第6話 入学初日

「はぁ...はぁ...もう、もう限界」

「手を休めるな。まだ開始30分だぞ」

 死にそうだ俺。なんでかって?ついこの前まで高校生だった俺はレグルの地獄の剣の稽古に付き合わされているからだ。


「こんな様子だと、どんな敵にも太刀打ち出来んぞ」

「か、勘弁してくれよ。最後に剣握ったのなんて子供の頃に買ってくれたおもちゃだぞ」

 俺は言い訳を重ね続けたが悪いと思っちゃいない。中高帰宅部だった俺にこんなキツイ修行なら嫌でも愚痴が零れる。


「この程度の稽古に着いて来れぬならお前は屋敷に滞在している暇はないな」

「そんな〜」

 俺が稽古に辟易してる中リリスが俺たちの様子を見に来てくれた。


「頑張ってる〜?ホムラー」

「リ、リリス...助けてくれ」

「時には頑張るしかないこともあるから!」

 意外と鬼なのか?リリスって。そういや

「その服...魔法学校の制服?」

「そう!似合ってるでしょ?」


 初めて見たが普段のお嬢様のような雰囲気から一変して、急に親近感が湧くような感じだ。うちの学校に似てるからかもな。レグルは俺を剣の稽古に無理やりでも付き合わす気なら...


「お、俺も魔法学校に転入でもしてみたいな〜、なんて」

「え!ホムラが!?うれしい!絶対案内するね!」

 すると、レグルが何を血迷った?みたいな顔で俺を見てくる。

「お前、自分で何を言っているのか分かっているのか?」


 レグルの言いたいことは分かる。魔法が使えない俺に剣を鍛えることが大切なのは重々承知だ。だが、知識をつけるのも大切だろ?俺は稽古をしたくないがために学校を通うことを選んだ。まあ、学校がどんな感じなのか気になってた事もあるけど。


 そんなこんなでラグラン家の力のおかげか俺はすぐに魔法学校の転入を許された。レグルの父親から許可を貰うのに苦労はしたが、娘に嫌われることを恐れたか有難いことに転入することが許された。


 俺の前にそびえ立つ巨大な学校【アストラ魔法学園】。創設3000年を誇るこの国の名門校のひとつらしい。非魔法使い、それも異邦人の入学は前代未聞の出来事らしいので、俺も嬉しい気持ちはあったが不安は8割くらいある。


 それでもレグルやリリス、アリスの様な人間とだけ仲良くしていけば俺もなんとかやっていけるだろう。

「今日からこの学校に転向することになったホムラ・ヒノだ。異世界からやってきたらしい。魔法を扱えないとのことだが、みんな気にせず仲良くやってくれ。」


「き、今日からこの学校に転入してきたホムラです!よ、よろしくお願いします!」

 教室にはまばらな拍手が響いた。誰がしてくれているのか、一目で分かる程度には少なかった。

「魔法が使えないなんて...プッ」

「何しにしたんだよ非魔法使いがここに」

「やめてくれよ。穢れが伝染る」


 教室はあまりいい反応はない。この国では覚悟をしてたし、もう慣れたかもしれない。喜んだ方がいいのか、悲しんだ方がいいのか...


「みんなやめてよー!ホムラは私の大切な友達なんだよ!虐めたりしたら許さないからね」

 すると、女神(リリス)が俺に助け舟を出してくれた。

「「「「すみませんでした!」」」」


 すると、突然教室から大勢(主に男子)からの謝罪の声が鳴り響いた。何事だ?とは思ったがレグルの「リリスに立ち向かえる同級生はいない」という言葉を思い出した。なるほど、リリスが俺の入学をすんなり受け入れてくれたのはこんな理由があった訳だ。


「リ、リリスの何者なんだアイツ!」

「まさか か、彼氏なんかじゃないよな?」

「冗談でもそれはやめてくれ、それならこの学校に入学した意味が無いだろ」

 ん?俺は思ったのとは違う回答が出てきたことに驚いた。てっきり対抗できる手段が無いため仕方なく謝ったのかと勝手に予想してたが...


「リリスの言う通りだ。俺はお前たちを非魔法使いを差別する人間に育てた覚えはないぞ?」

 担任のその言葉に教室ではしばらく沈黙が続いた。


「よ、よろしく!俺はジャッジ」

「よ、よろしく」

「お、俺は✧────── 」

 その後しばらくは互いの自己紹介が続いた。俺もまさかこんなすぐにクラスの連中と打ち解けるとは思ってなかったので、久しぶりの大人数との会話に何処か懐かしさを感じた。


 だが、ただ1人俺に自己紹介をして来なかった男がいた。

「ふんッ!みんなして馬鹿馬鹿しいな。その男は魔法が扱えないんだぞ?気でも狂ったか」


「おいメザル!リリスの言ってたこと忘れたのか?」

「あの女の言うことなんかどうでもいい。力こそ全てのこの国でお前らはここに何を学びに来た?俺は己を高めることだけにこの学校に来た。くだらないままごとは他所でやれ」


「ちょっと、メザル。私のことは置いといてホムラを貶すのはやめてって言ったよね?」

「お前こそ上級魔法使いだからって図に乗るなよ?お前は単に魔力が桁違いなだけで俺に敵わない」


 その言葉に嘘は無いのか、見栄を張ってる様には見えなかった。

「あっそ。別にメザルがホムラの事を気に食わないならそれまで。あんな意地悪気にしないでいいよホムラ」


「なあホムラ?今度決闘しないか?非魔法使vs魔法使いの戦いだ。結果は赤ん坊でも分かる。そこでだ、俺は魔力を使わないでやるよ」

「もういいよ、あんなやつの言うことなんて聞かないで」

 リリスの言う通りだ。おの男に構うだけ無駄だ。だが...このまま下がるとこいつには永遠になめられる。


「ああ、いいよ。条件は?」

 まさかの回答に驚いたのかメザルは少し目を見開いたがすぐにニヤリ、と顔の表情が変わった。

「挑戦者のお前に決めさせてやるよ。」

「...じゃあ、剣で」

「そうか、異世界ではよく剣を使うのか?まあ、そうじゃなきゃ話にならんか」


 事実、俺は剣の才はない。ただレグルという最強の先生がいる。決闘日までに完璧に仕上げてみせる。

「決闘日は2週間後でいいか?」

「いつでも待ってるさ。お前が俺に勝てると勘違いし始めたら挑んでくるといい」


「や、やめた方がいいよホムラ」

「ありがとうリリス。でも、これは俺自身のために自分を鍛えるチャンスって事にしといたんだ」

 自分でわざと追い込んだ訳だが今更引くことは出来ない。 メザルに勝てると思っているわけじゃないが、勝てば多少は色んな人に認めてくれるだろう。


 俺はこの日から魔法学校での生活、そして人生で初めての決闘のために鍛錬し始めた。

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せっかくの異世界生活はステータスが何も変わっていないので面白くありません ちょこサイダー @Peru814

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