【3人劇】黒猫の勇気
夜染 空
黒猫の勇気
『黒猫の勇気』
登場人物
死神(不問)父親と兼役
黒猫(不問)元は人間 年齢は光希と変わらない
光希(みつき・不問) 病気で入院している 18歳ぐらい
一人称、二人称、世界観を壊すような改変がなければ語尾の変更、アドリブ可
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0:以下、本編
光希:「M/夢を見た。綺麗な桜の木の下に、誰かがいる夢…大きな鎌を持っていて怖かったけど、不釣り合いなその景色に、何故か目を奪われた…その隣に、真っ黒な猫がいた…」
0:夢から覚めて窓の外を見る光希
光希:「…不思議な夢……あれは、どこの桜だろう…退院したら、見に行けるかな…」
黒猫:「君は退院できないでしょう?」
光希:「あ、猫さん。また来たの?」
黒猫:「喋る猫に対して順応早すぎだよ…もう少し驚いたら?」
光希:「だって、猫さんが喋っているのは、私にしか聞こえてないんでしょ?」
黒猫:「変な目で見られるよ?」
光希:「病気で変になってるって思われるだけだよ、平気」
黒猫:「まぁいいけど…それより君、夢を見たって言ってたけど、どんな夢を見たの?」
光希:「桜の木の下に、死神と猫がいる夢……かな」
黒猫:「死神……」
光希:「うん、でもね、怖くなかったの。」
黒猫:「そう…なら、君の寿命は、そろそろだね」
光希:「……そっかぁ」
黒猫:「…驚かないんだ」
光希:「分かってたことだからね」
黒猫:「君の寿命を延ばすことはできない。今のうちに、やりたいことリストでも作って後悔しないようにしておくんだね」
光希:「やりたいことリストかぁ…何があるかな」
黒猫:「そんなの知らないよ、君のやりたいことなんだから、君が決めなよ」
光希:「あはは、そうだね」
黒猫:「…ボクは行くよ。」
光希:「うん、またおいで、猫さん」
0:黒猫退場
光希:「M/やりたいことリスト……やりたいことかぁ…何があるかな…なにが、できるかな…」
0:引き出しから紙とペンを出す
光希:「考えてもしょうがない。とりあえずやりたいこと、全部書いてみよう!」
0:間
黒猫:「…で、書いたのがこれ?」
光希:「そう!出来るか分からないけど、とりあえず書いてみた!」
黒猫:「動物と喋る…既にボクと喋ってるじゃないか」
光希:「あ、そっか……!ならこれは達成…!」
黒猫:「他には…満漢全席!?こんなの1人で食べられるわけないじゃないか!」
光希:「わかってるよ!」
黒猫:「……空を飛びたいとかもあるし…非現実的な事を書き連ねるためのリストじゃなくて、可能な限り出来ることをやるためのリストだって分かってる…?」
光希:「うっ、」
黒猫:「…あ、コレなら出来そうだね。海に行く」
光希:「うん、これくらいなら出来そうかと思って書いてみた」
黒猫:「頼めば外出できるんじゃないの?」
光希:「海に行くまでの足があれば…ね…」
黒猫:「…親は?」
光希:「さぁ?もう随分見てないな…」
黒猫:「……」
光希:「そんな顔しないでよ、私が病気してから随分苦労したみたいだし…好きなことしてて欲しいから、良いんだよ」
黒猫:「…それは、寂しいね」
光希:「…っ」
黒猫:「…ボクにできることは少ない…だから、違うモノを連れてくるよ」
光希:「え?連れてくるって…誰を?」
黒猫:「明日また来る」
光希:「え、猫さん!?」
0:黒猫退場
光希:「……行っちゃった。誰だろう…私のやりたいことを叶えてくれるのって…」
0:間
黒猫:「というわけで、連れてきた」
