第38話 そして伝説へ…ギルド農協の最終決断

🧭 序の言葉:組織を問うのは、いつも“個人の覚悟”から始まる

ギルド本部で開かれた臨時評議会。

議題は一つ――


「ギルド農協制度の廃止、または地域分割による緩やかな解体」


過去の腐敗、不正、民間業者との競合、支援金制度の崩壊……

“ギルドは時代遅れ”――そう言われ続けてきた末の、最終結論。


発言を求められた風間は、静かに起立した。


「私は、“ギルドを終わらせる”べきだと思います。

でもそれは、“支援を終わらせる”という意味ではない。

“仕組み”を捨てて、“関係”を始める――そのための決断です」」


🌾 本章:農協が“組織”から“文化”になる記録

風間が提案したのは、ギルド農協の“制度的解体”と“理念の残存”だった。


ギルド本部の役割は終了し、中央管理を放棄


各地の農協支部は、“自律型協働体”として再編成


名称も“ギルド農協”から、“土の結び組(ソイルリンク・コモンズ)”へ


職員は行政官ではなく、“農の伴走者”としての活動契約制へ移行


それは、“組織の死”であり、“文化の誕生”だった。


「支援という言葉をやめよう。

これからは、“一緒に作る”という言葉に、変えていこう」


それが、風間の最後の提案だった。


💬 それぞれの決断、それぞれの未来

リュークは言った。


「……ギルドって、最初はただの“就職先”だったけど、

いまは“自分が何者でいたいか”を考える場所になった」


精霊のミエルは、パン屋の前で子どもたちに言った。


「おじさんたちは、組織を変えたんじゃないよ。

“誰かのために動く”ってことを、忘れなかっただけ」


サラマンダー族の族長は呟いた。


「火を守ることは、形ではなく、関係だ。

ギルドは、それを思い出させてくれた」


🏛 最終日――旧ギルド本部にて

風間は机の上に、ひとつの鍵を置いた。


「これはもう、閉じる場所じゃない。

“開いたままにしておく場所”なんだ」


振り返ると、そこには農家、職員、獣人、エルフ、天使、ドワーフ……

かつて支えられ、今は支える側になった者たちがいた。


「今日で、“ギルド農協”は終わります。

でも、農を守る魂は、誰かの暮らしのなかで、これからも芽吹き続けます」



そしてその夜、村の広場で最後の記録が刻まれた。


『ギルド農協――かつては組織、いまは土の中にある』

『これは一つの終わりであり、誰もが始めていい“伝説の入口”である』


🌱 収穫のひとこと(エピローグ)

組織は終わっても、想いは残る。

支援は終わっても、つながりは続く。

そして農業は――今日も、地面の上で静かに始まっている。

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【PV 999 回】『異世界ギルド農協職員に転生、転職したら、農家たちが一癖も二癖もあった件』 Algo Lighter アルゴライター @Algo_Lighter

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