守護天使イゼル・ア・ムーナの教えは
「勝者が絶対正義」「敗者は絶対悪」
という苛烈なもの。
この教えに従えば世の中の99.9%の人間は悪になる。
果たして主人公のヴァルターは騎士の才に恵まれず「悪」と判定される。
しかし彼の本当の才能は本人も知らないうちに隠されていた……
敵役のライベンがいい。
ライベンは冒頭からヴァルターのライバル兼いじめ役として登場する。
最初は「すぐ消えるモブかな?」と思った。
いかにもそんな感じのチンピラっぽさをたたえたキャラなのだ。
その後ライベンはヴァルターに一度敗れる。
しかしライベンはそこから悪党としての度量が急速に増してくる。
ドストエフスキーの小説に出てくるだらしない酔っ払いや女たらしが、徐々にとてつもない崇高さや偉大さをたたえてくる「あの感じ」を久々に味わった。
最後のヴァルターとライベンの決戦が凄い。
まさにハルマゲドンの善と悪の決戦である。
「もう一人のヒロイン」リリスの登場シーンも破格である。
大昔吉行淳之介の小説で登場してすぐ車内でおしっこをもらすヒロインがいたが、本作のリリスのふるまいはもっと強烈だ。
強烈だが自分は好きだ。
ベルセルクやデビルマンが好きな人におすすめしたいダークファンタジーの傑作です。
ぜひご一読をおすすめします。