手紙〜君は幸せでしたか?〜

ぽんた

第1話

60年間連れ添った夫が亡くなった。

亡くなる3年間は入退院を繰り返していたけど、苦しまずに、眠る様に亡くなった。


「母さん…」


長男が私に一通の手紙を渡した。


「父さんが、自分が亡くなったら、母さんに渡してくれって。」

「そう…。ありがとう。」


長男に、1人でゆっくり読みたいから席を外して欲しい。とお願いした。



〜〜〜


浩子ちゃんへ


この手紙を書きながら、浩子ちゃんと出会ってから今までの事を思い出しています。

約3年、入退院を繰り返し、迷惑を掛けてごめんなさい。


浩子ちゃん。僕達が出会った時の事、覚えていますか?

僕が東京から兵庫に疎開してきた時、川で1人で遊ぶ浩子ちゃんを見かけ、一目惚れをした事。僕は今でも昨日の事の様に鮮明に思い出せます。


こっそりお寺を抜け出して、浩子ちゃんと遊ぶのが、僕の疎開中の唯一の楽しみでした。

その時に浩子ちゃんが食べさせてくれた蒸かし芋…。

僕の人生の中で、あれ程美味しかったものはありません。

貴重な食料を僕にわけてくれてありがとう。



戦争が終わって、僕は東京に帰りました。

東京に帰っても、浩子ちゃんを忘れる事が出来ず、16歳の頃、疎開先を再び訪れました。

疎開先で良くして頂いた恩師を頼りに、浩子ちゃんを探しました。

浩子ちゃんと再会した時、余りにも綺麗になっていて…。驚きました。

浩子ちゃんと再会して、気持ちを伝え、

涙を流しながら喜んで受け入れてくれたのが、とても嬉しかったです。

恩師から聞いたのですが、浩子ちゃんは僕以外にも結婚の申し込みがあったんですね。

それなのに僕を選んでくれて、ありがとう。


結婚して、僕は家族の為に毎日働きました。

あの時は恥ずかしくて言えなかったけど、

毎日お弁当を作ってくれてありがとう。

毎日僕の帰りを待っていてくれて、ありがとう。


結婚して2年で長男、3年で次男、6年で長女と子宝にも恵まれましたね。

我が子を抱いた時、涙が止まらなかったのを覚えています。

3人とも、立派に成長しましたね。

僕の誇りです。

子育ての負担を浩子ちゃんばかりに押し付けてごめんなさい。



そして…子供達が巣立ち、第2の人生が始まりましたね。

孫が生まれた時は、我が子とはまた違った感動がありました。

頻繁に送ってくれた孫達の写真を見て、成長を感じました。


定年を無事に迎える事ができ、夫婦で国内外色んな所に出掛けて写真を撮りましたね。

浩子ちゃんが1番印象に残っている場所はどこですか?

僕は…中々1つに絞れないのですが、沖縄かな。冬なのに暖かくて、海が綺麗で、食べ物も美味しかったなぁ。


時には辛い事、大変だった事、喧嘩した事もありましたね。

浩子ちゃん。君は幸せでしたか?

僕は最高に幸せな人生でした。

次の人生があるなら、また浩子ちゃんと出会いたいと心から思います。

今まで本当にありがとう。


伸之介


〜〜〜


手紙を読み終えた私の目は、大量の涙で溢れていた。


「伸之介さん…!!うぅ…」


私も、あなたと居られて最高に幸せでした。

いつになるか分からないけど、近いうちに私も伸之介さんの所に行くから。

その時にまた会いましょうね…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

手紙〜君は幸せでしたか?〜 ぽんた @pontaimo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説