ほうき星+飛行魔術 → 暁色の空で

アクセレアによって青空を背に空を自由に駆け回るセフィを見ていた私は、自分のマジカル☆ブラストロッド・インフェクタスや魔法について調べることを思いだし、ハッとして目でセフィを追いかけるのをやめる。

そういえば私、リサイクル以外でちゃんとこのゲームの世界の魔法を使ったことがない。

故にインフェクタスを使った戦闘についてはまだ脳内で作るイメージしかないのだ。


「うーむ、取りあえず試すか。ウィズ!インフェクタス、ロッドモード!!」


『イエス、マイマスター』


その言葉と共に、右手にリングモードとなって収納されていたインフェクタスが光り私の右手に握られるように現れる。

ロボットアニメで出てくるビーム兵器のような青と白の先端付近に填められている赤い宝玉と持ち手には自転車のブレーキのような指全部を使って引くようなレバーが付いた片手でも持っても本当に持っているのかと感じられるくらいに軽い。


「軽い……よし、取りあえず何か魔術を使ってみようかな」


軽いインフェクタスを横凪に片手で振るいつつ、最初に使う魔術について思案する。

うーん、ここは定番の炎魔術?魔術で火を出してこの平野の一部が大火事にしたら嫌だし……てか魔術ってどうやって発動するんだっけ?

そもそも、安全に試せる魔術なんてあるのか?

この体はラスボスボディだぞ?

撃つ魔術全てがラスボス攻撃になったりしないか?


「うーむ……」


『マスター、お困りですか?』


「ウィズ、インフェクタスを使った私の魔術ってここでやったら確実にここら一帯が焼け野原じゃない?」


『マスターは固有スキル『魔術適正ULTIMA』により、すべての魔術を扱うことが出来ます。魔術の威力はマスターのステータスに記載がある通り攻撃力がULTIMAのため、弱い魔術でもかなりの高威力となるでしょう。また、マスターは私……インフェクタスを装備した事により、インフェクタス専用の魔術"魔砲術"が展開、発動可能となっています』


そんなことを悩んでいると、ウィズからもたらされた言葉に思わず思考が停止した。

ラスボスボディだから、攻撃力が高いのは納得だし、ゲームの序盤で覚えるような魔術でもかなりの威力になるのはまぁ納得が出来る。

けど、アルティマってなに?アルティマって。

私がゲームをやっていた時にゲームでそんなステータス表示なんて無かったぞ!?どうなってんの?

もしかして、続編のどこかでSの上が解放されたとか?それに魔砲術ってなに?

とにかく、とにかくインフェクタスを試す前に自分のステータスを確認しよう。

じゃないと、本当に私なんかやっちゃいました?って言えないような大災害を起こすとかマジで嫌だ!

そしたら勇者から隠れていきるどころか、どこの国に行っても追われちゃうことになっちゃうし。


「今さらだけどウィズ、自分のステータスってどうやって見るの」


『魔術、ステータス鑑定により自身のステータスの確認が行えます。ステータスのスキルの内容等を詳しく知りたい場合は、表示されたステータスに少しの間触れることで詳細を確認することが出来ます。』


「わかった、それじゃあ早速ステータス鑑定!ドドドドーン!!」


目の前に中央に虫眼鏡のようなマークが描かれた魔方陣が現れ、回転すると魔方陣の上に重なるよう半透明の四角いプレートが現れた。

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【名前】ルシナ・ヴァンゲイン/ルシャーナ・ヴァングロス

【種族】人族

【性別】女性

【年齢】7

【魔法適正】炎S

      水B

      風A

      土A

      光B

      闇S

【攻撃力】EXTRA

【素早さ】C

【防御力】A

【魔 力】ULTIMA

【保有スキル】

『魔術適正ULTIMA』

『魔術想造ULTIMA』

『魔砲術EXTRA』

『傀儡耐性S』

『精神操作耐性S』

『想創魔術 -リサイクル・イマージュ』

『性別再構築魔術-オンナノコニナ~レ☆』

──────────────────────


「まってまってまって」


わたしのすてーたす、ツッコミどころがおおいよぉ……。


取りあえず、1個ずつ気になる点を確認していこう。左手を胸に当てて深呼吸しつつ、取りあえず『魔術適正ULTIMA』に指を向ける。

触れれば『魔術適正ULTIMA』の下に仮説のような文が現れる。

このプレートの言葉の説明が下に表示される構造、これはネットのウィッキ先生!?

