スペース・マトリョーシカ

加賀倉 創作【FÅ¢(¡<i)TΛ§】

案ずるな、これは遺書ではない

 本稿は以下二作より着想を得た。


・La Pensée sauvage「野生の思考」

 レヴィ=ストロース著

 

・Solaris「ソラリスの陽のもとに」

 スタニスワフ・レム著

 




 

 🪆🪆🪆




 

 ——20XX年。


 未来予測量子コンピュータ〈ホッフル・ペオプレ10801018〉は、【人類は向こう一世紀の間に100%絶滅する】と結論づけた。


 計算試行回数は八那由多なゆたに及んだ。





  タルコニ博士は、未来予測量子コンピュータ〈ホッフル・ペオプレ10801018〉による容赦ない計算結果を受けて、SNSに投稿をした。





 ¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!



🌏ドクトル・タルコニ@bags_in_bags_people・約23時間56分4秒前


 【問】

 人類はなぜ決まって破滅に向かうのか


 【仮説】

 人間がいつも自分で自分の首を絞めたがるのは、彼らがアホだからではない。

 人間がこうも破滅へ吸い込まれてしまうことの理由を考えるならば、まずは人間の住むところである地球を一つの集合的生命体として捉える必要がある。

 人間は、人体においてその構成要素である細胞があるのと同じように、地球の構成要素の一つに過ぎない。

 その構成要素が、数多の地球の構成要素の中でも特に、イランことをする。

 だから公共の福祉的観点から、人間というのは、地球のためにならない存在──地球の恒常性を狂わせる創造的破壊者──として、プログラム死を余儀なくされるのである。


 つまりは、人間がどう足掻いても破滅に向かってしまうのは「アポトーシス」という言葉で説明可能である。


 ◯   ⇅ 1   ♡ 3   ¡!¡! 74  ◻︎ 


 ¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!





 タルコニ博士はSNSへの投稿の後、何かに囚われたように「書き遺し」をした。





 ¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!


 †             †

  そうだ。

  これが私の長年探していた、

  宇宙の真理なのだ!!

 †             †





 宇宙のあらゆる惑星、ひいては天体は、知的生命体である。私はそのように確信している。「天」という字を思い浮かべて欲しい。みろ、「人」が入っている! つまり「天」という字は、〈入れ子〉なのである。古代中国の漢字の発明者は、これから私が書き遺す紛れもない〈真理〉に気づいていたのだ。


 銀河系の中の

 太陽系の中の

 地球の中の

 人間の中の

 細胞の中の

 ミトコンドリア


 人間は少々異端な〈入れ子〉であると認めざるを得ない。人間というのは、惑星同士——例えば地球と火星——で繰り広げられている〈幾万幾億年戦争〉で使われた、ウイルス的存在なのだ! すなわち人間の正体は、火星から派遣された諜報員スパイである。ただし、人間がウイルスと僅かに異なる且つ酷く厄介な点は、己を増やしてしまうところにある。人間は地球の破壊のみならず、建物を所狭しに築き、その他多数本来地球にとって有害不必要な異分子をしきりに合成してしまう。私はこれを私独自の呼び方で、〈破壊的創造〉と呼ぶ。


 惑星には——水星🔵金星🟡地球🔵火星🔴木星🟤土星🟤天王星⚪️海王星🔵などには、知性や意思ひいては意志がある。








 ⚠️以下、「ソラリスの陽のもとに」のネタバレ注意です⚠️







  〈ソラリス〉を知っているか!?


 その科学創作的物語は、「謎の惑星〈ソラリス〉を覆う海は知性を持つ巨大な有機体である」という設定に基づいている。ソラリス上空に敷設したステーションで、人間は惑星の観測や研究を行いながら生活を送る。ステーション内の人間はもちろん寝る。さもなくば死ぬ。そして睡眠中、睡眠の度ごとに、人間の深層心理を読み取り、深層心理に渦巻く物事を具現化し、ステーションに真偽判別不可の偶像を送り込んでくる。


 よくよく考えずに感じてみると、人間の体一つをとっても、人体は諸器官から成り器官は組織から成り(もまた組織の集合体だ!)、細胞という生きた有機体があり、細胞の中に無数のミトコンドリアがあり、エネルギーを生み出している。先に示したように、人体は天体の僅かな間隙かんげきに挿入される。それらは規模の違いこそあれど、構造的には常に変わらない。すなわちこの宇宙は、森羅万象の営みの入れ子なのである。


 これから私は、猟銃と大袈裟な刃物の何本かを携えて熊の狩猟に出かける。


 何をするのかって?





 ——〈ソラリス〉の声すなわち意に従うのだ。。。。


 ¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!¡!




 

 🪆🪆🪆🪆





 タルコニ博士は、山奥で見つかった。


 彼は、熊の内臓を徹頭徹尾取り除いた容器の中に、その冷たい身をめていた。


 警察組織の人間は皆して「自殺」と推定したが、〈容器〉のかたわらには、熊由来のものと思われる小腸で、遺紋いぶんが留められていた。





 🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱

 🪱この死は宇宙の意志によるもの🪱

 🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱🪱





 彼の自宅では、その遺紋とは別な〈書き遺し〉も見つかった。





    〈〈〈〈修🪆了〉〉〉〉

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