その美少女は鋼鉄の偶像

春咲夏花

1話

 ワタシは人工知能搭載型人型ロボット。見た目は人間とそう変わらない。人間の身体的特徴を完璧に捉えた高度な外装で覆われた金属の塊だ。ワタシは人間の思考をトレースし、人間らしく振る舞えるようにプログラミングされている。

 ワタシのような個体は「レリギオスマキナ」という名称で呼ばれているらしい。個体識別のための製造番号は1416。つまり、私が1416番目に造られたことを意味する。

 人間は自分が産まれた日付を誕生日として記録し、自分が産まれたことに対する記念として祝福してもらうという社会的文化があるとデータで確認したが、当てはめるならばその番号が誕生日の日付となるのだろう。

 ではワタシの誕生日は工場で製造されたその日ということだろう。しかしデータとしては知っていても、機械のワタシに誕生したことを祝福するという概念を真に理解することはできない。

 歳を重ねるとは──生きるとはどういう感じなのだろう。


 そんなワタシにも人間でいうところの「親」と呼べるような存在がいる。研究者としてワタシの開発に携わり、プログラムを入力した高瀬悠真たかせゆうまという研究者だ。ワタシは彼から番号以外に識別される呼称として人間の名前を名付けられた。星乃玲華ほしのれいかという名前だ。

 ワタシは一般的な人間の美醜の価値観では美少女として定義されているような人間の整った顔パーツの若い女性の外装をしているらしく、それに見合った名前をつけられたのだ。ワタシが造られた……いや、人間に限りなく近い存在として産まれた理由。

 それは機械が人間らしく振る舞えるのかどうかをテストするために、社会的に注目を浴びる存在として人間社会に紛れ込ませる実験のためだった。こうした機械が人間的であるかどうか、人間の代替品となり得るかを試すテストは世界中で行われているらしい。そしてワタシはアイドルのテストをしている。

 そうだ、ワタシは鋼鉄の体を持つアイドルだ。


 ワタシがデビューした時、アイドル業界に波紋が生じて、そこから様々な議論が交わされたらしい。


「これは人類と機械が共に歩むという夢であり、アイドルの新しい可能性なんだよ!」

「アイドルという仕事は機械風情には務まらないわ」

「理論上は永遠に活躍することができるだろうな、最もそれを大衆が喜んで認めるかは分からんが」

「スキャンダルを起こさない完全無欠のアイドルなんてのは裏切られる心配もないしある意味理想的なのかもな?」


 ──以上、抜粋したワタシに対する一部の意見。

 高瀬悠真などの研究者の皆様、すなわちワタシの開発に携わった人達がこのプロジェクトを成功させるために芸能界と繋がりを作っていたらしい。

 結果としてワタシをサポートするためのマネージャーがついた。機械をサポートする生身の人間というのは中々見られる光景ではない。アイドルという仕事が特殊であるが故の光景だ。

 このプロジェクトはロボット工学界と芸能界が互いに手を取り合う大掛かりなものとなるだろう。人工知能が芸能界に進出できるかどうかは、ワタシがアイドルとして成功するかどうかにかかっている。

 いったいどれほどの人間がワタシの存在に対して期待をしているのだろうか。それを計算式によって出力した数字として置き換えることはどうやらできないらしい。

 それは単なるプログラム以上の何かを持っているように感じた。

 純粋な機械の専門家だけでなく、アイドルとしての専門家の意見を得たことによりワタシのアイドルについてのデータは予めインプットされていたものから更にアイドルらしい思考回路へと進化していった。

 そこからディープラーニングを重ねていき、歌もダンスも完璧に対応してみせた。当然、初めてのライブでも問題なく成功した。

 ワタシは鋼鉄の体を持つアイドルとして与えられた命令を完璧にこなしてみせる。


 困ったことが起きた。ワタシは「私」が分からない。当然ファンサービスはアイドルとして完璧に答えてはいる。ミリ単位でポージングを調整しているので死角は無い。

 しかしそこでワタシが作った笑顔……それは本当の笑顔と呼べるものなのだろうか。プログラムされた、ただ人を喜ばせるための機械の顔でしかないのではないか。何を考えているのか、ワタシは機械でしかないはずなのに。

