全てが分からない

 ……よくよく考えてみれば、元の世界かどうか判断する方法なんてあるのだろうか? せいぜい自分がおかしいと思うかどうか、しかないのでは。他の世界に移動させられてから、ああやはりあの違和感は正しかったのだ、と気づくことだってあったぐらいだ。

 不安ばかりが募っていく。判断できないのだ、今いる所が元の世界なのか。合っているはずだと思うとたちまち、不自然な点を無理矢理「そんなこともあるだろう」と解釈しているだけだという疑念がわいてくる。――ああそうか、ここは絶えず不安を感じてしまうという世界なのかもしれない。

 自嘲気味に笑みを浮かべる。

 不意に、目の前にボールが転がってきた。

「すみませーん」

 声がした方向を見るとサッカーのユニフォームを着た少年が手を挙げていた。おかしいな、少年は左の方にいるがボールは右側から転がってきた。ボールは転がっているうちに曲がったのか?

 私は少年に向かってボールを思い切り蹴る。ボールは正確に少年の足下に届いた。少年がお礼を言うのを聞いた時、自分が昔から運動音痴だったのを思いだした。うまく蹴れたのは偶然か?

 私には分からない。

 全く、分からないのだ。

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行きついた世界は @aiuchi-yu

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