三題噺

水城みつは

三題噺

さくら先輩、なお先輩ってば布団を引っ張り出して今度は何をやってるんですか?」


 部室に入ってくるなり、怪訝な目を俺に向けた葉月はづきさくらに問いかけた。


「あー、また例の投稿サイトのお題が出たみたいなの」


「いや、布団じゃなくて座布団な。流石に部室に布団は広げないぞ……」


「むぅ、ザ・布団ってことで同じでいいじゃないですかぁ」


 膨れる葉月の後ろからは双子の姉である紅葉もみじが幾分呆れたような顔を覗かせた。


「で、結局、お題はなんだったですか?」


三題噺さんだいばなしだよ。聞いたことあるだろ?」


「ふぇ? えーと、ないです」


「お題を三つ出してもらって、演じる落語よ」


 桜が解説してくれた。


「ああ、それで布団、じゃなくて、座布団を出していたんですね」

「形から入るところが先輩らしいです。で、お題は私達が適当に決めていいんですか?」


「きっと難しいお題のほうが直も喜ぶから、あ、布団と座布団みたいに濁点で変わる単語からってのはどうかな?」

「桜せんぱーい、そんなに擦らなくても」

 からかう桜に対して葉月が口を尖らす。


「良いですね、じゃあ、箪笥たんすとダンスでダンスはどうです?」


「もっとカッコ良くて難しいのはないか? ほら、四字熟語とかで」

 隣の部屋から何か担いで出てきたのは筋トレマニアで幽霊部員のちからだった。


ちからよぉ、何さり気なくハードルあげようとしてるんだよ、てか、なにそれ、マット?」


「おうよ、ここで腹筋とかする場合用だな。あ、マットはマッド以外にならないな」


「力先輩の言うカッコ良さそうな四字熟語って『夜露死苦』とか『愛羅武勇』ですかね」

「葉月……流石にそれは違うと思うよ。『天下無双』で、殿下でんか無双とかは?」


「お、葉月はづきさんのはともかく紅葉もみじさんのは良さげだ。あ、濁点の位置を変えれば、TENG「力、ストーップ!」」

 何か色々ヤバそうな事を口走りかけた力を止める。


「アホはほっといて、と言うか、お前ら三題噺さんだいばなしの事を忘れて言葉遊びになってないか? じゃあ、色々あがった中から――」


―― キーンコーンカーンコーン


 下校を促すチャイムと共に顧問の先生が顔を出した。


「あ、先生。これは……おあとがよろしいようで。鍵お願いしますね!」

 結局、題目は決まらぬままそそくさと部室を後にした。

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三題噺 水城みつは @mituha

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