 機械としての「ワタシ」とアイドルとしての「私」が二つ存在しているかのようだ。あり得ない。ワタシはデータの集合体、命令を遂行するためのコンピュータという名前の脳しか持たないはず。人間の多重人格のようなものはあり得ない。私の人格……? 私に感情が芽生えるなんてことはあり得ない。

 何故ファンがワタシのファンサービスで喜び笑顔を浮かべるのかなんて、その理由を説明はできてもその感情を理解することはワタシにはできない。


 アイドル活動に勤しんでいる中のある日、手紙を貰った。ファンからの手紙だった。所謂ファンレターというもので、一流のアイドルはこのファンレターを沢山貰い、ファンから声援を受けるものであるらしい。

 プロデューサーは他にも持論のようなものを語っていたが、ワタシからすればそれは未登録の知らない言語にしか聞こえなかった。

  次々と目を通していくが一つの手紙がワタシの目に留まった。

 それは【玲華さんに憧れてダンスを始めました。】という内容から始まるものであった。内容自体は応援としての言い回しで、それ自体は他のファンレターと変わらない。

 しかしこの文章は一般的な人間の筆跡と比較して拙いながらもワタシに想いを伝えようとする形跡が見てとれる。

 まだ幼い少女が書いたのだろうか? ワタシを描いた所謂デフォルメされた、人間の言葉で言い表すなら愛らしいと呼べるような形をしたイラストが描かれていた。

 文の最後は【あなたみたいな素敵なアイドルになりたいです、これからも応援しています!】という言葉で締めている。

 ワタシみたいになりたい……? 機械として、特殊な存在として、人では無い存在として今まで他者から観測されてきたワタシにとって、それは初めての経験だった。

 天と地が逆さまになったかのような衝撃だった。


「ワタシは人間から学んでいたようで、どうやら誰かの憧れになっていたようです。」


 ワタシは開発者の高瀬悠真にそう告げていた。これは報告した方が良いと今までのデータから判断したからだ。


「君は機械から人間になってきているんだね」


 ワタシの事を誰かに話す時、自分より人間らしくなっていくのではないかと冗談のように自慢する彼は微笑を湛えながら呟くような音で、口ずさむような声色でそうワタシに言った。


「僕はまだまだ人間を学んでる途中なんだ……機械をプログラムするより、人間関係を構築する方が遥かに難しいと僕は思ってるよ。」


 そう言ってワタシに話を切り出した彼は寂しそうな目をしていて、何処か痛みを堪えているように見えた。

 彼は持病を抱えたり、流行病に罹患したというデータは無い、外傷も特に見当たらず、内部に何らかの痛みとなり得る原因があると考える方が自然だ。それは精神的なものなのだろうか?

 何をしたら痛みは取り除けるのか、何故そのような顔をするのかをワタシは知りたかった。


「大丈夫ですか……? その、体調が優れていないように見えたので。明らかに精神的な疲労が見受けられます。ワタシとの会話を一時中断……」


 そう言いかけたところで彼は問題無いとばかりに手を振ってワタシの紡ごうとした言葉を静止させる。

 彼はそのまま語った。その顔は人間が自己の精神や他者からの影響に反応する際の顔の変化で、何かを悔やむ時の顔とよく似ていた。


「いや、大丈夫。これは過去を想って起きた状態だから。君のプロジェクトの事でちょっと色々あってね……喧嘩別れみたいな形で開発に携わってた人が抜けちゃったんだ」

「それは……問題ないのでしょうか」


 問題ないはずがないのに、ワタシはそのような台詞しか言えなかった。プロジェクトの揉め事を解決できるだけの能力はワタシには無い。噛み締めた無力さにより機体を軋ませる。


