煤に塗れて手紙を書く
未知 推火
煤に塗れて手紙を書く
「『愛してる』って言われてから私も意識するようになって・・・」
『いつの間にか私も好きになっていました。』
このくだりが何故か頭から離れなかった。
どこで見たのか、どこで聞いたのか、それともどこかで聴いたのか。
本か?会話か?音楽か?
その記憶の源流は全く覚えていない。
大好きな人がいた。
本当に大好きな人。
学校では君の後ろ姿ばかり見ていたし、勇気のある時は横顔も。
同じ委員会だった。
放課後の教室で2人で。作業はわざとゆっくりした。
1秒でも長くここにいるための理由を作ることに必死だった。
帰り道は逆方向だった。
嘘をついて遠回りをして帰っていた。
君の隣にいたかったから。
消しゴムには君の名前を書いてみたりした。
使い切る前にどこかへ行ってしまったけど。
夢で逢えたらと、眠る直前まで思い浮かべてみたり。
告白のセリフを、考えてみたりした。
いつの間にか僕の前からいなくなった。
正直に言えば僕の方から消えたんだけど。
目を合わせる練習をした。
ふと目が合えば見てないふりをした。
心は呆れるほどに正直で
身体は驚くほどに不器用で
そんな自分が大嫌い
愛する人に「愛してる」の一言すら言えない自分が
どうしようもなく
凛とした君に問います。
「愛してる」って言葉だけで 僕を愛する理由になりますか?
「大好きだ」って言葉の方が 君なら受け止めてくれますか?
もし、その問いが届いてたのなら 答え合わせをしませんか?
もし、その問いが届いてなければ せめて教えてくれますか?
あなたはちゃんと、幸せになれていますか?
煤に塗れて手紙を書く 未知 推火 @Torime1128
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