光希:「え……」
死神:「…クロ、お前はまた…」
黒猫:「良いだろ?どうせ暇なんだから」
死神:「暇って…私には魂を狩り取ると言う立派な仕事があるんだ」
黒猫:「毎日じゃないだろ?時間はあるんだから協力してよ」
死神:「…仕方ない、だが私が出来ることは限られている。出来ない事は出来ない。それでいいな?」
黒猫:「いいよ!」
光希:「待った待った!私の意見は!?」
黒猫:「やりたいことリスト、書いたんだから少しぐらい達成しようよ」
光希:「…でも」
死神:「生きている内でなければやりたいことは出来ない。コイツの気紛れに付き合うのも、生きている内しか出来ない。」
黒猫:「そーそー!ね?死神も協力してくれるんだし、折角だから楽しもうよ!」
光希:「…わかった、なら、よろしくお願いしようかな…!」
黒猫:「そーこなくちゃ!」
死神:「全く……困った猫だ…」
0:間
黒猫:「って事でやりたいことリストだけど…」
死神:「これは無理があるぞ…」
光希:「えー…ダメかぁ」
死神:「満漢全席はさすがに無理だ…」
黒猫:「同じこと言ってる」
光希:「だって見てみたいじゃん、満漢全席…」
死神:「…夢で見せるくらいしか出来ないぞ…」
光希:「え、夢で見れるの!?」
黒猫:「満腹にはなれないけど、見せるくらいなら朝飯前だよ!ね!死神!」
死神:「…まぁ、それくらいなら」
光希:「やったぁ!ならこれは保留…っと!」
黒猫:「次の海に行きたい…これは?」
光希:「んー…行けるなら行きたいけど、夢でもいいかな…」
黒猫:「本当に?」
光希:「うん」
死神:「…お前がそれで良いなら、そうしよう」
光希:「うん、これも保留。」
黒猫:「次、空を飛びたい…これも、夢で叶えるつもりでしょ」
光希:「…バレた?」
黒猫:「現実的なやりたいことは無いの!?」
光希:「ある!あるよ!ほら!」
黒猫:「……宝石が見たい?」
光希:「うん、なんでもいいんだけど、私、今まで宝石って見た事ないからさ、一度は実物を見てみたくて」
死神:「なら……ここに。」
黒猫:「え、なんで持ってるの!?そのポケットは未来のネコ型ロボットが持ってるやつ!?」
死神:「そんなわけないだろう…今まで狩り取った魂が死後の世界に持っていこうとした物を、回収しておいただけだ」
黒猫:「びっくりしたァ…言えばなんでも出てくる魔法のポケットかと思ったよ」
死神:「(ため息)ほら、これでどうだ。」
光希:「…綺麗…ダイヤモンドだ」
死神:「お前の瞳も、宝石のようなものだろう。」
光希:「え?」
死神:「お前の瞳は、まるでオニキスのようだ。邪を祓う魔除の石だ」
光希:「…初めてそんな事言われた」
死神:「私たちはお前達人間と少し感性が違う。物の例えも小難しい言葉ではなく直感的になる。」
光希:「…でも、嬉しいな…見たい見たいと思っていた宝石が…あぁ、例えられたのは石だけど、でも、そんな綺麗なものに例えられて、嬉しい」
黒猫:「良かったね!」
光希:「…うん!」
黒猫:「…次は…彼氏を作る……?」
光希:「あぁ、それはいいの。無理だから」
黒猫:「え、無理って…」
光希:「だって、もうすぐ死んじゃうのに、彼氏はできないでしょ。」
黒猫:「……」
死神:「それは、夢でどうにかなるものでは無いな。」
光希:「そーだよ。書いておいてなんだけど、これだけは叶わない。だから、いいの。」
黒猫:「…」
光希:「ほら、次々!」
死神:「……いいのか?」
光希:「…なにが?」
死神:「お前はもう長くない。だが、それを理由に、諦めて良いものなのか?」
