こんなにも、ほわほわさせてくれる物語があるなんて!
本作を読んで、まず、そう思いました。
舞台は雪深い峠のふもとの、とある宿。
宿の娘のアイリスは、雪に埋もれて行き倒れている青年:ヴァルを拾うことから物語が始まるのですが……。
このヴァルさん、いろいろな意味で不思議な人でして。
人あたりはいいけど、言動がちょっと浮世離れしてて、ふんわりしちゃってますし。
体力はあって、動物には好かれやすいけど、家事……というか生活力はあんまり無さそうで。
でも、素直でとってもいい人なんですよね。
彼がアイリスを「本当に素敵だね」と誉めるシーンがあるのですけど、私はここで彼を推したくなりました。
なんというか、自分以外の誰かを、こんなに率直に素敵といえる彼が素敵に思えたのです。
彼とアイリスのほのぼのライフを、これからも楽しみにしています。
最後に。ヴァルさんの家族関係も本作の魅力の1つに加えておきましょう。
彼の少々ワケありな家族の事情が、作中の端々に見えるのですが、それがヴァルさんのミステリアスな雰囲気をかもしだしているのですよね。
実は……ここは同作者の『アルカーナ王国物語』を読んだ方なら、思わずにやりとしてしまうポイントでして。もちろん、未読の方も安心して楽しめると思います。