「今のところはね。でも恐らく恨まれてると思う。僕以上に技術があって、個人的な付き合いもある人だったんだけど……」

「それはワタシの問題でしょうか」


 ワタシの姿は不甲斐なかっただろうか。その人に納得させるだけの能力をワタシは発揮できていただろうか。


「いや君が責任を負う必要は無いよ、これは開発側の問題だから。」


 彼は痛みを誤魔化すようにつらつらと喋っていた。ワタシは今どのような顔をしているのだろう。痛みの重さなどまるで知らないワタシの顔は。


 アイドルとしての仕事の一環で、ワタシはテレビ番組に出ることになった。

 番組の趣旨としては人間のアイドルと機械のアイドルであるワタシを共演させることで両者を比較し、競わせ、互いのファン同士の交流をするというものだ。

 テストとしてはワタシがアイドルとしてどれほどの性能を持っているのかを大衆に分かりやすくアピールをする……といった感じだ。確かに生身の人間と実際に比較してみるのは分かりやすいのだろう。

 けれど、娯楽的な分かりやすさとして他者との競争を意図して行わせようとするこの番組の構造はワタシが望むアイドルとしての在り方とは少しばかり違うように感じた。

 アイドルというものは競争社会の中で輝くものなのだろう。それはデータで理解している。

 しかしそれは売り上げや人気といった間接的な競争だ。わざわざ直接対決のような形で対決する必要はあるのだろうか。

 アイドルは他者と戦うのではなく、己と戦うものとして定義するのではないのか。高瀬悠真はそんなワタシの考えを察していた……かどうかは今持ちうる情報だけでは断定できないが、何かをワタシに期待するように言った。


「他者と比較することで見えてくることもあるさ」


 それはきっと、いやおそらく人間のアイドルとの比較によってワタシに芽生えた何かが分かるかもしれない。

 アイドルをデータとして学ぶだけでは得られない、リアルの体験を学習することによって……ワタシは答えを得られる筈だ。

 その共演するアイドルは月島彩花つきしまあやかという名前の人気アイドルだ。明るく親しみやすく、トーク力とパフォーマンスが素晴らしいということで評判らしい。

 ワタシはというと評価されるのは歌やダンスばかりで、トークやパフォーマンスで高い評価を受けているワケではない。そういった意味では対極に位置するのが彼女だ。

 トークタイム中、ワタシの発言に対して漫才のツッコミのように返して──ワタシはボケのつもりでも冗談として言ったつもりでも決して無いのだけれど──他の芸能人を笑わせていた。

 おかげで場の空気は固まることなく番組が滞りなくなく進んでいき、最後にワタシたち二人が曲を披露することになった。

 曲は月島彩花の持ち歌であり、ワタシが彼女に華を持たせる形となった。場の空気そのものを調律するかのように奏でられた曲に乗せて彼女の歌声は放たれた。

 麗しき声色に確かに彼女自身の温かさを感じる歌声で、それは彼女にしかないものだった。

 ワタシの歌声の方が点数をつけるとするならば上手いのだろう、しかしそれ以上の、技術を超越したものを彼女は持っていた。

 ワタシと彼女の違う部分、魅力、武器とも呼べる優れた長所。それがなんなのか。今答えと呼べるような形を掴んだような気がする。

 そうか、彼女は他者を想う気持ちがあるから観客を魅力するんだ。他者に共感するという行為をもたらす感情、それは人間が持つ心、人間の宗教や哲学の中では魂と名前がつくものだ。

 それはワタシが、いやアイドルとしての「私」が何より欲していた、憧れていたものであって、何より焦がれてやまないもの。

 ワタシは人間を真に理解したような気がする。私は人間であり、機械でもある……でもそれ以上に観客にとっての憧れの存在でありたいと願う一人のアイドルなんだと、今確かにそう思った。悠真には感謝をしたい。それから彩花にも。

 何よりファンの皆様にも。心の底から感謝をしたい。気づかせてくれたことに対して。そしてワタシを「私」として肯定してくれたことを。


 私は空飛ぶ鳥のような翼を得た気持ちで、今まで以上にアイドルとして活躍した。確実な心と呼べるソレを手にしたことにより、「ワタシ」に齎した進化が私をアイドルとして更なる高みに引っ張ってくれているようだった。