ネットの何でも載っているで有名な辞典サイトのようなステータスプレートに少し懐かしさを覚える。

すごいやウィッキ先生、異世界にまでその雰囲気というか文章の表示方法が伝わってるなんて。


──────────────────────

『魔術適正ULTIMA』

全属性の魔術に天才的な適応を見せる。

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まぁ、魔術王の異名?二つ名?だったしこれについては納得しかない。

問題はという私の……正確にはゲームで見たことの無いステータスの評価だ。

アルティマ、アルティメットとかなら意味は究極?とか極まっているとかそん感じなのかな? 間違いなく低いものではないことは確かだ。

流石はラスボスボディと言える、のかな?

そう思いながら次の欄を確認する。


──────────────────────

『魔術想造ULTIMA』

想像は何処までも続く無限の翼!

そこに制限も、限界も存在しない!

思い描いた奇想――そのすべてが、新たな魔術を創造する!

 術者のイメージを元に、全く新しい魔術を構築し発動する究極の創造魔術。

 必要なのは、豊かな想像力と莫大な魔力のみ。

常識も理論も飛び越え、解き放たれた想像力は、現実すら凌駕する魔術となる。

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うーん、『魔術適正ULTIMA』の詳細と『想造魔術ULTIMA』との違いに風邪を引きそうな程の温度差というか説明文の文章量の違いに違和感しかない………。

一気に異世界系から特撮系の説明というか……取りあえず他のも確認しようかな。


──────────────────────

『魔砲術EXTRA』

魔力属性を司る鍵アステラプレートをインフェクタスに装填!解放すること発動出来るようになる魔術、その名も魔砲術!

アステラプレートによって、属性選択し高出力の魔砲術を発動せよ!

発動には高い適正と魔力量が要求される。

《炎魔砲術》バーンブレイズ

圧縮した高温の炎を一点に集中させ、相手に直撃した瞬間、小型火山のような爆炎を炸裂させる。

爆心地を中心に灼熱の波が広がり、周囲を焦土へと変える。

《雷魔砲術》エクレルダウン

風の摩擦によって電位を生成し、インフェクタスを通して雷雲を生み出す魔術。

瞬の溜めから敵上空へと雷撃が落ち、対象を直撃とともに痙攣・気絶・行動不能へと追い込む。

《氷魔砲術》アブソリュート・ゼロ

超低温の水流を射出し、水が触れた所から瞬時に凍結を引き起こすことで、敵や地形を完全に氷漬けにする魔砲術。

《土魔砲術》グラビティ・クレスト

大地に向かって広範囲の魔法陣を撃ち出し、着弾と同時に魔方陣が地表に展開される。

展開された魔法陣の範囲内に重力場が発生し、一時的に重力が増幅。

その場にいる敵を地面へ叩きつけ拘束する効果を持つ。


※注意※

アステラプレートは正しいスロットに差し込もう!

土のつもりで雷の鍵を入れると、インフェクタスが暴発して術者ごと宙を舞う光景が見られます。

──────────────────────


「な、なんかインフェクタスにも特撮要素が……」


『マスター、私にあるそのとくさつ?要素とは一体』


「まぁ、気にしなくて良いと思う。まぁ、セフィのアクセレアみたいな感じの変形したりする武器のことかな」


そういいながら今度はバク転したり側転したりと様々な方法で空を駆け回るセフィを眺めつつ、説明文にあった気になることについて考える。

属性鍵アステラプレート、なんかインフェクタスに私の知らない要素があるんですけど?

そもそも最初にステータスを読んだのってインフェクタスだけだったし、気付けないのは仕方ないのかな?

てかステータスの解説文には落差が凄いんですけど……てか、スロットて何?そんなのあったっけ?

そう思いながら右手に握るインフェクタスを見れば、レバーのような物の上になにかを差し込むような場所が見えた。


「こ、ここかぁ……でも属性鍵アステラプレートなんて持ってないんだけど……ウィズ、何か分かる?」


『マジカル☆バッグ天使の翼の中を検索、捜索しましたが属性鍵アステラプレートと思われる物は見付かりません。恐らくですが私やアクセレア、天使の翼同様にマスターのリサイクルにより生成しなければならない可能性があります。鍵のアイテムや備品、そして生成するに辺り必要な素材の検討がつきませんし、それらと繋がるような可能性のある名称のアイテムも未所持です』


「だよねぇ……」


せめて一つでも作れたらどんなのか試せるんだけどね、いや試すわけにはいかない。

説明文からして全部が使ったらここら辺の地形が変わりそうなのばっかだったし。

てか最後の文、スッゴク怖いんだけど?なに、アステラプレートを差し間違えたら爆発して使用者が宙を舞いますって、は?

