わたしだけのアイドル

五目だいや

第1話

 わたしは今日、幼馴染を階段から突き落とした。


 わたしたちずっと一緒だよ――。

 うん――。


 幼い頃、永遠を誓いあったあの子。


 突出して明るい性格ではない。

 交友関係が人一倍広いわけではない。

 話が別段面白いわけではない。

 外見も内面も特筆することがない。


 ごく普通の優しいあの子。


 でもあの子は。

 内気だったわたしに外の光を見せてくれた。


 わたしにとってのアイドルとは。


 あの子の存在そのものだった。

 密かに慕うわたしだけの推し。


 それだけでよかったのに。


「昨日私ね、告白されたの」


 その子は頬を朱色に染めてわたしに言った。


「あなたには一番に伝えたくて」


 まるで星空のように瞳がキラキラ光る。


 昨日あの子は。

 わたしだけのアイドルではなくなった。


 アイドルとは偶像崇拝。

 実像を伴ったアイドルは必要ない。



 わたしはあの子を追いかけた。

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わたしだけのアイドル 五目だいや @moka-mococchi

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