オンナゴコロの濃やかな描写に定評のある小田島氏が紡ぐ、チュンヒデ物語の第三弾(“黒い髪の人魚”のスピンオフ第二弾)です。
構成は、チュンチュンの独白スタイルで書かれた第一話とヒデくんの独白の第二話。ヒデくんの部は異常に短い。これは作者の思い入れの深さの差なのか(笑)
チュンチュンの27歳の誕生日、遠く離れた二人が同じ空を見上げている。三日月の薄い光が、二人を優しく見守っている。
二人が別れてから5年もの月日が流れた。中国人留学生だったチュンチュンは、日本の大学を卒業後帰郷し、離れ離れになった。別れる時はお互い縛らないと約束した二人だったが‥‥。
二人の心情と三日月の優しい光が絡み合って美しい情景を演出している。一枚の絵画のような作品だ。おススメです。
両片思い、なんて言葉があるが、あれほど傍から見ていてもどかしい瞬間は無いだろう。互いにどうアプローチするか、当人同士も相手からの恋心なんて微塵も考慮しないまま、にらみ合いの頭脳戦を続けてしまうのだ。この拮抗を壊すのはなかなか手間のかかる。
この話は両片思いではないものの、一度別れることを決めながら、それでも相手を忘れられない、大人になった男女の切ない恋心が綴られている。向こうは納得しているのだから、いつまでも自分が気にしていたら仕方ないだろう。大人になった二人はそう考え、互いに後ろ髪をひかれながらもこれからのことへ目を向けている。
彼らにも明日は来るだろう、そして明日には何も変わらず昨日と同じ生活に戻っているのかもしれない。それでも、心の中を綺麗さっぱりにするのは難しい。こうした複雑な心情がじかに伝わってくるような作品だった。