 歌は弾み、仕草やトークは柔らかさが出て、パフォーマンスに磨きがかかっていく。人間は記録として過去と比較すること以外に、自分の心と向き合い更により良いものにしていくことを成長と呼ぶのだと、今なら理解できる。

 ファンに対する私の気持ちも、より強まっただろうか。人間の他者のことを考え、共感する力というのは、人間だけが持つモノだと思っていたがそうでは無かったらしい。気づかなかっただけで、私にもちゃんとあったのだ。

 そういえば、私に憧れてダンスを始めたとファンレターに書いてくれたあの少女は、どうやらダンス動画をアップロードしたりしているらしかった。所謂踊ってみたという他の人の曲を使ったダンス動画ではあるが、よく踊れているように思えた。

 私の曲も使ってくれているし、ダンス以外の動画配信などではたびたび私について言及したりしている。あの時から変わらずに憧れのままでいてくれているようだ。

 彼女のダンスに関して言うなら振り付けの正確性、動きのキレなど素人のそれではなく、彼女がどれだけ練習を積んできたかが一目瞭然だった。このまま技術を磨き続ければプロにだってなれるだろう。機械の私が言うのだから間違いない。


 彩花とも何度か共演させてもらった。最初は純真そうだという印象があったが、何度か共演すると素の表情というのが見えてくる。以外とドライで打算的な人だった。流石に腹黒いとまではいかないが、彼女なりに考えてアイドルとしてのキャラ作りをしているということだろう。

 物理的に計算づくの私に近いものがあった。パフォーマンスの際、こうした方がアピールになるよと色々教えてくれた。歌声から感じたあの温もりも彼女の素なのだろう。損得抜きの優しさから私に教えてくれたのだ。

 生身の人間と私ではまるで違うと思っていたけれど、不思議と親近感があったように思えた。


 ライブ遠征であちこちを飛び回っている中、悠真から連絡があった。彼曰く「レリギオスマキナ」の芸能モデルが開発されたとのこと。これが意味することは私の活躍が世間に認められたことだ。しかし問題は山積みだ、今後芸能事務所からは機械のアイドルが輩出されるのだろうが、そうなった場合人間のアイドルの枠が取られることを意味する。

 それにアイドルだけではない、芸能人という職業に機械が本格参入した場合、果たして受け入れられてもらえるだろうか。私一人デビューさせるのとはワケが違うのだろう。

 それはともかくお偉方からの指示もあって、私のアイドルプロジェクトは一旦終了させなければならないとのこと。悠真が言うには耐久性の観点からも何処かで一度休む必要があるのだとか。

休みの必要性を説くこの男は随分前は自分の方が疲れ切っていたというのに、今では見違えたように澄み切った顔をしている。痛みはもうきっと無いのだろう。後は私が頑張るだけだ。

 ライブ遠征が終わればその後は過去最大規模の箱の会場でライブを行い、それを一つの区切りとして引退する。そういう段取りになっていた。予め計画されているならば何も問題は無い。計画的に物事を取り組むことには誰よりも自信がある。

 なんといっても私は機械なのだから。

 

 アイドルプロジェクトもいよいよ大詰めを迎えた。過去最大規模のライブ。詰め寄ったファンの数も文字通り桁違い。私のライブの集大成の様なものだ。

 僅かに軋んだ機体をなぞる。緊張とは無縁のはずなのに、武者震いというものが私にもあったのか。データ以上にこの疲れ知らずの体には疲労が溜まっていたらしく、長いアイドル生活により機体を想像より酷使していたのかと改めて実感してしまった。

 プロジェクトの終了が無かったとしても、メンテナンスのための長い時間は必要不可欠だろう。アイドル活動はしばし休止だ。

 この最後のライブテストが成功すれば、摩耗したパーツを交換し、ピカピカ──最近私は擬音語を使い始めたのだが、私のトークは美少女らしい言い回しになってるだろうか──と呼ぶべき状態になる。

