封神回帰

怠惰

プロローグ『神の眠る廃墟』

かつて、この世界は神々に統べられていたという。


 空を裂き、大地を創り、人の魂に火を灯した存在たち。

 正に平和な世界だった。


しかし、その平和は長くは続かなかった。


 神々は争い、世界を割き、人を見捨て、そして――滅んだ。


 それが、僕らが語り継がれてきた「終界神戦(しゅうかいしんせん)」の伝承。

 信じる者も、信じない者もいる。

 

でも、信じる信じないなんて関係ない。

目の前にある現実は一つだけ。


 ――この世界は、既に壊れている。


 廃墟と化した都市、枯れ果てた森、毒に染まる大地。

 人は小さな集落で身を寄せ合い、過去の遺産にすがりながら生きている。

 魔術も技術も、もはやただの“残響”でしかない。

 かつての栄華を知る者など、一人もいない。


 そんな時代に、僕――ノア=ヴァルトは生まれた。


 小さな村の片隅で、両親と静かに、だけど幸せに暮らしていた。

 魔法を少しだけ使える母さんと、剣の腕がめちゃくちゃ強いけど寡黙な父さん。

 それから、いつも僕をからかってくる近所のお姉さん、ミーシャ。


 何気ない日々。

 でも、僕はその“普通”がずっと続くなんて、どこかで信じきれなかった。


 たまに見る夢があった。

 大地が裂け、空が泣き、人々が叫ぶ夢。

 巨大な扉の前で、誰かの声が僕を呼ぶ。


 ――ノア。


 名前を呼ぶその声は、やけに優しくて、でも、どこか悲しそうだった。


 その夢を見た数日後、僕の“日常”は音を立てて崩れ去ることになる。


 そして、僕は旅に出る。

 この壊れた世界の“鍵”を握る存在として。

 失われた神と、隠された真実を追いながら。

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封神回帰 怠惰 @taida2434

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