第5話 予言の子

 魔法についてもう少し詳しく知りたかった俺は、レグルとリリスに食堂でどんなものなのかを尋ねてみた。


「魔法ってさ、どんな種類があるんだ?」

「魔法って言ってもね〜?たくさんあるんだよ」

 そう質問した俺にリリスが丁寧に説明してくれた。

「魔法は大きく6つに部類できるの。まずは生活魔法!これは魔法使いなら最初に身につけられる魔法なの」


 ああ、昨晩アリスが使ってた魔法か。

「それから初級、中級、上級、神域、特殊魔法に分けられる」

 なるほど、やはりランクみたいなのはあるのか。


「一般的な魔法使いはみんな初級止まり。て言っても魔法使いみんなが戦う訳じゃないからね」

「そうだ。上級以上は世界で見てもレアだからな。腕がある魔法使いは皆、戦い馴れしていると思った方がいい」


 そしてレグルにバトンが渡され細かく説明してくれた。それからしばらく説明を聞き⎯⎯⎯。


 俺が聞いた話はこうだ。まず上級は度々見かけるらしいが、それより上はまず見ることは無い。もっともそんな兵器じみた魔法は、国のためにしか使うことができないらしい...。考えれば核兵器を自分の意思で扱えるみたいなものだが、少し可哀想な話だ。


 それから特殊魔法。こちらはその人だけのオンリー魔法といった感じだ。使える人間が少数派なのであまり情報が少ないらしい。要は、会えたらラッキー、敵ならアンラッキーな魔法だ。


「そんでさ、聞いていいか?レグルとリリスはどれくらいの魔法使いなんだ?」

 プライドやらなんならで、聞かれたくないことも考慮したがやはり気になるな。


「俺か?上級、特殊だ」

「私は上級魔法」

 ん?へ?レグルはともかく、リリスまで上級?アリスと似た雰囲気だからてっきり生活魔法ぐらいかと思ったが...


「なあレグル?さっき戦い慣れしてるやつしか中級以上はいないみたいな話じゃなかったか?」

「ああ、一般論の話だ。俺たちのように血筋も大きく関係する。腕っぷしに自信がある人間でも、学校にしか通っていないリリスには到底手が及ばないだろう」


 ...驚いた。まさかこの2人にそんな魔力があったとは。いや、けして下に見ていたわけじゃないが(非魔法使いの俺がしたところでだが)この屋敷もただの飾りではなく、しっかり実力も伴っていたか。流石名家としか言わざるを得ない。


 ついでに、もうひとつ俺が聞いておきたかった事を質問した。

「そういえば俺がこの屋敷に滞在を許可して貰得た時さ?''予言の子''がなんたら言ってたけど、それなんなんだ?」


「...ああ。あまりこの事については触れさせたくなかったんだが...。仕方ない、異邦人であるお前には聞く資格がある」

 ごくり、と喉が鳴った。俺もまさか知らない方が良かったんじゃ...と後悔しそうになったが、ここで引くと気になって夜も眠れなさそうだ。


 ここは覚悟をしてレグルの説明を聞くことにした。

「時はおよそ8千万年前、この地では神と呼ばれる存在がこの世界を支配していた。創造神ゼルト、破壊神ヴァルキレスと呼ばれる神は幾度となく争い続けた。戦の時代だ」


 ...聞き覚えのある名前が連なってるな。

「もしかして、あの昔話みたいなやつ実話だったのか?」

「何の話だ」

「いや、あの...『神話...遺文録』みたいな本があるだろ?」

「ん〜なんだろう?私たちの学校でもそんな本扱ってる覚えがないな〜」


 レグル達でも知らないのか...。まあ何であの本が元の世界にあったのかは今考えても仕方の無いことだ。俺はレグルに納得し、続きを聞くことにした。


「どこまでこの世界の歴史について知っている?」

「確か...その後、民間人が怒り狂って神を殺した...そのあとは神同士が殺しあって全滅、みたいな感じだったよな?」

「そこまで分かるなら話は早い。人間は神を殺し、神はこの世から居なくなった。平和的に解決されたと誰しもが思っていた」


「それから、何かあったのか?」

「神がいなくなり、人間達は一時は歓喜に見舞われた。だが悲しいことにそれも長くは続かなった。神が人間達に与えた影響は何も災害だけじゃない。土壌の豊富、草木の恵み、井戸に溜まる多くの水。これらも神の存在があったからこそ恵まれたことだ」


 神に憤りを感じたから殺し、平和になったと思いきや、人々の平和を維持するためには神は必要な存在でもあったか。なんとも皮肉な話だ。


「大地や天候に恵まれない。それだけならまだ良かったが人間は貪欲な生き物だ。隣に恵まれた環境があるなら、人は殺してでも奪い取る。今こそ考えられない話だが、当時は生きるためには自分を優先するしかなかった。昨日まで仲良くしていた人でさえも、だ」


「...じゃあ、それから神がいない世界ではどんな事が?」

「毎日争いの日々だ。正に神の真似事。争いとはこの世界で切っても切れないかもな」


 俺が元いた世界とは事情が違うが、この世界とも少し似ている気がする。日本に住んでた俺は日常に戦争というのは縁が無い話だった。だが毎日どこかで戦争や紛争の日々が続いていたな。争いは人間は切っても切れない・・・か。


「そうした中、この世界を再び救おうと神を復活させこの地に安寧を齎そうとした輩が現れた。クロル神聖教徒の一派だ。彼らは''予言の子''と呼ばれる神々を復活させるキーを探し出そうとしている。」


「...その''予言の子''が俺になにか関係が?」

「お前がこの世界に呼ばれた理由は、お前自身が''予言の子''だという可能性があるという話だ。無論、確率は低いと見ているがな」


 ...まあ、ない話ではないのか。第一俺がこの世界に来させられた理由も何も判明していない。わざわざ召喚されたのには必ず理由がある。


「つまり、俺が言いたいのはお前がクロル神聖王国に召喚された確率が高く、利用されるかもしれないということだ。それも、あいつらの理想を叶えたいというだけで」

「それは...。なんというか、嫌だな」


 俺がこの世界に神を復活させるキーなのかもしれない。でも、復活させればまた神同士は争い続ける。それに破壊神なんかの方は俺たち人間を憎んでいるに違いない。...確実に今の状況を良くする考えとは思えないな。


「...まあ、この話は全ての異邦人に可能性のある事だ。深く考えずに居ておけ、気を病むだけだからな。」

 レグルの言う通りだな。頭の片隅に入れておくだけにしておこう。


 そうこうしてるうちに時計の針は7時を指していた。リリスは宿題のため自室に戻り、レグルも明日の過酷なスケジュールのため部屋に戻ろうとしていたところ⎯⎯⎯

「明日はお前も俺の稽古に付き合え」


 そうレグルから提案された。いや、いやいやいや。絶対いや。なんでただの高校生だった俺がこの男の超キツそうなスケジュールに合わせなきゃいけないんだ。


「今日お前に''予言の子''の話をして改めて考え直したが、やはりお前には剣の稽古はつけた方がいい。''予言の子''を狙ってお前の元にいつ敵が現れてもおかしくないからな」

「だ、大丈夫でしょ!だって俺が異邦人だって情報誰にも教えてないし...。」


「事があってはもう遅いぞ」

「は、はい...」

 俺は明日からレグルの剣の稽古に付き合うことにした。




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