普通に事故というか死にかけるんだが???


「はぁ、商会にいったときにそれっぽい鍵とか素材とか適当に見繕ってリサイクル試してみるしかないかぁ」


取りあえず魔砲術はよっぽどのことがない限りは発動させない、どうにか普通の魔術で頑張ろう。

でも、勇者から逃げるなら切り札としては持っていた方が良いだろう。商会にそれっぽいのがあれば良いんだけど。


「おっとと、まだ見てる途中だった。次のスキルはっと」


──────────────────────

『精神操作耐性S』

精神支配・幻術・精神干渉といった外部からの精神干渉に対し、極めて高い精神力を持つ。


『傀儡耐性S』

操作・洗脳・人形化など、肉体や意志を操ろうとする外的干渉を強く拒絶する耐性を持つ。

──────────────────────


「怖っ!?なに、この見るからに何かあって手にしたようなヤバい耐性は……私にそんな経験ないぞ……まぁ洗脳とかされないことに安堵すればよいのかな、スッゴク、ルシャーナの過去が気になるけど」


なんでこんなヤバい耐性スキルあるんだよ私?こんなステータス、ゲームでも見たこと無かったぞ?何があってこんな耐性を得たんだルシャーナ、絶対に続編で明かされてるだろこれ。

もしくは、実は私に用意された転生特典的なあれかな!?スッゴク気になるけど、考えるときりがないし……。


「切り替えよう、次だ次!」


──────────────────────

『想創魔術 -リサイクル・イマージュ』

壊れた物も、捨てられた物も、失われた存在さえも術者の脳裏に浮かぶイメージひとつで、まったく別の「創造物」へと再構築される!

術者の莫大な魔力と想像力、記憶・連想等の精神的情報を魔術に利用し、対象の物質・構造・用途を変換・進化・融合させる魔術。

素材・大きさ・本来の用途に縛られず、“術者がそうイメージしたから”という一点によって物が変わる、極めて異質な魔術。


『性別再構築魔術-オンナノコニナ~レ☆』

術者の性別を変換させる魔術。

術者の持つ魔力の全てを使い発動が可能。

※変化後は元に戻れません。

──────────────────────


リサイクルの魔術、ちゃんとした名前があったんだ。てか女の子になったときの魔術まで……一度使えばスキルに出るのかな。

とにかく、これで私のステータスについては確認できた。

すごく考えるのが怖い耐性スキルもあったけど、その分、魔砲術というインフェクタスを使う専用魔術があることも分かったし。

取りあえず通常の魔法だけども試してみるか魔法だけでも試さないと、今のところ使ってるのってリサイクル・イマージュばっかりだし。


「取りあえず、使って特に問題なさそうな奴は……ウィズ、何か無い?」


『一番攻撃力の低い魔術を検索、初級魔術。水属性魔術アクアボルトと風属性魔術ウィンド・パルスが該当します。』


「やっぱりそうなるかぁ」


ゲームの世界において魔術は初級、中級、上級がありゲームでは主人公は全ての魔術を扱えた。

まぁ、私はやり込んでた訳じゃなく始めての初見プレイをしてクリアしただけだから、どんな魔術があったのかは知らない。

とにかく威力の高い魔術を使って敵をバンバン倒してたし、バフとか強化とか全然見てなかったんだよねぇ。


さて、やってみますかー。


そういいながらインフェクタスの先を誰もいない方を向けて、杖を握りしめ唱える。

最初に発動させる魔術はアクアボルト、これに関してはゲームの解説では、小さな水の弾丸を連射する初歩の攻撃魔術と描かれていた。


「アクアボルト、でいいんだよね?」


するとインフェクタス先端近くにある赤い宝玉が淡く光ると、青と白の先端に小さな卓球のボール程の大きさの水の玉が空中に複数現れると杖の向けられた先の方へと発射された。

弾丸のように何発か放たれ、すごい速さで平原の彼方に消えていく。

流石はアクアボルト、名前の通りに弾丸のように水を発射される技だ、しっかり銃と同じくらいの速さで放たれてる。

威力がどれ程かはゲームでしか知らないけど、実際にこの世界で当てないと分からない、初級だし?そこまで当たっても強いダメージにはならないでしょ。


「うむうむ、これが魔術かぁ……なんか、この体になった時とかアクセレアとか作ったときみたいに魔力がドバーッて減る感じがしない。流石は魔力ULTIMAってことなのかなぁ」


