第4回お題「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」

三雲貴生

第1話完結「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」



──あの夢を見たのは、これで9回目だった。──




「白雪姫。気をつけなさい。あなたは9回ママハハに殺されたわ。次に殺されたら蘇ることは出来ないのよ」


 夢の中で実母がそう語りかけた。懐かしい実母の姿がそこにはあった。


 9度殺され9度夢を見た。


 手口と実行犯は毎回違うけれど、命令したのはママハハだった。


 目覚めてはじめに見たのは、右手の薬指の銀色の指輪だった。私がドジで余りにも転ぶので生前、実母が魔法で『復活ふっかつ指輪ゆびわ』を作ってくれた。


 実母は亡くなり指輪に魔力を込めるものは居なくなった。


 私が余りにも殺されるので指輪に込められた魔力はもう底をついた。


「私はもう殺されるのね。せめて誰の迷惑もかけないように殺されてしまいたい」


 私が生き返ったことを喜んでくれる小人たち。

 彼らが私の手を握りしめようとした。


「怖い怖い怖い」


 思わず手を引っ込めてしまう。


 ご丁寧に彼らは一度ずつ私を殺しているのだ。


 私は、最初の殺され方が悪かったのか証拠あかしを持っていかれるのをひどく怖がった。


 最初は猟師だった。猟師は証拠あかしとして殺した私の心臓を持っていった。


「殺されてからもとても痛いのよ」


 2度目はおばあさんだった。2度失敗に終わり3度目の『どくりんご』で私は殺された。


 3度目はないだろうと安心していた。


 半年ほど穏やかな暮らしが続いていた。


 深夜、気づくと私は手足をかせで拘束された。


 小人たちがママハハに懐柔かいじゅうされたのだ。


 私は小人たちに考えられるあらゆる暴力で殺された。


 7度暴れて白雪姫の血と汗でびついたかせもろくなっていた。細腕の白雪姫でも容易に破壊出来た。


 そこからはもう逃げるしかなかった。に合いたくない。



 森の中で一夜を明かした。



 やっと白馬に乗ったとなりの王子さまと出会った。


 白雪姫はホッとした。


「それは大変だったね。もっと早く僕の所へ来れば良かったのに──」


 王子は私の顔や体にキズがないか? に心配してくれた。



 となりの国に到着した。



 王子は私にお風呂ときらびやかなドレスをプレゼントしてくれた。


 王子が、心配だから一緒に寝ようと誘ってくれた。


 他人が怖いので私はひとりで寝たいと懇願こんがんした。


 私は久しぶりにぐっすりと寝った。





 そして私は王子さまに──






──殺された。





──その夢を見たのは、これで10回目だった。──



──夢の中で実母が教えてくれた──


「あなたを殺したのは王子。もう指輪の魔力は尽きてしまったわ。ゴメンなさい白雪姫」


 私は死んで安心していた。


 あんな現実は見たくない。


 死んで実母に会えるなら悪くないと思い始めていた。



 もう指輪の魔力は尽きたものと思っていた。王子が指輪にキスしたせいで指輪に魔力が供給され私は復活した。


 王子さまの驚きの顔。


「ああ、僕はまた君を殺さなければならないのか?」


 王子さまの言葉にハッとした。


 そして見えていなかった辺りのを目の当たりにした。


 とてもとても──広い──薄暗い洞窟──無数の──ガラス張りの棺──棺の顔の部分──照らすように立てられたロウソク──ユラメいている──私と同じように眠る──白い顔の姫たち──どれもみんな恐怖の形相だった。





──コレハ──






──ハジメテデハナイ──






 王子は死体コレクターだった。




 王子は白雪姫の首に手をまわし──




──私を殺した。





──この夢を見たのは、これで何度目だろう。──



「ゴメンなさい。あなたはもう殺されてしまったわ。指輪の魔力も尽きてしまった。もう蘇ることは出来ないわ」



 サメザメと泣く今は亡き実母の姿。



 ああ──なんて──穏やかな気分。



 私は泣き続ける実母を眺めながら思う。私はこの光景を見るためだけに、今までずっと生きて来たのだわ。


 ガラスの棺に眠る、白雪姫の死に顔はとても穏やかなものだった。


 他の棺の姫たちのように恐怖で彩られることはなかった──。





END

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第4回お題「あの夢を見たのは、これで9回目だった。」 三雲貴生 @mikumotakao

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