母の死ぬ夢を見続ける主人公。
そして、二十歳のときに見た夢。
母の死。そしてその翌日、堤防に近い海へ常ならぬ姿のリュウグウノツカイが現れた夢を描いた物語です。
本作では、論理的には関わらない事柄が、あたかも必然であるかのように結びつき、遠大な幻想を現出させます。
広大無辺で深淵な海。
人智の及ばない異質な何か。人が古より夢想する畏敬の場所です。
そこから来る魚。リュウグウノツカイ。
夢に見た異形のそれは、何かの象徴のように主人公の心深くに残るのでした。
日常と非日常の間にある夢への畏れの表出。
すべてが悪い夢。そう感じられる静謐な幻想譚です。
確りとした心持ちで、お読みください。
さもないと夢に囚われるかもしれませんから。