そう思いながら次の魔術を発生させるため、インフェクタスを取りあえず目の前に向ける。

次に試すのは風属性魔術ウィンド・パルスだ、確かゲームの解説では相手に突風を発生させてダメージを与えるだけだったけど、それが現実になったらどれ程なのか。


「さて、ウィンド・パルス!」


するとインフェクタスから突風が吹く、普段吹く風のようなヒューヒューやビューではない、効果音で伝えるならばバビューやボーと嵐が起こっているときのようなゴォーッて感じの風が吹いた。


「おお、こんな感じなのね……」


そう思いながら先ほど吹いた突風で舞い上がり服にかかった砂を払って落として一息つく、取りあえず魔術は問題なく発動できた。


「これで魔術は問題なく発動できるし、旅に関しては問題無さそうだね」


そう思いながら私はインフェクタスをリングモードに変更し、空を見る。そこでは相変わらず楽しそうに空を駆けているセフィの姿が見えた。

楽しいのは良いんだけど、今の今まで走ってたのセフィ?てかまだ走ってるの?セフィの体力はどうなってんの一体……。


「セフィー!そろそろ帰るよー!」


手をメガホンのように口許に当てて叫ぶが、聞こえていないのかセフィは空を走り続けたままだ。

うーん困った、流石にあそこまで高い場所に行かれたら私の声じゃ届かない。


「うーんどうすらばいいかな。声を届かせる魔法なんて無いだろうし」


『あります』


「いや、ゲームで無かったし声を届かせる魔法は無いものとして考えて」


『だからあります』


「そっかぁ!私もあそこまで飛べばいいんだよ!せっかくだし私も空を飛ぶとしますか!」


『私の話を聞いてください、マスター』


せっかくだし私も空を飛びたい(本音)、魔法少女みたいな杖に服だし、やっぱり空ぐらい飛べなきゃね!

でも、ただ飛べればそれでいいのだろうか?

空を飛ぶ、というだけで方法は無限に存在する。

魔法少女の飛び方には、実に様々な“型”があるのだ。

 まず、普通に宙に浮くご都合主義型だ。

これはもう説明不要の王道。

理屈?原理?そんなものは知らない。

気付いたら宙に浮いていて、なぜか落ちない。

魔方陣も、推進力も、風の流れすら無視して、

「飛べるから飛んでいる」という最強のご都合主義の物語が始まった瞬間から空を飛んでいるタイプ。

例えるなら、毎週朝に決まった時間に世界を救っていそうな魔法戦士達だ。

 次に浮かぶのは、魔力足場生成型。

空中に魔力の「踏める何か」を生成し、それを蹴って踏みしめながら移動する方式。

目の前で空を駆けるセフィの動きも、この系統に近い。常識に縛られた人間ほど、無意識に“落ちる未来”を描いてしまうため、想像力が試される型だ。

例えるなら、願いと引き換えに空を踏み抜いた少女だろう。

 次にマスコットや杖補助型。

これは杖やマスコットや相棒、杖を媒体を通じて飛行能力を得る型で、力の供給も操作補助も全部お任せで横に小さい何かがいて、だいたい指示かツッコミが飛んでくる。

例えるなら、封印を解きながら空を散歩していそうな魔法少女の飛行型だ。

 そして杖付与推進、跨乗直進型だ。

これは杖に風の飛行魔術を付与し、それに跨って直進する形で空を飛ぶ型だ。

安定性は高いが、周囲……性格には飛んでいる時の下からの視線に少し困るタイプのあれだ。

例えるなら、夜空を自由に飛ぶ魔女の基本フォームだろう。


「うーむ、全てにおいて真似るのも後輩魔法少女の宿命……だが真似ない新しい概念を産み出し私という個性を生み出すのも……取りあえず、色々と試してみよ。いくよーウィズ」


『はぁ、話を聞かないマスターです。残念なお知らせですが、風魔術に該当する空を飛行するものはありません』


「はーつっかえ……空中戦とか最高なのに。あれ、続編のパッケージで飛んでるっぽいの映ってたような。」


まぁ最初の無印しか遊んでないから分からないんだけどね!!


あー!遊びたかったーー!!私だって続編遊びたかった!!友達の遊んでた魔法銃的な武器も、面白いイベントをやりたかったなァ!!


