がございますでショーか?」


「……ふぇ? わたくし、がですか?」

「……ぬぬぬ」


 ここでイバラニア様もゲキメッツ様も沈黙。混沌作戦カオスミッションは魔幇四天王ですらあらかじめ与えられた指令を実行するだけである、作戦を立案することは無い。故に急に作戦を立てろと言われ、困惑してしまったのだ。


 ガイマーモン様は一言も発することなく状況を見守っている。

「フッ、では」


 爆弾魔人は俺達戦闘員に向かい手榴弾を次々と投げた。その数約二十個。

「キキ!」

「キキイ!」

「キキキキイ」


 慌てて手榴弾をキャッチする戦闘員達。嫌な予感。俺は足下に転がった手榴弾を見つめる。次の瞬間爆発するかも知れない……でも。

「じゃあ、俺が貰っておこうか」


 オヤッさんが手榴弾を拾った。嫌な予感しかしない。

「オヤッさん」


 全員手榴弾を手にすると爆弾魔人が。

「ヨロシイ。では手榴弾を受け取った戦闘員諸君、前へ」

「キキ」

「キキイ」


 二十名の戦闘員達が手榴弾を手に前へ進み出た。俺達のチーム「A106号」「T154号」そして「T117号」の手にはクジ代わりの手榴弾が握られていた。

「おめでとう諸君、君達は特攻作戦に選ばれし戦士デース」


 俺の隣、戦闘員っ子ちゃんも呆然としている。

「ききい」

「キキイ」

「キキイ」

「ダメです、そんな酷いこと許されません」


 イバラニア様必死の叫び、本当にいい人だ。

「おや、イバラニア様魔幇戦闘員の献身を無駄にするおつもりデスカァ?」

「でもでもでも……」


 イバラニア様は困惑の表情。

「デハ諸君、この名誉ある混沌作戦カオスミッションに参加を拒む者はいるかね」

「……キイ」

「……キキイ」


 拒否する戦闘員は誰もいなかった。当たり前だ。俺達は「命令」を拒否する事は不可能なのだ。俺達は意思を持たない戦闘員であり魔幇の戦闘兵器、武器や乗り物と同じ、部品パーツでしかないのだ。そのはずなのだ。


「どうです、イバラニア様。戦闘員の意思は確認できました。マァー、本来は確認するまでも無いのですがネェー」

「そんなぁ」


 自らの意思と言われれば、イバラニア様も沈黙するしか無いのだ。泣きそうな表情になっていた。「携帯ゲーム機」の預言は今現実になろうとしていた。



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