かめのながいたび

さとの

かめのながいたび

 一匹のかめが池で考えごとをしていました。そのかめの名前はかめ吉といいました。かめ吉が何を考えていたかというとそれは「かめのすごいところ」です。


 他の動物のすごいところ、というとすぐ思いつくのですが、かめのすごいところというとなかなか見つからないのでした。でもかめ吉はどんな動物にでもすごいところはあると思っていました。なのにかめのすごいところが見つからないので考えこんでいたのでした。


 夜になってもかめ吉は考えていました。けれどもまだみつかりませんでした。 朝になっても見つかりませんでした。とうとうかめ吉は、

「このままじっとしていてもだめだ。かめのすごいところを、自分で見つけに行こう」

と決めました。そしてかめ吉はかめのすごいところさがしの旅に出ることにしました。


 かめ吉が池を出て歩いていると一匹のうさぎがやってきました。


「うさぎさん、おはよう」

「あら、おはよう。かめさん、こんなところで何してるの?」

「かめのすごいところをさがしているんだ。きみはしらない?」

「そんなのしらないわよ。わたし、いそいでいるから。じゃあね」


 うさぎはそういうと長い耳で、あたりの音をちょっときいてから走りさっていきました。その様子を見ながらかめ吉は、


「かめにあんな耳はないよな」

とつぶやきました。けれどもかめ吉はあきらめずに歩き出しました。


しばらくするとこんどは、カリカリと何かをかじる音が聞こえてきました。何だろうと思って周りを見回すと、一匹のりすが木の実をかじっていました。


「りすくん、こんにちは」

「やあ、こんにちは」


 りすはそれだけいうとまた木の実をかじりはじめました。かめ吉はそのりすに、


「ねえ、かめのすごいところってしらない?」

とたずねました。りすははやくちに、


「ぼくはきみみたいにのんびりしてるひまはないんだよ」

というと木の実をくわえてさっと木に登っていってしまいました。


 かめ吉はちょっとがっかりしてしまいました。そしてあるきだしながら、

「かめは木に登れないよな」

とつぶやきました。


 そんなふうにかめ吉は旅をしながらいろいろな動物にあいました。そしてそのたびに、かめのすごいところをききました。けれどもそのこたえを知っている動物はいませんでした。そしてかめのすごいところがわからないままに、とても長いときがたちました。


 ある日、かめ吉はまた池の近くに帰ってきました。かめ吉はとうとうかめのすごいところを見つけられませんでした。そしてあきらめてしまったのでした。かめ吉は池を出たときよりもずっと年をとっていました。そしてかめのすごいところが見つからなかったので少し元気がありませんでした。


 歩いていくうちにどんどん池が近くなってきました。けれどもかめ吉が池を出たころにいた動物たちにはぜんぜん会えませんでした。


 池につくとかめ吉の仲間のかめがみんなやってきて、でむかえてくれました。


「おかえり。元気だった?」

「うん。でもうさぎさんやりすくんや他のみんなはどこにいるの?」

「それがね、みんな死んじゃったんだ」


 そしてかめ吉は仲間のかめたちの話をきいているうちに、とうとうかめのすごいところがわかったのでした。


 日がくれて、かめ吉はねどこに入ってから考えました。


「かめのすごいところはとても長生きだということだったんだ」


 そしてかめ吉はその夜、何も気にすることなくぐっすりとねむったのでした。

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