妖精になれた茉莉ちゃん
この美のこ
💑
颯の個展でついに再会した二人は閉場後、近くのカフェに来ていた。
「颯くん、個展に結構来てくれたね」
「うん、予想外だよ。茉莉ちゃんも付き合ってくれてありがとう。疲れただろ?」
「ううん、すっごく楽しかった。」
「お腹も空いてるだろうから何でも好きなもの食べてよ」
「ここにはソフトクリームはないね」
「うん、今日は食べないよ。だって、今日食べたら次に会う口実が無くなるだろ?出来たら今度あの二人で行った思い出の場所でソフトクリームは食べたいなって思って」
「あぁ、それいいね。そう言えばさぁ颯くん、なんだかカッコよくなったね」
「えぇ~、茉莉ちゃんの方が綺麗になったよ」
「うわぁ、颯くんからそんな言葉が聞けるなんてね。茉莉ちゃんって呼んでくれるのも嬉しい」
「あの頃は照れくさくって呼べなかったんだ。僕、いつも桜の木の下で茉莉ちゃんに会う夢を見たんだ」
「えぇ~!ほんと?私も颯くん夢、いっつも見てた!」
「夢の中でさ、茉莉ちゃんがいつも言ったんだ。画家になってね!って」
「颯くん、絵がうまいから画家になったらって思ってた。颯くんが描いてくれた似顔絵、まだ、大事にとってるよ。私が見た夢はね。私が妖精になって颯くんに会いに行く夢だよ。だからね、颯くんが描いてた個展の絵のタイトル『ダンスを踊る僕の妖精』を見てびっくりした!だって小さい頃妖精になりたかったんだもん。私、颯くんの妖精になれたんだね」
「もちろん!僕にとって茉莉ちゃんは天下無双の妖精だから」
「やだぁ、それにねダンスもだよ、私、中高とダンス部に入っていてダンス選手権にも出たことあるんだ」
「マジ~?」
「うん、何なら今踊ろうか?」
「そしたら、まさにダンスを踊る僕の妖精だね」
颯と茉莉は10年のブランクを埋めるようにいつまでも語り合った。
小学生だった二人は時を経て、それぞれの夢を持って大人になった。
これからはずっと寄り添っていくことだろう。
食事を終えて公園を歩く二人を満月が優しく照らしていた。
「月が綺麗だね」
やがて二人の影がそっと寄り添い、重なった。
そんな二人を風が優しく包んでいた。
* * *
自宅に帰って布団に入った二人は今度はどんな夢を見るのでしょう?
おしまい。
妖精になれた茉莉ちゃん この美のこ @cocopin
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