光希:「…死神さんも言ったでしょ?コレは、夢でどうにかなるものじゃないし、ましてや、もうすぐ死んじゃう人と付き合いたい人なんて、いないよ」
黒猫:「……なら、僕が君の彼氏になってあげるよ」
光希:「…猫さん?」
死神:「お前、それはっ」
黒猫:「このままこの姿でいるのも悪くないけど…どうせなら、君の役に立ちたい」
死神:「……お前…そんなことをしたら」
黒猫:「いいんだよ。これも何かのご縁ってことでさ。1回だけしか使えないチカラだけど…それで消えちゃっても、文句ないよ」
光希:「…消える?どういう事?」
死神:「この猫たちは何か一つの強い願いを叶えると消える定め…成仏と言えば聞こえは良いがそうでは無い。その願いが果たされた時、存在ごと消えるのだ」
光希:「…そんな…猫さん、ダメだよ」
黒猫:「いいんだよ。だって、君……書きながら泣いたでしょ?」
光希:「…え?」
黒猫:「本当にやりたいことを隠して、何度も紙を捨てて、強がるためにあんなこと書いたけど…本当はもっとやりたい事、あるんでしょ?」
光希:「……それは」
黒猫:「だからせめて、これぐらいは叶えてあげたいんだ。」
死神:「…本気らしいな…ならばもう何も言わん。好きにしろ」
黒猫:「言われなくても好きにするさ。ボクは、猫だからね」
0:淡い光が猫を包み、その姿を猫から人に変える
黒猫:「……こんな感じかな?」
光希:「…ほんとに人の姿になった」
黒猫:「あー…生きてた時の姿になるんだ…成長してるっぽいけど、これはちょっと嫌だな…」
光希:「……蒼太くん…?」
黒猫:「……え?」
光希:「…んな訳無いか…知り合い…と言うか同級生に似た顔の子がいたから…」
黒猫:「…いや……」
死神:「人の姿になったは良いが、彼氏とは具体的に何をするのだ」
黒猫:「…さぁ?」
光希:「……なんだろ…そう言われると、わからないや」
死神:「お前たち…クロ、情に流されて一度きりのチカラを使ったのにそれで良いのか…?」
黒猫:「…まぁ、人の姿じゃないと出来ないこともあるでしょ。」
死神:「(深いため息)」
光希:「…あの…いきなりで悪いんだけど……手を、握ってもらえるかな?」
黒猫:「?」
光希:「ほら、猫だとモフモフしてるからさ?その姿なら…あ、嫌ならいいんだけどね!?」
黒猫:「……こう?」
光希:「……っ」
黒猫:「…温かいね」
光希:「(少し涙ぐみながら)……うん」
死神:「…お前に残された時間はわずかだ…後悔のないように生きろ」
0:間
光希:「M/残された時間はわずか…そう言って死神さんは消えてしまった。私は、人に姿を変えた猫さんとの恋人ごっこを続けていた…」
黒猫:「…で、やりたいことリスト、あと出来そうなのは何?」
光希:「んー…、好きな人とデートする…かな」
黒猫:「近くに大きい公園あるし、そこを散歩するくらいでいいなら…一応デートになるのかな?」
光希:「そうだね…外出許可取らなきゃだから、ちょっと時間かかるかも」
黒猫:「取れたら行けばいいさ。…他は?」
光希:「んー…なんだろね?なんか、結局死神さんがあの後夢で海とか満漢全席見せてくれたし、なんなら夢で空も飛べたし…猫さんと恋人ごっこできてるし…なんかもう、色々叶えさせてもらった気分」
黒猫:「本当に、もうないのか?」
光希:「…あるよ?あるけど、私のせいで余計な心配させたくないし。」
黒猫:「…本当は、親に会いたいんだろ?」
光希:「…」
黒猫:「電話して声聞くだけでも…」
光希:「だから、無理だって!」
黒猫:「…っ」
