あたしとあの子とあの子とあの子
奈月沙耶
episode 1
「ちさー、ちさ、ちさ、ちさちさちさちさ……」
「あーもう、うざい!」
「宿題見せてー見せてください」
「う・ざ・い」
ほんと。うざいよねー、コウくんて。
合わせた机の向かいで、ちさちゃんのノートを写させてもらいながら。あたしは上目遣いで、じゃれあっている(としか見えない)ちさちゃんとコウくんを見守る。
「頼むよー、ちさ。オレの女神さま」
「わかったから! ダメとは言ってないでしょ今りこに貸してるから」
めちゃ早口になるちさちゃん。ちょーっと、声、うわずってるし。ほんのり耳があかいし。
ぷぷ。ちさちゃん、かーわーいーいー。
ほほえましい気持ちのあたしの横、がたがたと椅子を寄せてコウくんがくっついてくる。
「もうちょっとこっちにやって」
ちけーよバカ。
ちらっと窺うと、ちさちゃんはぷいっと窓の外を見ていた。
それであたしは、シャーペンを置いて椅子の向きを変え、ちさちゃんと一緒に外を眺めた。
「春だね」
ちさちゃんがぽつりと言って。
「春だねー」
ほよよんと、あたしも言う。
窓の向こう、生徒用玄関の前の桜の樹、薄紅色の花びらは音もなくはらはらと散ってゆく。
「あたしたち三年生だよ」
ちさちゃんの「三年生だよ」には、緊張とか心配とかまだ早いさびしさとか、真面目なちさちゃんらしい責任感がにじんでる。
「だねぇ」
中学に入って、ちさちゃんと仲良くなって三年目。
「あれ? りこは宿題いいのかぁ?」
あたしからちさちゃんのノートを奪ったコウくんがいまさら気をつかいだしたけど。うるさい、今ちさちゃんとまったりしてるんだから。
幼稚園からちさちゃんと一緒で、家も近所なコウくん。なんでクラスまで一緒になるかなあ?
ふたり、仲良しすぎて、つきあっちゃえばいいのに、いやもうつきあってるよね?って少なからずまわりは思ってるし。つきあえばいいのにってあたしも思ってるけど。
でもどうだろ。ちさちゃんとコウくんがつきあいだしたら、あたしって置いきぼりになるのかな。そしたら、あたしもカレシをつくって、四人で遊べば楽しいのかな。
「せんぱーい! ちさ先輩!」
よく通る声に空想をぶった切られて見下ろせば、二年のはるか(愛称ぱる)がぶんぶん手を振っている。
ぴょんぴょんと飛び跳ねそうな勢いでちさちゃんに笑顔を振りまいていたはるかは、
「ぱるー」
ひょこっとコウくんが顔を出した瞬間、すーっと真顔になった。切れ長な目のクールな美少女の真顔ってコワイ。
コウくんは睨まれているのに平気な顔でひらひら手を振っている。
才女のちさちゃんと幼なじみで、美少女な後輩と仲良しで、アピール?
うざ。
頬杖をついたあたしの目の前、ひらひらと花びらが飛んできた。
↓↓↓
episode2【友達以上恋人未満】
https://kakuyomu.jp/works/16818622172602291068/episodes/16818622172602358808
あたしとあの子とあの子とあの子 奈月沙耶 @chibi915
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