第56話

「……卵焼き、ちょっと形崩れちゃったな…タコウィンナーも足が不格好……」



皿に乗せられた卵焼きとウィンナーを見つめる。



「…いや、でも味は変わらないし………」



"明日、楽しみにしてる"



「…………作り直すか」



普段なら妥協するところだが、田端くんの顔を思い出してしまえば、作り直す以外の選択肢なんてない。

不格好な卵とウィンナーは自分の弁当と朝食に回すことにして、改めて作り直した。



そうして



「で、できた…」


完成したお弁当に私は感動の声をあげる。

過去1いい出来栄えなんじゃないだろうか。

時刻はとっくに7時を過ぎていて、いつもより1時間早く起きたはずなのに、普段と大して変わらない時間となっていた。


型くずれしないように気をつけながら蓋をしてカバンに入れる。



「喜んでくれたら嬉しいな」



私は、量産された卵焼きを食べながら呟いた。

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初彼に浮気された件 @realreal

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