踊れ! 天下無双舞踏布団団
ケーエス
踊れ! 天下無双舞踏布団団
「それでは、これから天下無双舞踏布団団による舞踏をご覧にいれましょう。天下無双舞踏布団団の起源は江戸時代に遡ります。徳川政権の天下、武士たちは戦いをやめておりました。朝決まった時間に起き、飯を食い、体を清め、公務に励む。毎日がルーティン。そんな生活にある足軽の男は飽き飽きしていました。
朝、布団から目覚める時、男はむしゃくしゃしました。また同じような一日を始めないといけないのか、くそう! 男は布団をはねのけました! その時気づいたのです。布団を思いっきりはねのける気持ちよさ、今まで己をまとっていた規律や慣習から真の自分が開放されるようなそんな心地。男はやみつきになり、毎日それを繰り返しました。この瞬間だけが彼の生きがいでした。男は布団がないときでも人目の無いところで、はねのけを続けました。
ある日、男は女房にその姿を見られてしまいました。
「旦那……」
「こ、これはだな」
「素敵でございます」
「ほ、本当か!」
自信がついた男は外でもはねのけ、周りの武士たちも真似をし始めました。いつしかそれは一つの舞踊と化していたのです。
しかし、その異様な踊りは幕府の目に止まり、男は密教の疑いをかけられてしまいます。男は踊り方を書いた本を土にこっそり埋めて命を絶ちました。
その後、時は経ち、明治35年に畑を耕そうとしていたある男が、その本を見つけました。文字は読みづらかったですが、なんとか布団をはねのけているということだけはわかりました。男は真似してやってみました。そのなんと気持ちのよいことか! 彼は農家を継ぐ予定でしたが、親の反対をはねのけ、友人たちで今の前身となる蒲団団を結成しました。震災や戦災、方向性の違いによる解散騒動、スキャンダルで芸能界から干されかけるなど幾多の困難がありましたが、男たちはメンバーを変えつつひたすら踊り続けました! そして今やアメリカズゴッドタレントでゴールデンブザーを押されるほどの世界的なグループとなりました。それでは参りましょう! 天下無双舞踏布団団の皆さん……? みなさーん!?」
枕元でぶるぶるっとスマホが震えている。
布団の中から手が伸びて来た。手はスマホに触れた後、戻っていった。
踊れ! 天下無双舞踏布団団 ケーエス @ks_bazz
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