光希:「私のせいでいっぱい喧嘩して、私のせいでいっぱい困らせて……なのに、もうすぐ死んじゃうから会いに来て欲しいなんて、言えないよ…っ」
黒猫:「…ごめん」
光希:「今こうして入院させて貰えてるだけでもありがたいのに、これ以上の事を望んじゃいけないんだよ…だから、いいの」
黒猫:「……ボク…光希……?おい光希!?」
光希:「(荒い呼吸)」
黒猫:「やばい、ナースコール……!」
0:間
死神:「…お前のせいじゃない」
黒猫:「…わかってる」
死神:「形はどうあれ、こうなる事は決まっていた」
黒猫:「…でも、ボクが余計なことを言わなければ…光希はあんなふうに苦しむことは無かった…」
死神:「それは違う」
黒猫:「……」
死神:「クロ、誰かのために何かをすることは、とても勇気が必要な事だ。お前は、あの人間のために何かしたくて動いていた。そうだろう?」
黒猫:「そうだけど…でも……」
死神:「お前が出しゃばらなければ、あの子は自分の心に蓋をしたままだった。」
黒猫:「……うん」
死神:「お前が、あの子の心の蓋を開けたんだ。誰にも言えなかっただろう本当の気持ちをな」
黒猫:「…会わせてあげたい」
死神:「…両親にか?」
黒猫:「だって、本当にこのまま会えないまま死んじゃったら、きっと光希は後悔する」
死神:「…それは、あの子が決めることだろう」
黒猫:「でもっ」
死神:「クロ。」
黒猫:「…どうせボクはあの子が死ぬ時に一緒に消えるんだ…それなら、最後まで余計な事をするよ」
死神:「何をする気だ」
黒猫:「…決まってる」
0:間
光希:「猫さん…ビックリさせてごめんね?」
黒猫:「…ボクも、ごめん」
光希:「謝らないでよ。ついカッとなって多きな声出して身体がびっくりしただけ…大丈夫だからさ」
黒猫:「うん…」
光希:「…ねぇ猫さん、私は、いつ死ぬの?」
黒猫:「……」
光希:「なら、もう1個聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
黒猫:「なに?」
光希:「猫さんは、蒼太くんなの?」
黒猫:「…なんでそう思うの?」
光希:「なんでだろうね?ちゃんと話したことも無かったはずなのに…私が覚えている蒼太くんは、みんなの中心で、いつも笑ってて…でも、急に引っ越しちゃって…」
黒猫:「……両親は離婚して、母親と暮らしてた…」
光希:「…え?」
黒猫:「そのあと、母親は再婚した…けど、再婚相手はボクを嫌っていつも暴力を振るってた…」
光希:「…猫…さん?」
黒猫:「転校した先の学校では、アザが目立たないように長袖ばかり着て…それが原因で虐められた」
光希:「……」
黒猫:「ある日パチンコで負けて帰ってきた再婚相手は、帰るなりボクを殴ってきた…打ち所が悪くて、ボクは頭から血を流して死んだ……両親は、それを隠そうとして、ボクを押し入れに閉じ込めた……」
光希:「そんな…」
黒猫:「そして気がついたら、黒猫の姿になっていた…」
光希:「本当に、蒼太くん…?」
黒猫:「そうだよ。よく覚えてたね」
光希:「…久しぶり…でいいのかな?」
黒猫:「いいんじゃないかな?まぁ、ボクは君のこと、ちゃんと覚えてないんだけどね」
光希:「だろうね、私あんまり外に出て遊ぶタイプじゃなかったし」
黒猫:「いつも本ばっかり読んでた」
光希:「…それは覚えてるんだね」
黒猫:「何となくね…でも、言われるまで気が付かなかった」
光希:「こんなことってあるんだね…」
黒猫:「だね。」
死神:「感動の再開のところ悪いが…時間だ」
光希:「…え?」
死神:「お前の命の時間だ」
