あなたの奥で、私が壊れる

まさか からだ

第1話 どこまで私で、どこからがあなたか

あなたの名前を舌に乗せるたび、

私の名がひとつずつ剥がれていく。

それでも、呼びたい。

あなたの奥底で、私が消えるその瞬間まで。


涙を拭う指先に、

あなたの痛みが染み込む。

指の神経と一緒に、

あなたと私の境界線が、ゆっくり溶けていく。


どこまで侵せば、あなたに届く?

どれほど堕ちれば、あなたの最深部に触れられる?


奥の奥に隠している、

黒く濁った「なにか」まで。

私は全部、欲しい。

光も、毒も、絶望も、恍惚も、ひとつ残らず。


それが私を壊すものでも構わない。

壊れるときにしか見えない愛が、あるから。

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あなたの奥で、私が壊れる まさか からだ @panndamann74

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