第2話




「 なに?」



誰?じゃなくて、なに?と。



思ってたよりも声が低くて身体が震えた。



震えた理由は怖いとか、そんなんじゃなくて。ただ、全身に響くような色気のある声に身震いがする。



この声が、いま自分に向けられてるものだと考えると興奮と幸福で満ちる自分自身に向けられるその瞳がいまだに現実かどうかすらもあやふやで。




「 俺に何か用?」


白い首を傾けられ、目を奪われる。



「 好きなんです、」


頬が熱を浮かべるから、面と向かって話せなくて。恥ずかしくて下を向く。




ずっと、ずっと好きなんです。



話したこともない女からの気持ちなんて、汐音くんからしたら気持ち悪いと思う。



けど、こんな日しかないから。



偶然、路地で横を通り過ぎた汐音くんとは二度とこんな距離に近付けることがないから。



「 好きって俺の事?」


低い声が近くでして、それでも顔を上げれずやっぱりこんなの気持ち悪いとしか思われないと立ち去ろうとしたけど。



「 ...はい」


顔を見つめる事は出来ないから、背中を見せながら答える。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

まごごろこめて 葉音 @hanonn123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る