光希:「そんなに、あっさり来るものなんだね」
死神:「本来死期を前にして、ワタシが魂を狩る対象に会うことは無い…」
光希:「猫さんが連れてきちゃったからねぇ」
黒猫:「でも、連れてきたから出来たことだってあるだろ」
光希:「そうだね…そっか…ちょっとずつ心臓の鼓動が弱くなってるのは、そのせいだったのか…」
死神:「最後に、やり残したことはあるか」
光希:「…そうだな…なら、コレを…お父さんとお母さんに渡して欲しいな」
死神:「…手紙?」
光希:「うん、きっとお葬式はすると思うから…上手いこと渡しといてよ」
死神:「預かろう」
光希:「よろしくね……」
黒猫:「(心の声)間に合え…間に合え…間に合え…っ」
光希:「死神さん、連れて行ってよ」
黒猫:「(心の声)間に合えっ!!」
死神:「(父親)光希!!」
光希:「…お父さん?」
死神:「(父親)光希…お前がもう長くないって病院から電話があったんだ…ごめん…今まで会いに来れなくて、ごめんなっ」
光希:「…なんで…なんで会いに来たの…」
死神:「(父親)お前のことでお母さんと喧嘩になって…考えないように会いに来ることを辞めてしまっていた…でも、それじゃダメだったんだ…喧嘩しようが何をしようが、ちゃんと向き合うべきだったんだ…」
光希:「…そんな…今更……私もう死んじゃうんだよ…もう良いやって覚悟して…連れて行ってもらおうとしたのに…」
死神:「(父親)ごめん…逃げてて、ごめん……ごめんっ…」
光希:「(泣きながら)遅い…遅いよ…寂しかったよ……会いたかったよ…!!」
黒猫:「間に合った…良かった…」
死神:「クロ…」
黒猫:「ごめん死神、こいつの寿命、少し延ばしちまった」
死神:「…誤差だ。ワタシが寝坊したことにすればいい」
黒猫:「それで許されるのか?」
死神:「さぁな」
光希:「…死神さん、もういいよ…」
死神:「ワタシは寝坊したことになっている。」
光希:「それはダメだよ…連れて行って」
死神:「…」
黒猫:「……ボクも、時間みたいだね」
光希:「猫さん…」
黒猫:「まぁ、またどこかで会えるでしょ!」
光希:「…会えるよね?また会えたら、今度は一緒に海に行こうね?」
黒猫:「そうだね、いつか、また会おう」
死神:「…では、時間だ」
光希:「M/死神さんはそう言って優しく鎌を振るった…痛みも苦痛もなく…私の魂は肉体から切り離された…。父が私の胸の上で泣いている。心音が止まった事を伝える音が鳴り響く病室…私は、ゆっくりと死神さんに連れられてこの世を去った……」
0:間
死神:「良かったな、父親に会えて」
光希:「…うん」
死神:「預かった手紙はどうする」
光希:「…捨てていいや!何か、泣いたらスッキリしちゃった!」
死神:「…そうか」
光希:「うん!猫さんのおかげだね!」
死神:「…クロは、もう帰ってこない」
光希:「…うん」
死神:「笑っていたな」
光希:「…そうだね…できない約束もしちゃった…」
死神:「……だが」
光希:「…?」
死神:「(ポケットから何かを取り出す)コレは、クロが残した涙だ」
光希:「涙?」
死神:「クロが残した思いが、涙となって形を成している。今はワタシが結晶化させているが…上手くすれば、魂の欠片として輪廻の輪に乗せることが出来るかもしれない」
光希:「…それって」
死神:「だが保証はない。」
光希:「……でも、可能性があるなら、やってみよう!」
死神:「わかった」
0:間
光希:「…ここが、輪廻の輪……」
死神:「この輪に乗り、転生を待つのがお前の仕事…そして…」
光希:「うん、猫さんも一緒に転生させる」
