第6話 新たなスキル
異世界に召喚されて二日目。
俺は宿のベッドの上で目を覚ます。
「知らない天井だ」
ベッドの上から見上げた先にあるのは見知らぬ天井。
いつも部屋から見上げる天井ではない。
ワンチャン異世界に来たのが夢であることも期待したが、そう都合よくはいかないらしい。
俺は毛布をめくりあげ、ベッドから起き上がる。
昨日ゴブリン退治から帰って来た俺は、飯を食った後に安宿に泊まった。
薄く粗末な毛布に固いベッド。
およそ地球にいたころの宿とは比べ物にならない。
とはいえ疲労がたまっていたせいか、寝ること自体はできた。
一宿一飯分の費用でゴブリン退治で得た金の3分の1がなくなった。
飯は三食食べたいので、この分で考えると1回のゴブリン退治で過ごせるのは2日だけだ。
決して余裕はない。
今日も働こう。
「そういや、もう『一時帰宅』は使えるはずか」
スキル『一時帰宅』の効果。
それは1日に1回自分の家に飛ぶことができるというもの。
場所がどれだけ遠くとも関係ない。
たとえそれが今いる世界とは別の世界であっても。
1日経ったことで、もう再使用ができるようになっているはず。
俺は『一時帰宅』を使用した。
昨日と同じように、パッと目の前の光景が切り替わり、俺は自宅へと帰還した。
「おー。やっぱ使えるようになったな」
24時間経たなければ切り替わらない、というような面倒なものでなくてよかった。
そもそも異世界の1日が24時間なのかは知らないけど。
「そういえば、地球じゃ時間は経っているのかな?」
俺は机に置いてあったスマホをとり、今日の日付を確認する。
そこには俺が異世界へと旅立った日の翌日の日付が書かれていた。
1日経過しているな。
つまり、向こうで1日経つとこっちでも1日経っているのか。
うーん。
異世界と地球で時間の流れ方が違う的なものも期待したのだが、この分じゃそうはいかないらしい。
とはいえ仮に時間の流れ方が違ったところで、俺が5分しか地球にいることができない。
特になにをすることもできない。
しかし5分か。
何かしようとしてもやれることは少ないが、何もしないとなると手持ち無沙汰な微妙な時間だ。
ひとまず飯でも食うか。
朝起きたばっかだし、お腹減っているんだ。
料理している暇はないし(そもそもうちの冷蔵庫にまともな食材などない。大学生なんてそんなもんである)、外食や出前をしている時間もない。
カップ麺でも食うか?
あれなら3分待てば食べ始めることができる。
残り2分の間にパッと食えば完食できるのだ。
と思ったが、お湯を沸かすのに時間がかかるからダメだ。
電気ケトルだから、お湯が沸くのに3分程度の時間がかかる。
さすがにお湯を沸かす程度の時間はあるが、お湯をカップ麺に入れて待っている間に時間が切れて異世界に戻ることになる。
「しゃあない。パンでも食うか」
菓子パンが棚にあったはず。
お、あったあった。
朝の時間がない時にわざわざカップ麺を作るのが面倒だから、何個か買い置きしてるんだ。
だが賞味期限の兼ね合いもあり、そんなに数があるわけでもない。
今日の分を食べれば、残りの菓子パンの数はあと2つ。
明々後日からは食うもんがなくなる。
もちろん、菓子パンを買いに行く時間なんて俺にはない。
まあいいか。
明後日からの朝ごはんは異世界の方で食えばいい。
残り時間も少ないことだし、俺は急いで菓子パンを食べた。
ちょうど食べ終わると共に、時間がきれて異世界に戻って来た。
異世界の宿屋の一室に舞い戻る。
「あっぶねー。ギリギリセーフ」
このままだと菓子パンを食いそこないところだったぜ。
俺は菓子パンを食べるために地球へと戻ったっていうのに、本末転倒になるところだった。
「いや、ちげーよ。菓子パン食いに戻ったわけじゃねーよ」
目的を見失ってどうする。
本来の目的は、スキルが増えているかどうかの確認だろ。
ステータスを開き、自分のスキルを確認する。
昨日は地球から異世界へと戻った時に、スキルが増えていたが、今回はどうだ。
――――――――ステータス―――――――――――
名前 沙城零助
年齢 19歳
スキル 一時帰宅(Eランク)
神拳(Sランク)
魔導大帝(Sランク)
――――――――――――――――――――――――
「おおおお! 増えてる! しかもまたSランク! やったぜ!」
やっぱりそうだ!
仮説は当たっていた!
地球から異世界へと渡る度に、俺は新たなスキルを手にすることができるんだ!
「すっげー。つまりこれ、1日1個新しいスキルが手に入るってことだろ。大当たりじゃねえか」
得られるスキルはランダム。
だが、1人につき1つしか手に入らないスキルを何個も手に入れられる。
それはとてつもないことだとわかる。
あと、昨日今日と新しく得たスキルがどちらもSランクであることも気になる。
これはただ単に運がいいだけなのか、あるいは異世界を渡ってくるときに得られるスキルは高性能なものが多いということか。
そこら辺は今後新たにスキルを得るなかで調べていけばいいだろう。
「それじゃ早速、新しいスキルの効果を見てみますか」
ステータスのスキルをタッチして効果を確認する。
――――――――ステータス―――――――――――――――――
魔導大帝(Sランク)
魔法使い系統のスキルでは最高クラス。
魔力量が通常の魔法使いの1万倍程度に向上する。
全属性の魔法に適性を持つ。
あらゆる魔法を一度見るだけで会得でき、発展させることも可能。
――――――――――――――――――――――――――――――
なんか強そうなこと書いてある。
魔力量が通常の魔法使いの1万倍。
すごいでかい数字(小並感)。
通常の魔法使いがどの程度かわからないが、1万倍はかなりのものだろう。
その次に書いてある全属性の魔法に適性をもつというのもよくわからない。
魔法の適正とは?
わからないけれども、全属性に適性をもつということは、まあ悪いことではないだろう。
ここら辺は一人でうんうん考えてもわからないのでスルー。
あらゆる魔法を一度見るだけで会得できる。
これは見ただけでわかる。すごい効果だ。
見ただけで何かを会得するなんて、絶対すごいスキルでしょ。
魔法を使ったことないけど、見ただけでそれが使えるようになる類の簡単なものではないはずだ。
発展させるってのはいまいちよくわからない。
ま、それはおいおい確かめて行けばいいだろう。
『魔導大帝』の効果を見たところで、俺は今日の行動を考える。
それじゃ今日はギルドの依頼をこなして宿代を稼ぐか。
いや、訓練場で魔法使いの魔法を見て学ぶのもありかもしれない。
さっきは今日は働くかと考えていたが、『魔導大帝』の効果を使って魔法の習得もいいだろう。
魔法という新たな力を得れば、クエストにおいて取れる選択肢は広がる。
「ふふ」
胸が躍る。
楽しくなってきた。
できることが増えるのは、なんだか楽しい。
希望と興奮を胸に、俺は宿を出てギルドの方へ向かって行った。
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