第16話 再会

「まずは私の自己紹介からね。私の名前はウカノミタマというわ。」


「・・・え?てことは、私の・・・お母さん?」

「えぇ、そうよ。会えて嬉しいわ、みさき。」

そう言って、その美人-みさきの母は目を細めて笑った。死を通り越した再会に、互いの目頭が熱くなる。


みさきは目に溜めた涙を我慢することはできなかった。声をあげて泣くみさきを、母は優しく抱きしめる。

みさきはその時初めて、母のぬくもりを実感していた。


「さぁ、みさき。そろそろ泣き止んで頂戴。」

「う、うん・・・」

「あなたは、今てんこちゃんと頑張っているのよね?」

「な、なんで知ってるの・・・?」

「ふふっ、神様には何でもお見通しなのよ?」

みさきの戸惑う顔を見て、クスクスと笑う母だったが、しばらくして突然顔を曇らせ、「ごめんね」と謝ってきた。

「なんで謝るの?」

「私、みさきの前から、急に姿を消しちゃったから。寂しかったよね・・・本当にごめんなさい」

「あぁ・・・いいの。しょうがないんだし。お母さんも・・・その、、」

「そう、贄として捧げられたの。」


しばらく沈黙が続いたが、みさきはゆっくりしてられないことに気が付いた。

「ねぇ、これって夢なの?それとも、私、もう死んじゃったの?」


みさきはここに来た時、これは夢だと思った。・・・しかし、夢にしてはリアルすぎるし、死者であるはずの母に会って、触れることができた。もしかしたら、もう私も死んでいるのかもしれない。


「そうねぇ・・・一つ言えるのは、あなたはまだ死んでいない、ということね。ここは夢でも死後の世界でもないの。」

「そうなの・・・」

「あぁ、ちなみに言うと、てんこちゃんも死んでないわよ?」

「そうなの!?よ、よかったぁ・・・」

てんちゃんが死んでいないことが分かり、心から安心した。


その時だった。どこからか、母ではないが、聞き覚えのある声が私を呼んだ。

「・・・み、き・・・みさき・・・」


みさきは声の主を探そうと、あたりを見回したが、母以外には誰もいない。

しかし、母は声の主が分かっているようだった。

「さぁ、みさき。どうやらお迎えが来たようね。しっかり頑張ってらっしゃい。」

「え?お、お迎え?」

みさきは訳が分からず、あっけらかんとしていると、母が突然みさきの手を握ってきた。

「これ、つけてきなさい。」

そう言われ、みさきの手首を見ると、みさきが高天原に来た時にもらったブレスレットに、小さな可愛らしい鈴がついていた。

「きっとみさきを守るわ。」


その言葉を最後に、みさきは目を覚ました。

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