読んでいて、フランツ・カフカの「変身」を思い出しました
「変身」は社会の世知辛さが身にしみる話でしたが、こちらは恋人のやさしさが身にしみます。
恋人とのやりとりから感じられるのは条理から遊離していくような感覚。まさに夢の中をたゆたっているかのようです。
やがて悲しいできごとが主人公を襲うわけですが、悲壮感はなく、まだ恋人のやさしさに抱かれているような気分になります。
読後感はとてもさわやかでした。変な表現ですみませんが、よく眠れた朝のようなすっきり感でした。
なぜ悲劇性を含んだ物語がここまでさわやかに感じられるのだろう?
そんなことを考えながら、本作の不思議な世界から抜け出せなくなる私でした。