死神:「ただ待つだけではその結晶化は解けないぞ、そもそも戻すような事がないと思っていたからな…」
光希:「まぁ…なんとかなるでしょ!」
死神:「…呑気なやつだ」
光希:「猫さんは私のために頑張ってくれた…今度は、私が猫さんのために頑張る番だよ」
死神:「…そうか…ならば行くが良い」
光希:「うん、行ってきます!」
死神:「M/死神相手に行ってきます…か、不思議な人間だな」
死神:「M/クロ…さっさと帰ってこなければ、その人間は輪廻の輪から外れてしまうぞ?早く帰ってこい…」
光希:「猫さん、私、猫さんのおかげでちゃんと泣けたよ?諦めてた事も叶ったよ?猫さんのおかげだよ…」
光希:「…猫さん、ごっこでも、彼氏になってくれて嬉しかったよ?本当は公園も行きたかったけど…」
光希:「…猫さん、また、お話しようよ」
光希:「…蒼太…くん」
黒猫:「……その名前で呼ぶなよ」
光希:「……猫さん!」
黒猫:「なんかずーっと呼ばれてる気がしたからさぁ…気持ちよく寝てたのに、なんで起こすんだよ!」
光希:「へへっ、おかえり!」
黒猫:「おかえり……?待って、なんでボクここにいるの?消えたはずだよね!?」
光希:「死神さんがね、猫さんの涙を取っておいてくれたの」
黒猫:「アイツぅ、余計なことしやがってぇ!」
光希:「でも、また会えたね!」
黒猫:「…そうだね」
光希:「もっと時間がかかると思ってた…なんでだろうね?」
黒猫:「さぁね、ボクが知るわけないだろ?もう消えて無くなるものだって思ってたのに…まさか戻ってこれるなんて思わないよ!」
光希:「ねぇ、猫さん」
黒猫:「なに?」
光希:「猫さんのやりたい事リスト作ろうよ!」
黒猫:「えぇ!?やだよ!考えるの面倒!」
光希:「そんなこと言わずにさぁ!転生するまで時間かかるだろうし、生まれ変わったらやりたいことリスト、一緒に作ろ!」
黒猫:「…生まれ変わったら…まぁ、もう人間は嫌だな…」
光希:「えぇ!?そしたら私と死ぬ前にした約束はどうなるの!?」
黒猫:「人間じゃなくてもできるだろ!?例えば…猫とかさぁ!野良猫になって自由にどこにでも行けばいいじゃないか!」
光希:「人間じゃないとできないことだってあるでしょ!?」
黒猫:「なんでそんなに押しが強いんだよ…なんか怖いよ」
光希:「嬉しいんだよ!」
黒猫:「……なら、1個だけ」
光希:「なになに?」
黒猫:「…今度は、ちゃんと話がしたいな」
光希:「…」
黒猫:「ただ見てるだけじゃなくて、ちゃんと、話がしたい」
光希:「…えっと…」
黒猫:「まぁ、また同じクラスになるとも!?同じ歳になるとも!?ましてやお互い人間に生まれ変わるかわからないけどね!」
光希:「あ、それはずるい!」
黒猫:「やりたいことリストだからなんでもいいだろ!」
光希:「ずるーい!」
黒猫:「M/本当は知っていたんだ、君が光希だって事…いつも本ばかり読んでいて誰とも話さなくて、いつも独りだった。本当は、話がしてみたかった。でも、ボクにはその勇気がなかった……でも、あの姿だから勇気が出せた…君はボクが思っていたよりお喋りで、能天気で、そして…泣き虫だった…」
黒猫:「M/君を知れてよかった……君に会えてよかった…君と、もっと…」
光希:「あれ?猫だ、どこから入ってきたんだろう…」
黒猫:「どこだっていいだろ?」
光希:「え…猫が喋った!」
END
【3人劇】黒猫の勇気 夜染 空 @_Yazome_
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