情報戦線 2035
@mojajaja
[ 短編 ] 情報戦線 2035 [ 虚構の境界線 - 前日譚 - ]
2035年、日本。
世界は再び大きく動こうとしていた。
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「アメリカの内戦、やっと終わるらしいな」
「5年も続いたもんな……でも中国内戦はまだ泥沼だし、ロシアも動きが怪しいだろ」
「日本だって楽じゃないぜ、人口も1億1000万人割ったし、少子高齢化で経済は停滞だ」
「政府は移民を増やすって言ってるけど、上手くいくのかね?」
「さあな。日本語話せない移民が増えて、現場は混乱してるらしいぜ。建設業なんかも、もうほとんど外国人だって話だ」
「俺たちの世代で年金もらえんのかねぇ……」
「もらえねえだろ。そもそも、このまま行けば俺たちが年取る前に、国家が機能しなくなる」
「そのくせ、軍拡だけは進めてるんだよな」
「だって、どこも戦争寸前じゃん。アメリカは内戦が終わっても対ロシア戦が始まりそうだし、中国はもう『国』じゃなくなってるし」
「うちの会社も、海外のサイバー攻撃受けたって言ってたな」
「どこもやばいってことか……」
「脳インターフェースが便利になっても、生きづらい世の中になったもんだな」
居酒屋のカウンターで、サラリーマンたちが疲れたように語り合う。
そこにテレビのニュースが割り込んだ。
——『本日未明、政府は「首都機能分散法」の審議を開始。近年頻発するサイバー攻撃やテロ対策として、国家機能を複数都市に分散する計画が進められています……』
「また東京を捨てるなんて話か?」
「でも、最近の首都機能麻痺はヤバかったろ。あれがもっと頻発すれば、本当に国家が終わるぞ」
「でもさ、政府のやり方って信用できるのか?最近、"日本第一主義"の連中がやたら増えてる」
「移民反対、独立防衛、外国勢力排除……だろ?」
「一部じゃ、"政府は日本を守る気がない"って騒いでる。アイツら、やべえぞ。SNSの拡散力が異常だし、まるで指示を受けて動いてるみたいな……」
サラリーマンたちは愚痴をこぼしながらも、この国の未来が決して安定したものではないことを痛感していた。
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首相官邸 緊急会議室
「防衛省の報告によると、今年に入ってハッキング、テロ、スパイ活動。つまり、ハイブリッド戦の兆候が急が急増している。先月の東京の首都機能麻痺も記憶に新しい」
「今の日本は、一撃で崩壊しかねない」
内閣府の官僚が重い口を開く。
「このままでは、国家の存続そのものが危うい。首都機能分散法の成立を急ぐべきだ」
「だが、インフラ整備、予算、土地の問題が……」
「悠長なことを言っている場合ではない。東京が壊滅すれば、それこそ国家は終わる」
会議室には静かな緊張が走る。
議論の末、政府は首都機能の分散を強行する決定を下した。
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[ 新首都 ] : 栃木県北部(那須〜大田原)
役割 : 国家防衛・危機管理の中心
[ 行政首都 ] :長野県松本市
役割 : 官庁・行政機能の中枢
[ 経済首都 ] :東京都
役割 : 経済・金融の中心
[ バックアップ都市 ]: 三重県伊賀市
役割 : 非常時の代替機能
「これで、日本の安全保障が強化されるといいが……」
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「次に、情報戦の問題だ」
別の官僚が資料を広げる。
「最近、自衛隊サイバー防衛隊と警察庁サイバー局がまた同じ案件でぶつかったと報告があった」
「無駄な対立だ……縦割り行政が日本を滅ぼすぞ」
「陸海空の自衛隊も限界だ。警察もAI犯罪対策に手一杯だ。サイバー戦や認知戦に特化した独立組織が必要だ」
「……つまり、防衛省・警察・内閣情報調査室が連携し、情報・特殊作戦に特化した新たな組織を作るということか?」
「その通りだ。内閣府直轄の情報・特殊作戦機関——『統合特殊情報戦司令部』を設立する」
「しかし、それだけでは不十分だ」
「なに?」
「情報戦に対応するには、単なる分析組織では足りない。即応できる実戦部隊が必要になる」
「……それはつまり?」
「極秘の特殊部隊を創設する。だが、政府が公に特殊部隊を持つのは問題がある」
「なら、隠れ蓑を作る。『特務後方支援課』——表向きはただの後方支援部隊。
その裏に、本当に動く部隊を隠す」
「影の部隊……」
「『特別行動班』。それが、この国の最後の防衛線だ」
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政府が重い腰を上げて動き出したその夜、日本の運命は変わり始めた。
情報戦の最前線。
認知ハックが支配し始める世界。
"敵"は、もうこの国の中にいる。
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・筆者コメント
虚構の境界線の前日譚です。
「https://kakuyomu.jp/works/16818622171136608224」
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