勝気なお嬢様はほわほわ系な旦那様を溺愛する

たぬきち

お嬢様と旦那様

 とある街中のショッピングモール内、周りの視線を集める美しい女性がいた。彼女の名前は『黄瀬楓夢きのせふうむ』。とある貴族のお嬢様だ。容姿端麗で遠目から見てもわかる煌びやかな金髪の長い髪が彼女の美しさをより引き立たせている。そんな彼女に複数の影が迫った。 ーーー


「お嬢ちゃん美しいね俺達と遊ばない?」


 ワタクシは目線だけを軽く向け、男達を確認するとナンパしてきた男達に言葉を返す。


「結構ですわ。ワタクシ、アナタ方の様な品のないお方と遊ぶ趣味は持ち合わせておりませんので」


 男達とは目を合わせずに真っ直ぐと別の景色に目を向ける。


「へえ、いうね、でも、新しい趣味ってのは大事だと思うよ? 君の様な見るからに『箱入りお嬢様』にはね」

「そうですか、言いたいことは以上でしょうか? ワタクシはこれ以上アナタ方と会話するつもりはございませんので、立ち去って頂けると大変嬉しいですわ」

「ほらほら俺達が庶民の遊びってのを教えてやるからよ」


 男の手がワタクシに触れようと伸びてきて、ワタクシは触れる直前で蹴りでも入れてやろうと思っていたら、そよ風が吹いた。


「すみません。なにをしているのでしょうか?」


 気付いた次の瞬間にワタクシの前にひとりの華奢な男性が立っていた。


「!? なっ!?」

「!?」


 男達は目を見開いて驚いていたが、ワタクシも少し驚いた。 何故なら、彼が目の前に立ったのは、そよ風が吹いた様なほんの一瞬の出来事だったからだ。


「なにって兄ちゃん、このクールで綺麗なお嬢ちゃんに遊ぼうって誘ってるだけだよ。 なに? もしかして、兄ちゃん、お嬢ちゃんの『彼氏』?」

「いえ、彼氏ではないです」

「なら、いいじゃねえか、兄ちゃんには関係ない」

「『夫』です」

「……はあ?」


 彼の言葉に男達は鳩が豆鉄砲を食ったかの様に口をポカンと開く。


「彼女はぼくの『妻』です」


 彼の名前は『黄瀬空太きのせくうた』。ワタクシの愛する旦那様だ。

 

「へえ、てっきりボディガードが出てきたかと一瞬焦ったけど、ナニかと思えば、こんな弱そうなナヨナヨしてる男が出てくるなんてな、しかも、旦那様だとよ」

「………………」


 ……こいつ、ワタクシの旦那様をバカにしましたわね。


 ワタクシは前に出ようとしたが、クウタさんはワタクシを静止してもう一度男達の前に立つ。


「おわかりいただけたみたいなので、ぼくたちはこれで失礼しますね」

「おいおい、こんな弱っちいボディガードだって知って引くわけねえだろ!」

「っ!?」


 男の手がクウタさんに手を出し触れようとした、次の瞬間、その男が宙を舞って吹き飛んでいた。


「っあが!?」


 ドサッ!!


 鈍い音が地面を鳴らす。


「……え?」


 周りの男達は一瞬の出来事に固まる。 


「………………え?」


 クウタさんも固まっていた。 何故なら……。


「ワタクシの旦那様に手を出だそうとするなんて蹴られる覚悟は出来ているんですわよね?」


 そう、男の顎を蹴り飛ばし、宙に舞わせたのはワタクシだからですわ。


「……!?」


 男達は『いや、覚悟する前に蹴られてる!』と言いたそうな表情をするが、ワタクシが笑顔を向けて差し上げると、全員土下座をしてワタクシ達をそのまま見送ってくれた。


「……あれえ? もしかして、ぼく必要なかった? うん、必要なかったね」


 クウタさんは「……あはは」と頬を掻きながら苦笑いをし、離れた場所に置いてきた荷物を取りに行く。荷物の置き方的に急いで駆けつけてくれたのだと分かった。


「なんというか、助けに行ったのに助けられちゃうなんてかっこわるいね」


 荷物を肩に掛けながら悲観的にいい、自分を笑う。


「そうかもしれませんわね。正直に申し上げますと、クウタさんがこなくてもワタクシひとりで制圧はできましたわね。実際そうでしたし」

「……あはは、ごめんね」


 何故か謝られてしまいますが、一応訂正しておきましょうか。


「謝る必要がどこにありますの? 寧ろ、感謝してますわよ」

「え?」

「なにもしなくてもいいと『分かっていた』のに、『助けにきてくれた』のですから」

「!? それはとうぜんだよ。『分かってるから助けない』なんてそんなことはできないよ」

 

 その言葉にワタクシは口元がほころぶ。相変わらず、ワタクシの旦那様は優しいお方だ。


 彼はワタクシの家の婿入りし、『黄瀬空太きのせくうた』と名乗っている。本来ならワタクシが彼の苗字を名乗るべきなのですが、ワタクシの家系が所謂『貴族』というもので、『一般人』の彼を婿として迎えいれることになりました。無いわけではありませんが、『一般人』との結婚は珍しいもので、はじめは受け入れてくれない方もいましたが、ワタクシは学生時代に惚れた彼との関係がどうしても譲れず今に至るというわけですわ。


「えーとっ、買ったものは無事だね」


 クウタさんは紙袋の中身を入念に確かめる。


「お目当ての物は買えましたか?」

「うん、ふうむさんはどうだったかな?」

「こちらもバッチリですわ」


 ワタクシは手に持っていた紙袋を見せる。


「これで『明日の準備』はバッチリだね」


 そうワタクシ達がこのショッピングモールにきた理由は『明日の準備』、『友人達とのお茶会』のお菓子やプレゼントなどを買う為ですわ。屋敷のものに頼めばやってくれますが、『ワタクシ達の友人達』がくるのです。自分達で用意せねば失礼ですわ。


「じゃあ、帰ろうか」

「いや、待ってください、折角、ここまで足を運んだのですからここで食事も済ませて行きましょう」

「え? ぼくはいいけど、ふうむさんはいいの?」


 クウタさんは首を傾げるが杞憂ですわ。


「屋敷での食事なら、今日は必要ないとイブキに伝えてありますわ」


 イブキというのは、ワタクシ専属の執事のことですわ。


「そうなんだ、じゃあ、イブキくんにもなにか買っていってあげようかな」

「そうですわね。ついでに見ていきましょうか」


 その後、食事を済ませ、イブキへのお土産を買い、クウタさんが他のメイド達にもお土産を買っていくと言い出しワタクシは少し複雑な気持ちを感じながらもデートを楽しんだ。

 

 



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

勝気なお嬢様はほわほわ系な旦那様を溺愛する たぬきち @tanukitikaramemo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