第17話 核ミサイル

◇Evolution:04-05 Intermission「核ミサイル」◇


 此処が何処か? 巨大な倉庫? 瓦礫の山? 古代から続く、人類文明のありとあらゆる文物が整然と、雑然と、ゴミ山のように堆く積まれている。


 島1号(アイランド1)の秘密地下施設。新人類世界ニューエイジワールドで生産されるありとあらゆる物資がこの場所に保管ストックされていた。


 巨大倉庫の片隅二人のシルエット。人物は特定出来ない。ヒソヒソ話。

「困りますねぇ~。危うく島1号(アイランド1)を放棄しなければならなくなったじゃないですか。聖典シナリオ」を破綻させるおつもりですか」


「ぬぬぬ、面目しだいもない」

「発掘した旧人類時代アンダーエイジのミサイル兵器が「核ミサイル」だったなんて、聞いてませんよ」


「うむ、旧人類時代の兵器類が数多く出土したのでな、カッコ良く使えそうな……」

「そういうリアリティー追求って無駄に資源を浪費するから止めて欲しいのですけど」


 シルエットの後方、星条旗や五星紅旗のマークのついた厳ついミサイルが並んでいた。


「もういいです。今回は互いに協力し、偽物とすり替えることが出来たので良しとしましょう。こちら側、戦隊サイドの工作もなんとか時間稼げましたし。ですが魔幇サイドの管理もしっかりして欲しいものですね」


「ぬぬ、わかっておるわ」

「ならば、新人類世界の為。我等が絶対なる「聖典シナリオ」を最終話まで完結させる為。最高指導部ノーメンクラトゥーラの計画を着実に遂行していきましょう」


「全ては聖典の導きのままに……」

 シルエットは再び闇の中へ消えていった


 ******


 巨大な洞窟、魔幇本部内の巨大な地下神殿。秘密の洞窟を抜け数多くの戦闘員達が続々と集結している。


 戦闘員のバイザーが赤く輝く、数千、数万人規模の戦闘員達が洞窟内を埋め尽くす。



 そんな戦闘員達の中に俺がいた。今回の作戦ミッションでも無事生き残ることが出来た。まぁ自分でも結構しぶといとは思ってはいる。

「キキイ」

「キキキキ」


 旧人類時代のミサイル、奴等エヴォレンジャーの必殺技。更に混沌魔神の爆散。俺の通っていた高校を中心にスラム街は地表から完全に消滅していた。呆然と立ちつくしているスラム街の住人達。それにしても全員無事、よく生き残ったものだ。


 集結した戦闘員達は洞窟、崖の上、四つの頂点に君臨する魔幇四天王を見上げた。

『大元帥 ガイマーモン』

『冥界博士 ユージェニクス』

『妖魔神官 イバラニア(ジャージ姿)』

『戦狂隊長 ゲキメッツ』


 そして更に高い山の頂。中心部。神殿中央部には悪の秘密結社『M・I・C 魔幇(マフー)』の首領『総帥(CEO)』の椅子、背後には混沌魔神を生みだす不気味な一つ目のレリーフ。洞窟内はまるでライブ会場のような興奮状態になっていた。


 戦闘員の一部はカメラマンや音声として任務を遂行している。

「キキイ!」

「キキイ!」


 悪の秘密結社、士気やるきだけは無駄に高い。

「キキイ!」


 俺達は全員、魔幇式敬礼で忠誠を示す。熱狂が神殿内を支配していた。

「キキイ!」

「キキイ!」


 そんなライブ会場の中、俺はふと我に帰った。俺は何故命懸けでエヴォピンクを助けてしまったのだろう。故障しているのか? それとも……だが凄く気分が良い。高揚している。そんな俺のケツを誰かが蹴った。「キイーーッ!」。

「T154号!」

「よう! やっぱり生きていたか」

「まぁな」


 グーパンチで挨拶を交わす。

「言ったろ、コイツは必ず生きてるって」


 オヤッさんが俺の肩を何度も叩いた。

「フン、R079号君も存外しぶとい男ですね」


 T117号の嫌みも今日は聞き流せてしまう。俺は仲間チーム「A106号・T117号・T154号」と合流した。

「ききい♡」

「ん、この娘は」

「じぶん新人戦闘員のA109号です。先輩、ヨロシクお願いします」


 愛らしい女子戦闘員『A109号』ちゃん。魔幇式敬礼。俺も魔幇式敬礼で挨拶を返す。俺達のチームに初めて配属された新人女子戦闘員。


 新人戦闘員A109号、愛称『戦闘員っ子ちゃん』。小柄、小学校高学年から中学生くらい、未発達だけどスタイルは悪くない。間違い無く可愛い、確信出来る。


 そして俺は「先輩」の一言に一瞬でノックアウトされていた。

「まだ、製造されたばかりで色々解らない事だらけですけど……ご指導、宜しくお願いするのであります」


 戦闘員っ子ちゃんはペコリと頭を下げた。可愛い。

「ああ、ああ任せておけ」


 そうだ、まだ混沌作戦カオスミッションは始まったばかりだ。激闘はまだまだ続くんだ。だが仲間がいる、へこたれてなんかいられない。ぶっ壊れるまで突っ走ってやる。


「……先輩?」

「ああ、大丈夫だ! やってやるぜ!」


 だから俺は、悪の戦闘員らしく力一杯「キイ」と叫んだ。


「オノレオノレ、神聖戦隊エヴォレンジャー! 次こそは必ず叩きのめしてやる!」


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