私と言う名の不必要

@shikonnaru

第1話罪悪感が人を殺す

 その二人は幼馴染だった、互いの家に遊びに行くほど仲が良かった、音楽の才があり運動や勉強もできる女子と、スポーツが得意な男子だ、僕には才は無かった、ただ二人のの話を聞き、応援することしかできない奴であり、他にも応援する奴は居るのに幼馴染だからと特別扱い、そんなのはおかしいじゃないか。


「お前は邪魔だ」


 誰かがそう言った、そんなのは分かっている、周知の事実であることも、自分でさえ薄々気付いていて、知らないふりをしている事であった、突きつけられ周知に気づかない、などという言い訳も潰されたからなのか、でも、どうしようもないじゃないか。足りない脳みそで考えだした答えに従いゆっくりと距離を置くようにした、いや、距離をおかなきゃいけない気さえしたからだ。


 そんな折、招待状を渡された、何でも自作曲の発表会だと言う、また私に聞いて欲しいと言う、私ははにかみ言った「分かった」それしか言えなかった。


 当日、会場に行き聞いた、素晴らしい恋の歌だった、そうか、恋の歌か、何も言わず聞いたけれど、美しくて、眩しくて、そして、僕を打ちのめすような音だった。恋心を抱く相手が居るのだとその音が自分との関係がいかに分不相応で邪魔だったかを、僕はそれをはっきりと悟った、その全てを、ただ、了解した。


 それからは人に合わせ笑う様になった、例え自分の笑いと相手の嗤いが違うものと知っても笑い続る事にした、仮面を被り続けることにした。


 高校最後の春が来た、再び招待状が来た、高校最後の卒業コンクールだそうだ、断る事にした、僕の代わりに、彼女が想いを寄せる相手が聞けばいい。僕のような邪魔者は、もうそこには必要なかった。そうして、僕たちは、もう話さなくなった。


 それから年月経ったある日ばったり会った、それはコンビニバイト中にレジ越しに彼女を見つけた。どうか気づかないでくれと、信じもしない神に祈りを捧げる、胃もたれを起こしそうな状況と、吐き気を起こす自分に嫌悪しながら、声を低くし気付かれにくくしたはずなのに、やはり神なんぞいやしない、僕の祈りはいつだって聞きいられる事は無いのだから、バイト終わりに店前を通りがかりのあの彼女に腕を掴まれ連れてかれた、女性に触られる機会は無いが、女性に欲情が湧くほど気力も体力も無い、拉致監禁で訴えたら勝てるだろうか?。


 そんなことを考えていたらいつの間にか近所の焼き鳥屋についた、酒が二個置かれる、胸ポケットに入れた煙草ケースとズボンポケットのライターが煩わしく啼いている、僕は緊張や吐き気を殺すために絵の構図を考えるなどと自分を騙しながらスマホを手に取る。


「何してんの?」


 その言葉が嗜虐的に思わせんばかりに私に刺さる言葉だった、彼女の声は遠い音のように思えた。


「何時もの習慣を欠かすまいと」


 自分の声は思いの外安静だった、「そう」と終わらせた他人(あなた)の目は冷徹で呆れている、私は逃げるようにテキトウな話題を振る、「あ、貴方さ様は、最近どんな曲作ってるんですか?」「恋愛」淡泊な声だ頭の中に棺に入れたあの旋律が蘇る、相手は暇なのかペースが速い。


「なんでさ、最後来てくんなかったの?」


そんな事を聞いてくる、真っ暗になる、何も考えられない、りん須臾しゅゆ弾指だんしさえない刹那の時間が万年と続くようだった、口を…頭を…動かせ…


「わ私は、あの時間違いなく邪魔者だったと、思いまして、もう私は貴方様に迷惑をかけたく無かったので」


「そう」


 彼女の声は、もう何の感情も帯びていなかった。


 私は気まずくなり一口も飲めなかったビール代だけを机に置いて帰った、彼女はなにか沢山質問をしていた気がする、どこに住んでるか、LINEを交換しない?そんなことを聞かれたはずだ、何を答えたのかさえあまり覚えてないが、ごめんと謝ることしか出来なかったと思う。


 私は明くる日の朝一番に昨日のバイトを辞め、これで自由を取り戻したと思ってしまった、私は近くの山に植わっている柿の木に会いに行く事にした行くことにした、たしかこの季節は柿の花が綺麗に咲いていたはずた。




 数日後、誰もいない部屋の中、つけっぱなしのテレビがひとりでにしゃべっていた。


 「男性が一昨日、自宅近くの山で遺体で発見されました。亡くなったのは東京都八王子市に住む安井祐介さん(24)。近所の住人によりますと、『優しい人だった。自殺するような人ではなかった』と話しています。警察は事件性はないものと見ています。」


 テレビの画面に映るのは、僕の顔だった。


 その表情が、どこか滑稽に見えた。

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