神様がいるなら何で全部遊んでからこうして異世転生……いや、転移?憑依?させてくれなかったのだろうか。

そこら辺について問い詰めたい、具体的に二時間くらい。それはさておき、今はまず空を飛ぶことについての事だ。


「よし、無いなら作る!空を飛ぶ魔術を!」


魔術想造ULTIMAの力を見せるときが来たぜ!!

そうだな、杖に空を飛ぶための魔術を付与してそれで飛ぶ感じ……条件は杖を持つ、触れている時空を飛ぶことができるとかかな。


「よし決めた!せっかくだし私が作った魔術とこの世界の魔術が分かりやすいように、新しい属性を着けようかな……」


魔法少女、魔法、魔術……魔女。

魔女といえばやっぱり箒で空を飛ぶ定番のあれだよねぇ、夜空を飛ぶのが楽しそうでいまからでも飛ぶのが楽しみ!

夜空……夜空といえば星、ほうき星……そうだ!


「名付けて!星導魔術スターライトドライブ!!」


そう言った瞬間、私の体の何か……恐らくは魔力が先程まで使っていたウィンド・パルスやアクアボルトよりもごっそりと魔力が減ったのを感じた。

恐らくは魔術想造ULTIMAが発動した筈なんだけど。


「出来たかな?」


『イエス、ステータスに新規魔術の発現を確認。星導魔術スターライトドライブ、私の本体への付与型飛行魔術であり、接触解除と同時に飛行不能となる。マスター……なんというか、本当に何でもありですね。』


「ふふん!常識に囚われない!それが私の自由な魔術なの!自由な魔術少女で目指せ!最強の魔術少女ナンバーワン!なのだ!!」


『魔法少女が何なのか全く分かりませんが、そうですか。ところで、落下対策は?』


「考えてない!」


『それを先に考えるべきかと』


「あとでねー!まずは飛行テストから、見ててよウィズ。魔術少女マジカル☆ルシナの初飛行だよ!」


『マスター、ルシナたんさま、まずは落下対策の方を……』


「まずは杖に股がる杖付与推進、跨乗直進型で」


『はぁ、煽りにすら反応せず空を飛ぶ事に夢中とは困ったマスターですね』


ウィズが何か言ってるが気にせず、持っていたインフェクタスを跨ぐ。


「さてさて、まずは低空飛行で……いくよ、スターライトドライブ!」


インフェクタスの柄に星屑のような光が走り、私の身体がふわりと浮いた。地面がゆっくりと遠ざかる。

高度はせいぜい一メートルほど、丁度背が高い友人くらいの身長かな?


「おおっ……! 飛んでる、飛んでる!」


私は自分が宙へと浮き上がり、飛んでいることに思わず満面の笑みを浮かべながらインフェクタスに跨がった。


――数秒後。


「………………」


『……マスター、どうかなさいましたか?』


「………………ウィズ、降ろして」


『了解しました』


宙に浮かんでいた両足が地面についてすぐに私はインフェクタスから降りる。


『マスター、どうかしましたか?』


少しだけ痛むそこを両手で押さえる。


「これ、思ったよりその……股が……痛い……」


絶対にいまの自分は顔を真っ赤にして言っているだろうとそんなことを思いながら、両手で痛むそこ……股を押さえながらそう言った。

魔女スタイルってこんなにキツいの!?こんなの想定外だよ、アニメだと大丈夫じゃん!あの人たちは痛くないの!?