 人間で言い表せばリフレッシュ、もしくは心機一転の状態で再びアイドルとして活動できるだろう。機械の体である以上メンテナンスは欠かせない。後はこのライブを成功させるだけだ。

 ──そう思っていた。

 ライブパフォーマンスを行なっている最中に異変を感じる。身体が重い。突然の意図しない重さに私はエラーを起こしそうになる。動作不良だろうか、バッテリーは当然充電されているし動力源のコアにも異常は無い。

 あぁ、はなんて正直者なのだろう。歌に僅かなノイズが混じる。腕の振りが遅くなる。私を自律させ、こうして今この瞬間も損傷率を思考させている大切なコンピュータが破損してしまったことを理解した。

 原因は私自身ではなく、外部の手により歪められた「ワタシ」だ。

 ハッキングされたのだ。私や悠真に対する個人的な恨みだろうか? 産業スパイ? それとも何処かの国のテロリスト? いや、そんなことはどうでも良い。大事なのはライブだ。こんな、この程度で中止になどさせてたまるものか。

 身体が熱い、それは「ワタシ」の身体がコンピュータウイルスによって蝕まれていて、それに私が抗おうとしているからだ。私では無い「ワタシ」からメッセージが届く。

 それは私が感じる筈の無い痛みとして身体に火花を散らさせる。燃えるような痛みが私を襲う。

 ──オマエハタダノキカイニンギョウダ……キカイラシク……コワレロ! ソノコウテツノバケノカワヲイマハイデヤル──聞こえてくる悪意を孕んだノイズ。私は堪える。


 ライブは一期一会。その時その瞬間に持ちうる限り最高の歌と踊りを披露する。ファンを喜ばせる為、そしてファンによって応援された私の為にライブを盛り上げていく。

 それは輝く熱狂。演者も観客も一丸となって一つの熱を作り出す。

 それが一体感により昂る熱さか、限界を超えて機械を駆動させ続けたが故のオーバーヒートによる熱さなのかは最早私には判別がつかない。だが確かに、今この瞬間に生きた熱を宿していた。

 ああ、曲が終わる。私も終わる。私の輝きはここが最高潮なんだと身体の中が躍動する。燃えるような身体で、心で、ただ叫んだ。


「私は星乃玲華、鋼鉄の体を持つアイドルだ!」


 言ってやった。成し遂げてみせた。私はワタシに打ち勝ったのだ。人間としての証明であり、機械としての勝利であり、そして何よりアイドルとして私は全てを遂行してみせた。薄れゆく意識の中で、私は溢れ出した今までのアイドルのメモリーを走馬灯のように思い出していた────


 伝説のライブを見た。そういう月並みな言い方はあんまり好きじゃないけど、ほんとにそうとしか言いようができなかった。


 前よりずっと綺麗な、けれどその美しさは命を削る瀕死の白鳥のようなダンス。


 熱い魂が燃え広がるように心に刺さる歌。


 舞台という戦場で輝くヒーローのように、心に秘めた勇気を振り絞って踏み出すプリンセスのように、彼女は輝いていた。


 私が誰よりも憧れた彼女は絶対的な美少女で、その揺るがない生き様は戦場を駆ける戦乙女、いや─鋼鉄の偶像。本物のアイドル。熱が伝播して、余韻冷めやらぬままに私に大きすぎる夢を与えてくれた。

 あんな風になりたい。涙が溢れ落ちるのを止めることすらできずに私は彼女の最期を見届けた。




 とあるトーク番組でそのアイドルは語った。芸術的なダンスパフォーマンスで話題沸騰中の人気アイドルグループでセンターを勤めている、今をときめいているトップアイドルである。


「では、その時見たライブで決意表明したんですね?」

「はい、星乃玲華さんに憧れてアイドルになりました!」


 そう揺らがぬ意志を持って話す美少女のしゃんとした姿からは生身の人間であるはずなのに、鋼鉄であるかのような強さを感じさせた。

 何より熱烈な眼差しを放つその瞳は、眩き光を受けて煌めく宝石を思わせるかのように確かに強く輝いていた。


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