少しずつ近付くようで離れていく秘密はなんでしょう【KAC20254】
リーシャ
夢の中は気泡のようにではなく
「あの夢を見たのは、これで9回目だった。最初は平凡な村娘で、その次は町娘」
カムラは順序立てて全てを並べていく。
町娘の次は商人の娘、その次は……メイドの女。
5人目は貴族令嬢。
少しずつ生活がよい肩書きだった。
現代に生きる私には新鮮で、まるでオムニバスを見ているようでワクワクしたものだ。
次は何かなと思ったとき、猫だったことはびっくりした。
普通、次は絶対に王族でしょと思っていたのに。
それこそ、7人目に遂にとなれば次は高貴な人の鳥。
8人目にはあまり期待がなくなっていた。
それよりも、猫と鳥を可愛がる高貴な雰囲気を纏った綺麗は人の可愛がり方が凄すぎたので、次は高貴な王族という気分にはならなかったというところが大きい。
いつも、まるで恋する相手みたいにいつも話しかけたりするから、とても会うのが楽しみだったし。
次は次はと思っていると9番目。
それがいわゆる選択肢というものだった。
それは、自分自身。
彼はこちらを見ると蕩けるように笑みを綻ばせたのだ。
「やっと会えたね」
「えっ」
いつものように他人事で見ていると、彼がこっちに目を向けて話しかけてきた。
動物だった頃もあったが、今度はなんの動物なのだろうか。
身体を見回しても、人だ。
「あれ?人だ?」
何度見ても、猫でも鳥でもない。
「落ち着いて聞いてくれ」
男が言うには、カラムは男の番らしい。
肉体ごと連れてきたかったのに毎回意識ばかりでうまくいかなかったとか。
9回目で漸く本体を呼び寄せられたのだと語る男に、疑わしさしかない。
いや、怪しさかな?
どうして連れてきたのか。
連れてくるなら、来た方がいい。
自分にも生活というものがある。
己には他人事なのにと二度目の感想を抱く。
急に番だから異世界に連れてきたと言われても。
呆れてものも言えない。
取り敢えず元の世界に、今すぐ返すように伝える。
「返してね」
「嫌だったよね、ごめん」
「探すのはいいし、呼び出すのはいいけど、事後承諾は互いの信頼を乏しく壊す行為だと思う」
彼を小突く言葉を渡すと相手はウッとなる。
美形が唸るのは見ていて目の保養になるなと知ってしまう。
知ってしまうと、情が湧きそうになる。
心を鬼にして彼へ現代へ戻してもらう。
その後、ちょっとずつ交流を重ねて、見事結婚にまで漕ぎ着けたのは奇跡的な部類になるのでは?
子供に本を読んで上げながら、きらりと光る薬指を流し見た。
少しずつ近付くようで離れていく秘密はなんでしょう【KAC20254】 リーシャ @reesya
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