『でしょうね、想定通りです』


「想定してたの!?」


『インフェクタスは戦闘用魔術杖です。人が跨る前提で設計されておりません』


「でも、でもテレビの魔女はみんなこうやって飛んでるじゃん……!」


『申し訳まありませんがマスター、貴方の言うように飛行魔術は存在しないためマスターの頭の中の魔女が箒や杖に乗って飛ぶ妄想は理解できません。』


「……じゃあ、こうすればいいんじゃ」


私はインフェクタスを横向きにし、ベンチに腰掛けるようにそっと座った。

股がらず、お尻で支える形だ。


「……お!これなら痛くないよ!」


『姿勢安定率、向上』


「やった、文明の勝利だね!よーし!この調子で!」


そのまま前に進もうとインフェクタスへ魔力を流す。


「…………」


………進まない。

いや、正確には進んではいる。

だが、散歩より少し速い早歩きの程度だ。


「……あれ、遅くない?」


『マスター、速度は落ちましたが。空を飛んでいます』


「こんなの魔女じゃなくて、某青狸の秘密道具だよ……じゃあ出力を上げれば!!」


魔力を多めに流し込む、インフェクタスが前に傾き、私は反射的にもう片方の手も杖を掴んだ。


「え?わっ、ちょっ――!」


身体が前に引っ張られ、座り姿勢が崩れる。


『姿勢不安定。落下リスク上昇ですね』


「はい中断!終了終了!次いくよ!!」


そうして又もや大地に戻ってきた私は、両手から離れて目の前に浮かんでいるインフェクタスを見つめる。

これまでを考えるなら、私は恐らくは魔女のように箒で空を飛ぶのを真似て杖で飛ぶのは出来ない、いややりたくない。

何処がとかは言いたくないけど、擦れて痛いし……。


でも、その場合どうなるんだろう。


ウィズ曰く、星導魔術スターライトドライブは杖を持つことで機能する飛行魔術。

杖をつかんで飛ぶならば、他か方法は……


「そっか……」


『何か分かりましたか?』


「うん」


私は目の前に浮かんでいたインフェクタスを掴み、ぎゅっと握りしめる。


「跨ると速いけど痛い。座ると快適だけど遅い」


『はい』


「だったらさ」


私はインフェクタスを手に持ったまま、軽く宙に浮かぶ。インフェクタスに乗らず、右手で掴んで横に並ぶようにして。


「“掴んだまま飛べば”いいんだよ」


『……』


「ご都合主義と実用性の、いいとこ取り!これぞ想像力の勝利だよ!!」


『理屈としては破綻していますが、マスターの魔術なら成立する可能性はあります』


「いくよ、スターライトドライブ!」


私はインフェクタスを両手でしっかりと握り、

その先端を前に向け星導魔術スターライトドライブを唱えて魔力を杖に流す。

身体を座って預けるのではなく、引っ張られる力を“抑え込む”ように。


推進は杖、制御は腕で姿勢は前傾。


体に感じる風の風圧、まるで巨大な推力を持つ兵器に必死にしがみついているような感覚。

テレビで見た魔女のような優雅さはない、でも確かに速い。


「これだ、流星みたいに早く空を飛ぶ……これが、私の飛びかた!スターライトドライブ!」


手で持ったインフェクタスを空を駆けているセフィへと向け飛ぶ、少しすればセフィが駆けている空と同じくらいの高さへと至っていた。

足が大地についていない違和感は飛び方の実験と練習で少しは慣れたけど、やっぱり違和感がすごいや。

でもその違和感を吹き飛ばす程の楽しさがある。

何が出来るのか、何処まで出来るのか分からない。

分からないからこそ、ワクワクする。

インフェクタスを握る腕に力を込め、私は空を蹴るように前へ出る。

夕焼けに染まった空気を切り裂き、星導魔術スターライトドライブが加速する。

風が唸り、視界の端が流れていく。

空を走るセフィの背中が、少しずつ近づいてくる。


「──セフィー!!」


距離が縮まるにつれ、セフィがこちらに気付いたのか、ふと振り返った。

驚いたように目を見開き、それから小さく目を細める。


「ご主人さま?」


「やっと追いついた~!いやぁ、空は広いね!思ったより追い付くのに時間が掛かっちゃった!」


「ご主人さまも、飛んでる!?」


空を駆けながらも驚いた様子のセフィ、驚きながらも走るのを止めないなんて器用だなぁと思いながら、セフィの隣を並走するように飛ぶ勢いを少し緩める。


「ふふふ、全く下におりてこないんだもん。迎えに来ちゃった、セフィは飛ぶのがそんなに楽しかったの?」


「うん、空を飛ぶの楽しい!」


「私もいま、最高に楽しいよ!」


そう言いながらセフィの浮かべた笑顔につられて、私も笑顔になる。

二人分の影が、雲の上を並んで滑っていく。

夕暮れの空は、オレンジと紫が混じり合い、まるで世界そのものが一日の終わりを祝っているみたいだ。


「ねぇセフィ、これから……きっともっと楽しくなるよ」


「……楽しみ」


「だね、じゃあ降りて町に戻ろっか」


「うん」


このゲームの世界に転生?憑依?しての最初の1日は、こうして終わっていく。

でも、時間が運んでくる明日が凄く楽しみだ。



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チート魔術「リサイクル」で行く異世界逃亡録!~ラスボスだったけど、性別変えて逃げれば良くね?!~ クレナイハルハ @Haruha9071

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