毎日、
陰陽由実
毎日、
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
けれど、何を見たのかは覚えていない──
目が覚めた。
いつもの自室。薄手のカーテン越しに、早朝の薄柔らかい光が青を帯びて差し込んでいた。
天井を向いていた。僕はいつも目が覚めるときは右を向いているのに。
久しぶりに夢を見た。特に今日は幼少から何度か見ている夢。確かこれで8……いや9回目だろうか。
ベッドの中で身じろぎひとつせずに思考する。
僕は夢はあまり見ない方だ。ベッドに入って十数分程度。ゆっくりと意識を手放して暗闇を見て、気がつけば朝の光に包まれている。
夢を見るなら暗闇のあとに何かしら景色を見る。それが夢だと気づくのは起きてから。
当たり前のような話ではあるが。
そこへ「何か夢を見たが何か全く思い出せない」状態がごく稀に起こる。スパンは様々だが、大体2〜3年に一度だろうか。
ただ、見た夢はいつも同じことのように思う。
確証はないが、起きたあとの感覚がいつも同じだから、多分そうなのだろうというだけだ。
とはいえ覚えていない夢など覚えていても仕方ないのだが、どうも記憶から抜け落ちるのが難しいらしい。
2〜3回程度ならともかく、9回目まで数をカウントできているのだから相当だろう。
……本当に考えていても仕方のないことだ。
今日は休日である。こんな早朝に起きる理由は特段ないのだ。
僕はごろんと右に向いて、口を覆えるくらいに布団を引っ張り上げ、目を瞑った。
────ああ、夢だ。
夢を見ている。
そうだ、この夢。
いつも見る夢。
現実の僕が「この夢を見るのは9回目」と錯覚していたことに気づく夢。
毎日のように見る夢。
そして起きた僕がまたこの夢を忘れていることを予感する夢。
特段内容のない、現実を意味もなく欺かれる夢だ────
目が覚めた。
いつもの自室。薄手のカーテン越しに、昼の明るい光がカーテンをこじ開けんとするかのように入り込んでいる。
休日とはいえ流石に寝過ぎたか。
天井を向いていた。僕はいつもいつも目が覚めるときは右を向いているのに。
気だるげに起き上がって布団を押し除け、冷たいフローリングに足をつけて立ち上がった。
ああ、久しぶりに夢を見た。
普段夢なんて見ないのに。
あの夢を見たのは、これで9回目だった。
毎日、 陰陽由実 @tukisizukusakura
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